113 / 349
第三部
特例 源じい
しおりを挟む
その後、
健次郎達が何か行動を起こすのではないかと、
向井達も気をつけていたが、
動きがないまま時間は過ぎていった。
向井は、
特別室と安達の事で冥界と下界を行き来し、
特例になって一年たった頃、
源じいが新たに入ってきた。
「源じいは幾つ? 」
牧野は年は取っているものの、
背筋の伸びた紳士がやってくると、
開口一番に聞いた。
「ボンよ。目上の者に尋ねる時は、
まず自分が名乗るのが礼儀だぞ」
「あっ、そっか。悪ぃ。俺は牧野悠斗。二十一歳」
牧野は悪びれる風もなく言った。
「私の年は八十六だ」
「そんな年寄りなのに、まだ寿命があんの? 」
牧野が驚くように声を上げた。
「源太郎さんに失礼ですよ」
向井が注意すると、源じいは笑いながら言った。
「まあいい。彼から見たら私は老木だからな」
「そうじゃねえよ。こんな年寄りなのに、
死んでもまだ働かせるの? って思っただけだよ」
むくれて言う牧野に向井と源じいは驚くと、
顔を見合わせ笑った。
「私は長生きらしいぞ。あと十年残っているそうだ」
「ふう~ん。じゃあ、十年は色んなことできるな」
「そうなのか? 」
源じいが聞くと、
「そうだよ。仕事してれば、
何してても誰も文句言わねえもん」
「ほぉ~そりゃいいな」
源じいも声をたてて笑うと、
牧野と一緒に休憩室に入っていった。
「この人誰? 」
室内にいた安達が聞く。
「源じいだよ」
牧野が教えると、
「お菓子食べる? これ美味しいよ」
安達は田所がお土産で買ってきた、
マカロンの箱を見せた。
「ではひとつ頂こうかな」
源じいは笑顔で言うと、
楽しそうに若者の輪の中に入った。
向井はそんな光景を見ながら、
特例の基準は、
寿命の他にも何かあるのだろうかと、
このとき思ったのが最初だった。
健次郎達が何か行動を起こすのではないかと、
向井達も気をつけていたが、
動きがないまま時間は過ぎていった。
向井は、
特別室と安達の事で冥界と下界を行き来し、
特例になって一年たった頃、
源じいが新たに入ってきた。
「源じいは幾つ? 」
牧野は年は取っているものの、
背筋の伸びた紳士がやってくると、
開口一番に聞いた。
「ボンよ。目上の者に尋ねる時は、
まず自分が名乗るのが礼儀だぞ」
「あっ、そっか。悪ぃ。俺は牧野悠斗。二十一歳」
牧野は悪びれる風もなく言った。
「私の年は八十六だ」
「そんな年寄りなのに、まだ寿命があんの? 」
牧野が驚くように声を上げた。
「源太郎さんに失礼ですよ」
向井が注意すると、源じいは笑いながら言った。
「まあいい。彼から見たら私は老木だからな」
「そうじゃねえよ。こんな年寄りなのに、
死んでもまだ働かせるの? って思っただけだよ」
むくれて言う牧野に向井と源じいは驚くと、
顔を見合わせ笑った。
「私は長生きらしいぞ。あと十年残っているそうだ」
「ふう~ん。じゃあ、十年は色んなことできるな」
「そうなのか? 」
源じいが聞くと、
「そうだよ。仕事してれば、
何してても誰も文句言わねえもん」
「ほぉ~そりゃいいな」
源じいも声をたてて笑うと、
牧野と一緒に休憩室に入っていった。
「この人誰? 」
室内にいた安達が聞く。
「源じいだよ」
牧野が教えると、
「お菓子食べる? これ美味しいよ」
安達は田所がお土産で買ってきた、
マカロンの箱を見せた。
「ではひとつ頂こうかな」
源じいは笑顔で言うと、
楽しそうに若者の輪の中に入った。
向井はそんな光景を見ながら、
特例の基準は、
寿命の他にも何かあるのだろうかと、
このとき思ったのが最初だった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる