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第二部

子供妖怪 三鬼とこん

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工房に行くと、

中に妖鬼と何人かの縊鬼の姿が見えた。

ステージはどうやら、

工房とギャラリーの横に作るようだ。

向井が部屋に入ると、

小鬼ともう一匹小さな白狐の姿が見えた。

一生懸命、袋に何かを詰めている。

向井がその様子を見ていると、

妖鬼がやってきた。

「向井さん。ちょっと聞きたいことがあって」

「その前にあのちびっ子は、

何をやっているんですか? 」

「ああ、三鬼とこんね」

妖鬼が振り返った。

「なんでも作りたいものがあるから、

かんなくずが欲しいっていうんで、

片付けついでに手伝わせてるんだよ」

「かんなくず? 」

「そう。かんなくず。

妖怪施設のちびちゃんたちの間では、

流行っているらしいよ。

サロンにかんなくずアートの作家さんが来たでしょう。

彼女にブーケ作りを教わっててさ。

楽しいみたいで。

しかもヒノキの香りがいいんだってさ。

生意気だろ? 」

妖鬼が笑った。

「へえ~」

向井もちょっと意外な展開に驚いた。

「冥王の部屋にあるランプシェード。

あれもかんなくずなんだって。

その作家さんにお願いして、

作ってもらったらしいよ」

「安達君と遊んでいる間にも、

いろんな事やってるんですね。あの人は」

「あははは。冥王だからね。

でさ~」

妖鬼が話し出した。

「ステージの大きさをどうするかで悩んでて。

発表会となったら参加者だけじゃなく、

みんな見に来るよね。

さっき冥王が来て、

劇場みたいなのが欲しいってさ。

好き勝手に言いたいことだけ言って帰っていった」

「あの人は思いつくままに、

行動してますからね。

でもそうなると、

小ホールくらいはないと無理かな。

舞台も少し大きめに作ってもらわないと」

「う~ん。冥界の空間をちょっと広げるか」

「できますか? 」

「多少なら大丈夫だろう。

そうすれば百五十人くらいは入るから」

「だったらそれでお願いします」

「分かった。設計してみるよ」

妖鬼はそれだけ言うと、仕事に向かった。

向井は楽しそうなチビ達を見て近づくと、

話しかけた。

「君たちは、

かんなくずアートを作っているんだって? 」

「向井~」

三鬼が嬉しそうに笑うと抱きついてきた。

早紀に拾われた小鬼は、

人間で言うとまだ三歳くらいだそうで、

施設で好きなことをさせているらしい。

三鬼の名前は冥王が付けた。

悪霊から逃げ延びた幸運にあやかって、

三の数字と助けた早紀の名前を入れて、

三鬼でミツキ。

本人も名前をもらえたことに喜んでいた。

「こっちの子はお友達かな? 」

向井が聞くと、

「こん」

小さな白狐は恥ずかしそうに、

うつむき加減で名前を言った。

「可愛い名前だね」

向井は笑顔になって、

三鬼とこんの間に胡坐を組むように腰を下ろした。

こんは白狐なので、おそらく眷属なのだろう。

三鬼は向井の膝に座ると、

「こんもね~早紀ちゃんが連れてきたんだよ」

嬉しそうに説明した。

「そうなんだ」

「冥王が読んでくれた絵本の狐さんと、

同じ名前なんだよね~」

「冥王は絵本を読んでくれるの? 」 

「うん。

他にも一緒に塗り絵とかパズルもするけど、

ゲームはずるするんだ」

「それは酷いね」

向井はそういうと三鬼とこんを見て、

「かんなくずアートができたら、

俺にも見せてくれる? 」

と言った。

「うん。

こんと一緒に可愛いブーケを作るんだ。

ね~」

「冥王も作ってるよ。

なんだかわからないけど」

二人は顔を見合わせてくすくす笑った。

「そう」

向井が楽しそうにしていると、

妖鬼が近づいてきた。

「ほら、お前らかんなくず拾ったら、

工房行くんだろう? 」

「あっ、そうだった」

三鬼は向井の膝から立ち上がると、

こんと一緒に袋を取りに行った。

「向井さんはチビに人気だね。

安達君や牧野も含めてね」

「安達君たちにチビなんて言ったら怒るから、

発言には気をつけてね」

向井が苦笑いを浮かべて立ち上がった。

「ハハハ」

妖鬼は声をたてて笑うと、

三鬼とこんが「またねー」と手を振って、

部屋を出て行った。

「あいつらは片付けと言いながら、

部屋を散らかしてるんだよな」

散らばるかんなくずを見て、

妖鬼がため息をついた。

「まあ、子供ですから」

「こんはさ。親が眷属みたいなんだけど、

どこかで迷子になったらしくて、

早紀ちゃんが拾ってきたんだよ。

冥王が言うには、

中央で拾ったんなら地域は王子じゃないかって。

親も分からないし、

放っておくわけにもいかないからね。

三鬼も友達が出来て嬉しいみたいで、

ずっと一緒にいるよ」

「そうですか。

妖怪にも楽しい子供時代はあるんですよね」

「そりゃそうでしょ。

子供なんて人も妖怪も変わんないよ」

妖鬼はそういって笑うと仕事に戻っていった。

向井も立ち上がると工房を出た。
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