あなたはずっと俺のもの

文野多咲

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ハッピーエンド?!4

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 翌日の終業後、社長室でいつものように社長の顔が近づいてきた。
 私は思わずそれを避けるも、社長は優しく私のあごを持ち上げてキスしてくる。
 いつもならそのまま私は社長の首に腕を絡ませるのに、どうしてもその気になれなかった。
 唇が離れると社長は心配げに訊いてきた。

「体調はどう?」
「大丈夫です!」

 私はニコッと笑って見せた。
 社長は私に屈みこんで頭に頬をくっつけてきた。

「今日も家に来るでしょ?」

 ふふ、可愛い人。好きです。大好きですよ、社長!
 私は、素っ気なく告げる。
 
「月のものが。なので帰ります」
「それが目的じゃない。一緒にいたい。家でゆっくり夕飯を食べよう。俺が作るよ」
「でも」
「一緒にいたい、ダメ?」

 社長は髪にキスしながら、上目遣いに訊いてくる。
 そんな仕草をされてしまうともう断れない。だって好きなんだもの。愛してるんだもの。

 社長はリゾットにパセリを振りかけながら、座っている私についでのように軽いキスをしてくる。
 愛されてるなあ、私。
 そんな感覚がある。
 セフレだけど、でも、愛されている。愛おしみのこもる目で見つめられて、とても優しく撫でられて、気遣われている。
 オフィスから直行できるこの部屋には、もう私の痕跡ばかりだ。ルールなんかとっくにどこかに行ってしまった。
 黒革のソファの上にはピンクのひざ掛けがあるし、グレーのキャビネットにはスイートピーの入った水色の花瓶が乗っている。
 グレーと黒とでまとめられた社長の部屋に、私が持ち寄ったそれらは不思議と違和感なく溶け込んでいる。

「あ、入れ過ぎた!」

 社長はペッパーミルを振りながら、焦った顔をしている。大慌てでリゾットの表面をすくう。
 会社では絶対そんな焦った顔は見せないのに。
 社長は私に随分と油断したところを見せるようになった。
 私にだけ見せる素の顔。
 私は社長にたくさんの《可愛げ》をたくさん見つけ過ぎている。
 もう私にとって社長は可愛い人、可愛くてたまらない人。
 社長、何でセフレ相手にこんなに優しくするの?
 部下だから?
 お気に入りだから?

「山田さん、何かあった?」

 黙り込んだ私を、社長は心配そうな目で見つめてきた。
 社長、私が社長の子を身ごもっていると知ったら、どんな顔をしますか……?
 困った顔をしますか?
 社長の困った顔、見たくないなあ………。

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