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いざ、バルベリ領へ
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「あなたが24番目の騎士だったのね」
ジュリエッタは背中の侯爵に向けて言った。
馬車が壊れたので、ジュリエッタもハンナも、騎乗することになった。ジュリエッタは侯爵に、ハンナはヤンスに乗せてもらっている。
「どうして、騎士に紛れていたの?」
「一緒だと嫌がられると思ったから」
(そりゃ、離婚を申し出てるくらいなんだから、嫌に決まってるわ)
「私が騎士を面談すると知って隠れたのね」
「うん、まあ」
こそこそと侯爵が隠れていたかと思えば、少々可笑しみが湧く。
「どうして、あなたまで領地に来たの?」
「あなたが行くから」
「私についてきたってこと?」
「うん、まあ」
ジュリエッタは侯爵の真意を測りかねた。
(侯爵も領地経営に興味を持ったのかしら)
「王都にいなくても大丈夫なの? 戦勝記念式典には出るんでしょう?」
(そこでシャルロットと出会ってくれないとこっちも予定が狂うんですけど)
「うん、俺は一応、主役だからね」
「そうよ、あなたが式典にいなければみんな困るわ。今すぐ王都に帰った方が良いと思うけど」
「でも延期になった」
(はい?)
「北方との和平条約が成立してから、式典を行うことになった」
(そりゃ、主役がいなければ延期せざるを得ないわよね)
「和平条約はいつ結ぶの?」
「たぶん、半年以内には。今は北方からの使者とブルフェンの役人との間で内容を詰めている。内容が固まり次第だ」
「それが済んだらちゃんと戦勝記念式典には出るんでしょう?」
「ああ、そのときにはあなたにも出てもらいたい」
「そのときまで夫婦でいれば考えます」
ジュリエッタがそう言えば背中から小さな溜息が聞こえてきたので、急に居心地が悪くなった。
シャルロットと出会う前の侯爵はそれなりに妻を大切に思っていたのかもしれない。
「それにしてもハンナを助けてくれて本当にありがとう。そして、私のことも」
ジュリエッタには素直に感謝の念が湧いていた。
「天候が悪くなりかけているのはわかっていた。先を速めなかった俺の判断ミスだ。馬車連れの度は初めてで、いろいろと不便をかけて申し訳ない」
そう謝られると、ますますジュリエッタの居心地が悪くなる。
侯爵は見晴らしの良い丘で馬を止めた。前景に城郭都市が広がっている。中心部から放射状に伸びた通りと、それを横に区切る通りとで、整然と区画されている。区画の中にはぎっしりと建物が詰まっている。
(これがバルベリ………)
建物は城郭の外にも広がっていた。人口が増えて、城郭の中だけでは足らなくなったのだ。
都市の周囲は草原が広がっているが、丘の向こうにはのどやかな田園風景が広がっている。
「素敵なところね」
バルベリ侯爵が北方防衛に専念している間、ヌワカロールが支配してきた土地。
(いよいよ、これから私の戦いが始まるんだわ)
ジュリエッタは我知らず、ファイティングポーズを取っていた。それを侯爵が見て、笑いをこらえていたがジュリエッタは気づかなかった。
***
夕暮れにバルベリの街並みは美しかった。そこかしこから煙が上がり、夕飯の香りが漂ってくる。通りには、立ち話をしている人に、荷物を運んでいる人、遊んでいる子どもらがいる。
城郭内に入ればたちまち、「騎士さまだ!」と子どもらが指さしてきた。
「わあ、お帰りなさい、騎士さま」
