『アンダーワールド』冥王VS人間~魑魅魍魎の戦が今始まる~

八雲翔

文字の大きさ
64 / 627
第二部

丑三つ時の騒ぎ

しおりを挟む
そんなコンプリート騒ぎから数日後―――

夜中に悪霊が増え、

牧野はベッドからたたき起こされ、

ヘルプで向井と佐久間、田所も下界に下りた。

丑の刻は鬼門とされ、

陰が入り込む時間と古来より言われている。

丑三つ時は冥界に通じてしまうので、

冥界人にとっては関係なくとも、

人に合わせ鏡はタブーの一つだ。

ただ、人とはあえてタブーをするものも多く、

丑の刻に霊を暴れさせることをする。

取り込まれて騒ぐのも人なら、

追われて騒ぐのも人だ。

そしてその時間に、

なんとか祓おうとお経を唱えることで、

霊に取り憑かれるのも丑三つ時である。

「いい加減にしてほしい。

あんな馬鹿な奴ら助ける意味って何? 」

牧野が腕組みしながら、

悪霊に追われている若者を見る。

「自分で呼んだんだろ? 」

「牧野君も同じようなことした経験が、

あるんじゃないの? 」

霊銃で裏通りの悪霊を始末してきた田所が、

笑いながら言った。

「俺はあんな馬鹿じゃない!! 」

「分かったから、さっさと消して帰ろう。

霊電集めるなら、冥界札じゃないと無理だから」

佐久間がムスッとしている牧野の肩を叩いた。

「彼らが冥界に来たら、

牧野君もゆっくり眠れないと思いますよ」

向井が時を止めると、牧野は渋々悪霊に向かって、

息を吹きかけ冥界札を投げつけた。

札に取り込まれ禍々しい気は一瞬で消え、

静かな夜が戻ってきた。

腰を抜かしていた若者は気絶しているが、

そこまで面倒を見る義理もない。

牧野も寝不足で不機嫌なようだし、

彼らは仕事を終えることにした。

「牧野君、お腹空いてない?

この裏に24時間営業のつけ麺屋があるから、

食べて帰ろう」

田所がいい、

「ラーメン!? いいね~」

牧野のご機嫌を戻すのは簡単だ。

向井達は笑いながら歩き出した。


――――――――


冥界に戻ると死神課の受付には、

セーズが残っていた。

普段は厨房担当の死神だが、

アイドルのような容姿で、

舞台関係の憑依でも活躍している。

「ご苦労様でした。

デザートを食べるなら食堂に用意してありますよ」

「食べる食べる~」

牧野が嬉しそうに駆け出して行った。

「あれだけ食べて、まだ入るのか………」

田所は笑うと、

「俺はもう寝る。さすがに夜中の仕事はきつい」

と自室に戻っていった。

「私は食堂でケーキをもらってきます」

佐久間も牧野の後を追って歩き出した。

「実はさっきまで安達君の傍に冥王がいて、

皆さんが戻るのを待っていたんですけど……」

セーズの話に向井が驚いた。

「安達君に何かあったんですか? 」

「大丈夫です。

ほら、今日は安達君の命日じゃないですか」

そういえば、安達は命日になると仕事も休んで、

冥王と一緒にいるのが決まりごとになっていた。

暦の上では旧暦、新暦に関係なく、

十月は神無月。

神がいなくなる月といわれている。

安達はそんな神無月に生まれ、

また亡くなっていた。

「殺害された日は、

いつもなら魂魄が暴走するんですけど、

今年はリングと魂が安定していて、

封印されているみたいなんです。

こんなことは初めてで、

先程までデザート食べてお祝いをしてたんです」

「そうなんですか。よかったです。

じゃあ、デザートってその残り? 」

「そう。

夜中に皆さんが出て行かれたので、

戻ってきたら一緒に食べるって、

言っていたんですけど、

結局冥王と食べて、

待ち疲れて休憩室で二人で寝てます。

笑えるから、覗いてみるといいですよ」

セーズが笑いながら言った。

向井が休憩室を覗くと、

冥王と安達が寄り添って寝ている姿があった。

確かに笑えるな。

向井はその足で食堂に向かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~

水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。 死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!? 「こんなところで寝られるか!」 極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く! ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。 すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……? 「……貴様、私を堕落させる気か」 (※いいえ、ただ快適に寝たいだけです) 殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。 捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

【連載小説】『お喋りな宝石たち』~竹から生まれし王子様~

八雲翔
ライト文芸
十四石の宝石に守られ、 地球に落とされた竹から生まれた男の子。 彼の運命と彼を守る宝石たち、 そして彼を拾った女性のファンタジー。 主人公蒼川瑠璃は宝石王国の子孫。 彼女と小さな王子と宝石の妖精、そして子犬。 瑠璃は王子を守る為?  多くのものと戦うことになる?  そんなふわっとした物語です。 *この物語はフィクションです。 実在の人物や団体、地名などとは一切関係ありません。 八雲翔

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。

しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。 友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。 『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。 取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。 彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

処理中です...