『アンダーワールド』冥王VS人間~魑魅魍魎の戦が今始まる~

八雲翔

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第一部

霊不感症の霊媒師

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この付近は、

元々霊の吹き溜まりになっているので、

祓っても祓ってもキリがないくらいに、

よく心霊現象を起こしている。

そこに目を付けたのが霊媒師たちで、

動画撮影をするものも増えていた。

ただそのほとんどが霊感がないので、

特例の間では荒らしと呼んでいる。

面白おかしく霊を集めて、

払う真似事をして楽しんでいるので、

特例はそんな後始末にも追われている状態だ。

田所のいう死人の過労死は笑い事ではない。


向井達は姿を消して、

アンナの撮影クルーを探した。

見るとアンナの周囲に、

物見高い人々が集まっている。

「霊いるんじゃん? 」

「電波が乱れてるもん」

「妨害電波だろ? 」

野次馬がスマートゴーグルを装着したまま、

右に左にと動いていた。

既に牧野と佐久間が、

その場の様子をうかがっている。

「安達君」

向井達に気づくと、

佐久間が声をかけながら近づいてきた。

「この辺りの浮遊霊は結界張って、

近づけないようにしてあるので、

今のうちに保護しちゃってください」

「わかった」

安達が結界の外へ出て行く。

「あのババァが呼んだ黒い塊、

妖怪も飲み込まれてるんで、

水晶に入ったところでこれと交換したい」

牧野が向井のところにやってきて言った。

見るとアンナが持っている水晶玉と、

似たような水晶玉を抱えている。

怪訝そうな顔をする向井に、

佐久間が説明した。

「実はあの霊光アンナが持っている水晶玉。

彼女に気づかれないように、

定期的に調査室で交換しているんですよ」

「そうだったんですか」

「彼女はどうやら霊不感症みたいで、

悪霊が取り込まれた水晶を持っていても、

何ともないんですけど、

彼女の周りの人間が精気を吸い取られて、

寿命を全うする以前に、

悪霊に取り込まれる可能性があるので、

危険なんです。

そうなると特例の失態になるうえ、

さらにリスクも高くなるので、

研究・開発室で、

軽めの悪霊玉を詰め込んだ水晶を考案してもらい、

最初から彼女に持たせた方が、

安全だろうという事になって」


冥界には霊電や悪霊玉など、

日々開発している研究・開発チームがいる。

安達が装着しているものも、

そのチームの開発品だ。


「それにさ」

牧野が楽し気にニヤリと笑った。

「あの玉はたっぷり悪霊吸ってるから、

霊電力もバッチリなのよ。

これなら倉田にも勝てるだろ? 」

「ああ、そういう理由ね」

向井が苦笑し、

佐久間はあきれ返ったようにため息をついた。


水晶は本来浄化作用もあり、

邪気払いともされているが、

悪霊を吸い過ぎている水晶は浄化もできない。

下手に壊せば悪霊が飛び出し、

それこそ松田雪江の漫画のように、

ゾンビが溢れかえる状態になるかもしれない。

危険なパワーストーンは、

特例が回収するのが一番だ。


「で、どうするんですか」

「佐久間には今、

大きな結界をはってもらってるからさ、

向井にはあの野次馬とババァの空間を、

一瞬でいいんだ。

時間を止めてもらえる? 」

「そんなことしてバレない? 」

「何度もこの手で成功してるんで、

大丈夫だと思います。

このところ水晶玉除霊にハマっているみたいで、

ずっとあの水晶玉で悪霊退散しているんです。

彼女、微妙に霊感はあるんですけど、

不感症なので時間が止まっても気が付かないんですよ」

「その前は念珠に凝ってて、

あの時は何の天然石を使ってるのか、

死神が調べるのが大変だって文句言ってたけど、

今は水晶玉だし楽勝だね~」

牧野が楽しそうに言った。

「そういう事なら手伝いますよ」

「じゃあ、あの黒い塊が水晶に入った瞬間、

時間を止めてくれる?  

そしたらこれと交換するから」

牧野がいい、

「いいですよ」

と向井は返事を返した。

「佐久間は俺が合図するまで、

結界破られないようにしてくれよ」

「分かってますよ」

三人は空に広がる黒い塊の動きを目で追いながら、

その瞬間を待った。
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