「あっ、お姫さまだ!」
通りにぞろぞろと人が集まってくる。ジュリエッタがひらひらと優雅に手を振ると、人々は歓声を上げた。
「わあ、本物のお姫さまだ!」
「領主さまの妃さまを騎士さまが運んできたんだわ!」
後ろの侯爵はヘルメットを降ろしているのだろう。誰も領主に気づくことはない。
「お姫さま、すっごくきれいだなあ」
「あ、もう一人お姫さまがいる!」
彼らにはハンナもお姫さまに見えているのだ。泥でドレスは汚れているが、ハンナも貴族の娘だ。お姫さまに見えて当然だ。
「二人同時に輿入れだなんて領主さまも罪な人だね」
「んだんだ、とんでもねえな」
「チーズの角にでも頭ぶつけちまえばいいのに」
これにはジュリエッタは笑ってしまった。背後からの侯爵の不服そうな唸り声に、少々胸がすく。
街並みは中心に進むにつれて下町から住宅地へと様相を変える。建物もだんだん立派なものになっていく。所狭しと立派な館が立ち並ぶ通りを行けばちょっとした広場が現れた。その奥に城館が立っていた。
城館のなかは簡素だった。館内には兵士が多く、使用人も男性ばかりで、女性の使用人は厨房にわずかにいる程度だった。ホールはパーティーなど開いたことがなさそうなほど飾り気がない。
(まずは住むところを何とかしないといけないわね)
夫人の部屋に通されたものの、そこも呆れるほどに簡素だ。
到着に先だって、カーテンもシーツも新しいものに変えられてはいるようだが、公爵令嬢として育ったジュリエッタには、居心地の良いものではなかった。
(これまでが贅沢だったんだわ。侯爵はこれまでこの城でブルフェンを守ってきてくれたんだわ。私も贅沢は言えないわ)
ジュリエッタに殊勝な気持ちが湧く。それでも居心地の良くない部屋のままでは気持ちが滅入ってしまう。
しかし、新たに買い物をするには気が引けた。王都邸では湯水のように金を使ってきたのが嘘のように買い物欲が消えていた。
(使えるものがないか城の中を探してみるわ)
布やら家具やらを掘り出しては、城館内部を整えることに励む。そのうち、それなりに内部も華やいできた。兵士らにも針仕事を頼めば、思った以上に器用に縫ってくれる。
そんな日々を過ごして数日目、その朝もハンナは、ジュリエッタの髪を梳きながら溜息をついてきた。ここのところ毎朝のように溜息だ。
「はああ……」
これ見よがしに息を吐くハンナ。
「あらハンナ、それは何の溜息?」
無視していたものの、ついに根負けして訊くことにした。
「侯爵さまが姫さまを大切にするのにもほどがあるという不満の溜息です」
「そうかしら……?」
確かに侯爵はジュリエッタのすることを大目に見てくれている。城館の中を好きなようにさせてくれているし、バルベリについて訊けばすぐに教えてくれるし、執務室で書類を見ても何も言ってこない。
(侯爵さまは、まあ、良い人よね。普通に良い人)
忙しく動き回るジュリエッタの邪魔をしないためか、侯爵は馬で外に出たり、兵舎に出向いたりしており、日中はほとんど顔を合わすこともない。
しかし、朝晩の食事には誘ってくるので、ジュリエッタは礼儀として応じている。何しろ、自分とハンナとを助けてくれた恩がある。それに何より、侯爵との食事には必ず、ジュリエッタが見たことがないデザートが用意されている。
(まあ、良い人よね。うん、すごく良い人だわよね。昨日は暖炉で侯爵みずからマシュマロを焼いてくれたし。焼いたマシュマロがあんなにおいしいとは思わなかったわ。外はカリッと中はふわっふわっ。びっくりするほどおいしかったわ)
