『アンダーワールド』冥王VS人間~魑魅魍魎の戦が今始まる~

八雲翔

文字の大きさ
22 / 627
第一部

霊媒師 霊光アンナ

しおりを挟む
翌日――――

向井は真紀子に頼まれていた手芸用品を受け取り、

そのあとにタブレットを見ながら、

霊の確認をしていた。

この国は毎日三千~四千人は亡くなっている。

しかも今ではその半分が子供だというから、

増えるわけがない。

殆どの霊は再生の道へ進み、

消去課へまわされるので、

一番忙しいのが田所達なのかもしれない。

派遣霊はほんの一握りなのだが、

毎日のことなので数はなかなか減少しない。

しかも葵のようなものもいるので、

停滞しているのが現状だ。

昨日も再生へ進んだ派遣霊が三十人。

その中で死ぬ前にやり残した仕事を終え、

来世に進んだのは三人。

あとはサロンにいる間に、

少しずつ来世へ進む気持ちが強くなった霊になる。

全員に派遣先を見つけるには、

特例の数が少なすぎるのだ。

調べたところによると、

葵が今のところ最長らしい。

ある意味妖怪化しているのでは? と、

思ってしまう。


向井が地蔵通りから横道に入ると、

数メートル先でTVロケのクルーがいた。

何やら霊媒師と一緒に、

危険な場所を探して撮影しているようだ。

「また、面倒なのが……」

向井は両手を腰に置くとため息をついた。

偽霊媒師なら何の問題もないのだが、

中途半端に霊力のある霊媒師が一番問題なのだ。

こちらが姿を消しても、

退治しようとしてくる。

それも不出来な印を結ぶので、

特例には効かなくても、

近くを浮遊する霊や悪霊を増幅させてしまう。


向井は面倒に巻き込まれたくないので、

踵を返そうとしたところで、

霊媒師と目が合ってしまった。

よく見ると、

有名な霊光アンナではないか。

著名人相手に霊媒占いをする、

人気番組ももっている。

霊視も占いも適当なのに、

力のある霊媒師として扱われていた。

多くの意味でTV局やマスコミも無視できない、

影の権力者の一人でもある。

その理由が党の幹事長だった、

「政界の傀儡師」との異名を持つ、

大沢帝国を築き上げた、

その実妹であるということ。

既に亡くなっている兄の威光が残っているのも、

特別室のつながりにあり、

向井としても非常に面倒な人物だった。

アンナのはんちくな霊能力のおかげで、

何度酷い目に合ったことか。

冥界では悪霊兄妹と呼ばれていた。


向井と目があったという事は、

今姿を消したら、

悪霊退散などと印を結んで、

二次被害をもたらすことにもつながる。

巻き添えを食らうのだけは避けたいので、

彼女たちが通り過ぎるのを待つことにした。


「面倒な相手と遭遇した……」

背後からヘルプに来た、

安達の声が聞こえてきた。

「特別室に出入りしているからか、

どうも俺との波長が合うみたいでね」

二人が話していると、

アンナが近づいてきた。

七十近いとは思えない早い足取りだ。

「あなた達、死相が出てるわよ」

「それはどうもご丁寧に」

向井が言うと、

「あなた信じてないでしょ。

私のこと知らない? 

これでもかなり有名な霊能力者なんだけど」

「お顔はTVで拝見したことがあります」

「特別に払ってあげるから」

「いえ結構です。霊がいても気にならないので」

「へえ、珍しい。まあいいわ。

何かあったら相談にのるから、

いつでもいらっしゃい」

そういうと向井に名刺を渡し去っていた。

「これで遭遇何回目? 」

安達が聞いた。

「相手には俺達を認識できていないから、

いいんじゃないですか。

とはいえ、彼女たちが動いているとなると、

この辺も危ないかな。

牧野君を呼ばないと。

少しお手伝いしますか」

「……………」

「そんな顔しないで。

保護できないと、

悪霊に飲み込まれちゃいますよ」

向井は牧野に連絡すると、

渋々な安達を連れて、

アンナが消えた先へ歩いて行った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪

山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。 「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」 そうですか…。 私は離婚届にサインをする。 私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。 使用人が出掛けるのを確認してから 「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

「最高の縁談なのでしょう?なら、かわってあげたら喜んでくれますよね!」

みっちぇる。
恋愛
侯爵令嬢のリコリスは20歳。立派な嫁きおくれである。 というのも、義母がなかなかデビューさせてくれないのだ。 なにか意図を感じつつも、周りは義母の味方ばかり。 そん中、急にデビュタントの許可と婚約を告げられる。 何か裏がある―― 相手の家がどういうものかを知り、何とかしようとするリコリス。 でも、非力なリコリスには何も手段がない。 しかし、そんな彼女にも救いの手が……?

処理中です...