137 / 349
第四部
ミヒカ神
しおりを挟む
団地では赤姫と黒谷が、
何やら楽しそうに話していた。
「あっ、向井さん………とアートンさん? 」
「お久しぶりです」
アートンは笑顔で近づいた。
「そうか。二人はお知り合いでしたね」
向井が言うと赤姫が二人を見た。
「お前らが来たという事は………
あの妖怪が追い出された土地か? 」
「そうです。説明が省けて助かった」
アートンが言った。
「妖怪の土地って何? 」
横から聞く黒谷に、
「お前は妖怪を怖がらんから、
簡単には教えられんな」
赤姫が顔をしかめた。
「そうだよ。妖怪にも善と悪がいるからね。
小型の悪霊を追い払えても、
妖怪は別だから」
アートンの言葉に、
黒谷はムッとした顔をしたが、
思い当たる節があるのか、
腕組みをして俯いた。
「確かに………俺、妖怪に追われたことあるんだよね」
「えっ? 」
三人が同時に振り返った。
「妖怪のオーラって複雑で読みにくいのよ。
綺麗なオーラだって近づいたら、
いきなり悪霊みたいになったりさ」
「むやみに近づくなと申しておるだろう」
赤姫はまるで息子に叱咤するように、
眉間にしわを寄せた。
「まるでわが子を心配する母親ですね」
向井が笑った。
「な、何を申すか」
赤くなる赤姫に、
「こんな綺麗なお母さんなんて自慢だよ~」
黒谷が笑いながら言った。
「からかうでない。ほら、仕事じゃろ」
赤姫の言葉に、
「おっと、そうだった。俺さ~今フェスに………」
そこまで言ってやばいという顔をすると、
口を押えて、
「またね~」
と向井をちらりと見たまま、慌てて走り去った。
その姿を見送りながら、
怪訝そうな顔をしたが、
「そういえば楽しそうでしたけど、
何の話をしていたんですか? 」
と向井が聞いた。
「ん? あやつの弁当の売り上げがいいらしくてな。
何か欲しいものはないかって言われての」
「いいじゃないですか。
親孝行してくれる息子なんて」
アートンが笑顔になった。
「まぁな。私の櫛が割れてしまったので、
その話をしたら、
プレゼントしてくれるそうじゃ」
「よかったですね」
向井も笑みを浮かべた。
「で、お前らは何用じゃ? 」
「そうそう。河伯じいさんから、
例の土地について、
赤姫に聞いてみなさいって言われたから」
アートンが説明した。
赤姫はその話に大きく息を吐いた。
「ふう~お前たちが張った結界の上に、
私とミヒカで結界を重ねておいた。
当分、あそこにも近づけないじゃろ」
「ミヒカ? 」
二人が聞くと、
「あの祠の神じゃ。
元々貴族の姫でな。
優しすぎるのが災いして、
人間どもに土地を汚され、
あの小さな場所を妖怪たちの住処として、
長い事守っておったのじゃ」
向井達は黙って話を聞いていた。
「私がここに結界をはって、
吉沢達を追い出したからの。
仕方なく候補の一つとして、
あの土地を選んだんじゃろ。
ミヒカにはすまぬことをした」
「そのミヒカさんは、
今どこにいるかわかりますか? 」
「ミヒカなら今この裏の土地におるが、
会うことはかなわんぞ」
と土地の方へ視線を送った。
「なぜですか」
「持ってる力を使い果たして、
あの祠を守ったんじゃ。
当分は動けん。
私が休ませておるゆえ、心配するな」
「そうですか。この前、光を見たので、
そのあたりの穢れは払って、
霊玉も小さいですが、
結界として埋めてあります」
「そうか。私も気をつけて見ておくから安心するがよい」
「有難うございます」
二人が頭を下げると、
「ときに虎獅狼達はそちらで面倒みているとか。
問題はないのか? 」
赤姫が聞いた。
「部屋に置く家具でもめてましたけど、
楽しそうですよ」
向井は笑みを浮かべて説明した。
「ならよかった」
赤姫も笑ったところで、
ふとアートンが帯を見て聞いた。