「ホントね、侯爵さまは私のことをとても大切にしてくださっているわ」
ジュリエッタはマシュマロを思い出して、頬を緩めた。
「姫さまの緩んだ顔が、昨日のマシュマロのせいではなくて、侯爵さまとの夜を思い出してのことでしたら、このハンナ、どれほど嬉しいことでしょう。もう思い残すことはありませんわ。あとは姫さまのお子と、そのお子のお子の子の顔を見られれば、ハンナはもう何も思い残すことはありません!」
(私の子の子の子って……。結構長生きするつもりなのね、ハンナ)
「私のことばかりじゃない。ハンナにも幸せになって欲しいわよ」
「姫さまの幸せが先です」
ジュリエッタはネグリジェの裾を摘まみ上げた。昨夜も降ろしたばかりのネグリジェを着せられた。デザインが気恥ずかしいほど大人っぽい。
(いったい何着、ネグリジェを持ってきたのやら)
侯爵が凱旋帰京してから、ハンナがそれまで以上に丁寧に寝支度をしてくれているのは感じていた。ハンナは侯爵とベッドを共にして欲しいのだ。
「ずいぶんたくさんネグリジェを用意してくれたのはありがたいけど、私は侯爵とは本当の夫婦にはならないつもりよ」
「どうしてです! あんな素敵な方はいませんわ、あの方になら姫さまを何人でも差し上げられます」
「私は一人しかいないわ」
(うーん、困ったわねえ。どう説明すればハンナにわかってもらえるのかしら)
「領地に向かう姫さまについてくるという溺愛ぶりですのに。姫さまってばどうして拒絶なさるのか」
ハンナはエプロンで涙を拭いてみせる。
「姫さまもそろそろ18歳。とっくに体の準備はできております。何なら押し倒してくださっても、このハンナ、大目に見ますわ」
「それはちょっといやかな」
「何なら、このハンナ、姫さまを押し倒すお手伝いもしますわ」
「それはやめて欲しいかな」
ハンナはジュリエッタを大切にするあまり侯爵が寝室を訪れないと嘆いているようだが、ジュリエッタに無理強いをしてこないという点では、侯爵はジュリエッタを大切にしていると言える。
(予知夢って言っても信じてもらえないだろうし)
「侯爵さまには愛人がおられるのよ」
ジュリエッタは仕方なく嘘をつくことにした。それにそれはこれから本当になる。
「ええっ?」
ハンナはそう言ったきり、二の句が継げないようだった。目を白黒させて、手をわなわなと震わせている。ぶるぶるっとわなないたのち、雄たけびを上げた。
「な、な、な、なんですってええええ!」
ジュリエッタは背中の侯爵に向けて言った。
馬車が壊れたので、ジュリエッタもハンナも、騎乗することになった。ジュリエッタは侯爵に、ハンナはヤンスに乗せてもらっている。
「どうして、騎士に紛れていたの?」
「一緒だと嫌がられると思ったから」
(そりゃ、離婚を申し出てるくらいなんだから、嫌に決まってるわ)
「私が騎士を面談すると知って隠れたのね」
「うん、まあ」
こそこそと侯爵が隠れていたかと思えば、少々可笑しみが湧く。
「どうして、あなたまで領地に来たの?」
「あなたが行くから」
「私についてきたってこと?」
「うん、まあ」
ジュリエッタは侯爵の真意を測りかねた。
(侯爵も領地経営に興味を持ったのかしら)
「王都にいなくても大丈夫なの? 戦勝記念式典には出るんでしょう?」
(そこでシャルロットと出会ってくれないとこっちも予定が狂うんですけど)
「うん、俺は一応、主役だからね」
「そうよ、あなたが式典にいなければみんな困るわ。今すぐ王都に帰った方が良いと思うけど」
「でも延期になった」
(はい?)
「北方との和平条約が成立してから、式典を行うことになった」
(そりゃ、主役がいなければ延期せざるを得ないわよね)
「和平条約はいつ結ぶの?」
「たぶん、半年以内には。今は北方からの使者とブルフェンの役人との間で内容を詰めている。内容が固まり次第だ」
「それが済んだらちゃんと戦勝記念式典には出るんでしょう?」
「ああ、そのときにはあなたにも出てもらいたい」
「そのときまで夫婦でいれば考えます」
ジュリエッタがそう言えば背中から小さな溜息が聞こえてきたので、急に居心地が悪くなった。
シャルロットと出会う前の侯爵はそれなりに妻を大切に思っていたのかもしれない。
「それにしてもハンナを助けてくれて本当にありがとう。そして、私のことも」
ジュリエッタには素直に感謝の念が湧いていた。
「天候が悪くなりかけているのはわかっていた。先を速めなかった俺の判断ミスだ。馬車連れの度は初めてで、いろいろと不便をかけて申し訳ない」
そう謝られると、ますますジュリエッタの居心地が悪くなる。
侯爵は見晴らしの良い丘で馬を止めた。前景に城郭都市が広がっている。中心部から放射状に伸びた通りと、それを横に区切る通りとで、整然と区画されている。区画の中にはぎっしりと建物が詰まっている。
(これがバルベリ………)
建物は城郭の外にも広がっていた。人口が増えて、城郭の中だけでは足らなくなったのだ。
都市の周囲は草原が広がっているが、丘の向こうにはのどやかな田園風景が広がっている。
「素敵なところね」
バルベリ侯爵が北方防衛に専念している間、ヌワカロールが支配してきた土地。
(いよいよ、これから私の戦いが始まるんだわ)
ジュリエッタは我知らず、ファイティングポーズを取っていた。それを侯爵が見て、笑いをこらえていたがジュリエッタは気づかなかった。
***
夕暮れにバルベリの街並みは美しかった。そこかしこから煙が上がり、夕飯の香りが漂ってくる。通りには、立ち話をしている人に、荷物を運んでいる人、遊んでいる子どもらがいる。
城郭内に入ればたちまち、「騎士さまだ!」と子どもらが指さしてきた。
「わあ、お帰りなさい、騎士さま」
「あっ、お姫さまだ!」
通りにぞろぞろと人が集まってくる。ジュリエッタがひらひらと優雅に手を振ると、人々は歓声を上げた。
「わあ、本物のお姫さまだ!」
「領主さまの妃さまを騎士さまが運んできたんだわ!」
後ろの侯爵はヘルメットを降ろしているのだろう。誰も領主に気づくことはない。
「お姫さま、すっごくきれいだなあ」
「あ、もう一人お姫さまがいる!」
彼らにはハンナもお姫さまに見えているのだ。泥でドレスは汚れているが、ハンナも貴族の娘だ。お姫さまに見えて当然だ。
「二人同時に輿入れだなんて領主さまも罪な人だね」
「んだんだ、とんでもねえな」
「チーズの角にでも頭ぶつけちまえばいいのに」
これにはジュリエッタは笑ってしまった。背後からの侯爵の不服そうな唸り声に、少々胸がすく。
街並みは中心に進むにつれて下町から住宅地へと様相を変える。建物もだんだん立派なものになっていく。所狭しと立派な館が立ち並ぶ通りを行けばちょっとした広場が現れた。その奥に城館が立っていた。
城館のなかは簡素だった。館内には兵士が多く、使用人も男性ばかりで、女性の使用人は厨房にわずかにいる程度だった。ホールはパーティーなど開いたことがなさそうなほど飾り気がない。
(まずは住むところを何とかしないといけないわね)
夫人の部屋に通されたものの、そこも呆れるほどに簡素だ。
到着に先だって、カーテンもシーツも新しいものに変えられてはいるようだが、公爵令嬢として育ったジュリエッタには、居心地の良いものではなかった。
(これまでが贅沢だったんだわ。侯爵はこれまでこの城でブルフェンを守ってきてくれたんだわ。私も贅沢は言えないわ)
ジュリエッタに殊勝な気持ちが湧く。それでも居心地の良くない部屋のままでは気持ちが滅入ってしまう。
しかし、新たに買い物をするには気が引けた。王都邸では湯水のように金を使ってきたのが嘘のように買い物欲が消えていた。
(使えるものがないか城の中を探してみるわ)
布やら家具やらを掘り出しては、城館内部を整えることに励む。そのうち、それなりに内部も華やいできた。兵士らにも針仕事を頼めば、思った以上に器用に縫ってくれる。
そんな日々を過ごして数日目、その朝もハンナは、ジュリエッタの髪を梳きながら溜息をついてきた。ここのところ毎朝のように溜息だ。
「はああ……」
これ見よがしに息を吐くハンナ。
「あらハンナ、それは何の溜息?」
無視していたものの、ついに根負けして訊くことにした。
「侯爵さまが姫さまを大切にするのにもほどがあるという不満の溜息です」
「そうかしら……?」
確かに侯爵はジュリエッタのすることを大目に見てくれている。城館の中を好きなようにさせてくれているし、バルベリについて訊けばすぐに教えてくれるし、執務室で書類を見ても何も言ってこない。
(侯爵さまは、まあ、良い人よね。普通に良い人)
忙しく動き回るジュリエッタの邪魔をしないためか、侯爵は馬で外に出たり、兵舎に出向いたりしており、日中はほとんど顔を合わすこともない。
しかし、朝晩の食事には誘ってくるので、ジュリエッタは礼儀として応じている。何しろ、自分とハンナとを助けてくれた恩がある。それに何より、侯爵との食事には必ず、ジュリエッタが見たことがないデザートが用意されている。
(まあ、良い人よね。うん、すごく良い人だわよね。昨日は暖炉で侯爵みずからマシュマロを焼いてくれたし。焼いたマシュマロがあんなにおいしいとは思わなかったわ。外はカリッと中はふわっふわっ。びっくりするほどおいしかったわ)
「ホントね、侯爵さまは私のことをとても大切にしてくださっているわ」
ジュリエッタはマシュマロを思い出して、頬を緩めた。
「姫さまの緩んだ顔が、昨日のマシュマロのせいではなくて、侯爵さまとの夜を思い出してのことでしたら、このハンナ、どれほど嬉しいことでしょう。もう思い残すことはありませんわ。あとは姫さまのお子と、そのお子のお子の子の顔を見られれば、ハンナはもう何も思い残すことはありません!」
(私の子の子の子って……。結構長生きするつもりなのね、ハンナ)
「私のことばかりじゃない。ハンナにも幸せになって欲しいわよ」
「姫さまの幸せが先です」
ジュリエッタはネグリジェの裾を摘まみ上げた。昨夜も降ろしたばかりのネグリジェを着せられた。デザインが気恥ずかしいほど大人っぽい。
(いったい何着、ネグリジェを持ってきたのやら)
侯爵が凱旋帰京してから、ハンナがそれまで以上に丁寧に寝支度をしてくれているのは感じていた。ハンナは侯爵とベッドを共にして欲しいのだ。
「ずいぶんたくさんネグリジェを用意してくれたのはありがたいけど、私は侯爵とは本当の夫婦にはならないつもりよ」
「どうしてです! あんな素敵な方はいませんわ、あの方になら姫さまを何人でも差し上げられます」
「私は一人しかいないわ」
(うーん、困ったわねえ。どう説明すればハンナにわかってもらえるのかしら)
「領地に向かう姫さまについてくるという溺愛ぶりですのに。姫さまってばどうして拒絶なさるのか」
ハンナはエプロンで涙を拭いてみせる。
「姫さまもそろそろ18歳。とっくに体の準備はできております。何なら押し倒してくださっても、このハンナ、大目に見ますわ」
「それはちょっといやかな」
「何なら、このハンナ、姫さまを押し倒すお手伝いもしますわ」
「それはやめて欲しいかな」
ハンナはジュリエッタを大切にするあまり侯爵が寝室を訪れないと嘆いているようだが、ジュリエッタに無理強いをしてこないという点では、侯爵はジュリエッタを大切にしていると言える。
(予知夢って言っても信じてもらえないだろうし)
「侯爵さまには愛人がおられるのよ」
ジュリエッタは仕方なく嘘をつくことにした。それにそれはこれから本当になる。
「ええっ?」
ハンナはそう言ったきり、二の句が継げないようだった。目を白黒させて、手をわなわなと震わせている。ぶるぶるっとわなないたのち、雄たけびを上げた。
「な、な、な、なんですってええええ!」
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