何やら楽しそうに話していた。
「あっ、向井さん………とアートンさん? 」
「お久しぶりです」
アートンは笑顔で近づいた。
「そうか。二人はお知り合いでしたね」
向井が言うと赤姫が二人を見た。
「お前らが来たという事は………
あの妖怪が追い出された土地か? 」
「そうです。説明が省けて助かった」
アートンが言った。
「妖怪の土地って何? 」
横から聞く黒谷に、
「お前は妖怪を怖がらんから、
簡単には教えられんな」
赤姫が顔をしかめた。
「そうだよ。妖怪にも善と悪がいるからね。
小型の悪霊を追い払えても、
妖怪は別だから」
アートンの言葉に、
黒谷はムッとした顔をしたが、
思い当たる節があるのか、
腕組みをして俯いた。
「確かに………俺、妖怪に追われたことあるんだよね」
「えっ? 」
三人が同時に振り返った。
「妖怪のオーラって複雑で読みにくいのよ。
綺麗なオーラだって近づいたら、
いきなり悪霊みたいになったりさ」
「むやみに近づくなと申しておるだろう」
赤姫はまるで息子に叱咤するように、
眉間にしわを寄せた。
「まるでわが子を心配する母親ですね」
向井が笑った。
「な、何を申すか」
赤くなる赤姫に、
「こんな綺麗なお母さんなんて自慢だよ~」
黒谷が笑いながら言った。
「からかうでない。ほら、仕事じゃろ」
赤姫の言葉に、
「おっと、そうだった。俺さ~今フェスに………」
そこまで言ってやばいという顔をすると、
口を押えて、
「またね~」
と向井をちらりと見たまま、慌てて走り去った。
その姿を見送りながら、
怪訝そうな顔をしたが、
「そういえば楽しそうでしたけど、
何の話をしていたんですか? 」
と向井が聞いた。
「ん? あやつの弁当の売り上げがいいらしくてな。
何か欲しいものはないかって言われての」
「いいじゃないですか。
親孝行してくれる息子なんて」
アートンが笑顔になった。
「まぁな。私の櫛が割れてしまったので、
その話をしたら、
プレゼントしてくれるそうじゃ」
「よかったですね」
向井も笑みを浮かべた。
「で、お前らは何用じゃ? 」
「そうそう。河伯じいさんから、
例の土地について、
赤姫に聞いてみなさいって言われたから」
アートンが説明した。
赤姫はその話に大きく息を吐いた。
「ふう~お前たちが張った結界の上に、
私とミヒカで結界を重ねておいた。
当分、あそこにも近づけないじゃろ」
「ミヒカ? 」
二人が聞くと、
「あの祠の神じゃ。
元々貴族の姫でな。
優しすぎるのが災いして、
人間どもに土地を汚され、
あの小さな場所を妖怪たちの住処として、
長い事守っておったのじゃ」
向井達は黙って話を聞いていた。
「私がここに結界をはって、
吉沢達を追い出したからの。
仕方なく候補の一つとして、
あの土地を選んだんじゃろ。
ミヒカにはすまぬことをした」
「そのミヒカさんは、
今どこにいるかわかりますか? 」
「ミヒカなら今この裏の土地におるが、
会うことはかなわんぞ」
と土地の方へ視線を送った。
「なぜですか」
「持ってる力を使い果たして、
あの祠を守ったんじゃ。
当分は動けん。
私が休ませておるゆえ、心配するな」
「そうですか。この前、光を見たので、
そのあたりの穢れは払って、
霊玉も小さいですが、
結界として埋めてあります」
「そうか。私も気をつけて見ておくから安心するがよい」
「有難うございます」
二人が頭を下げると、
「ときに虎獅狼達はそちらで面倒みているとか。
問題はないのか? 」
赤姫が聞いた。
「部屋に置く家具でもめてましたけど、
楽しそうですよ」
向井は笑みを浮かべて説明した。
「ならよかった」
赤姫も笑ったところで、
ふとアートンが帯を見て聞いた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる