51 / 53
巡る運命
しおりを挟む
マクシとマルコは、数奇なことに結ばれることになった。
夫人がマルコからの報告を聞いたとき、いったい、何が起きているのかわからなかった。立て続けに起きる事柄に頭の整理が追い付かない。夫人は考えるのをやめた。
マルコはジュリエッタに言ってきた。
「ジュリエッタ、私の代わりに公爵を継いでくれないか?」
目を丸くするジュリエッタになおも言う。
「外国には、女性でも当たり前に大臣になる国が多いんだ。それに、この国にも継承者を男性に限る法律などどこにもない。いずれ公爵領はレオナルダ家の手を離れるけど、それまでの間、ジュリエッタに任せたほうがいいと思うんだ。それに私はもっと海に出たい」
ジュリエッタにも公爵領を経営してみたい、という欲がなくはなかった。領地も10年後には小作人たる農家へと権利移譲をするが、それまでに、少しでもヌワカロール農法を行き渡らせたいとも思っている。
ダニエルを見れば、いつものように穏やかに見返してくる。『お気に召すままに』と目で言っている。
ジュリエッタは一晩考え、爵位を引き受けることにした。そうと決まれば早々に公爵から爵位を譲られ、ジュリエッタは女公爵となった。
***
「ええっ、私が女王に?」
ジュリエッタが王宮に呼び出されて出向いてみると、アドルフは書面を見せてきた。それには、フィリップの御璽が押されていた。王宮急襲のときに、押させた書面だ。
その書面をよく読めば、フィリップから、アドルフへの譲位を記したものではなかった。20年前のフィリップの即位の無効を認めるものだった。
「20年前の譲位状には、前国王、つまり、僕たちの父上の御璽が押されてなかった。父は最後までフィリップの即位には反対だった。それで父は、正式な譲位状に誰の名を書いたと思う?」
ジュリエッタには思いつくはずもなかったが、こう訊いてくるところを見ると思い当たるのは一人しかいない。
「もしかして、お母さま?」
「そうだ、父上は姉上を最も信頼していた。兄は性格破綻者だし、僕は国王なんて器じゃなかったからね。この国には継承者を女性に限る法律なんかない。慣習的に男性ばかりが爵位を継いでいたが、父はそれを破ろうと考えたんだ。しかし、それを知った兄は、父が病気になったのをいいことに王宮の奥深くに軟禁して、即位してしまったのさ」
ジュリエッタは二の句が継げないままだった。
最近の夫人は情緒不安定だが、領地の経営手腕は確かだった。身分差別をするが、それも王者になるには必要なことなのかもしれない。確かにフィリップよりは良い国王になれたに違いない。
「20年前の即位は無効となり、王位の継承は姉上、そして、姉上の継承者であるマルコとジュリエッタに、正当な王位継承権が移ったんだ」
「これは、それを記した書類だったのね……」
「そして、マルコは爵位継承をジュリエッタに譲った。つまりレオナルダ家の当主はジュリエッタだ。王の座もジュリエッタのものとなる。貴族議会もこれを正当に認めるはずだ」
(私が女王………?)
***
その夜、ジュリエッタは侯爵邸の窓から、外を眺めているダニエルに後ろから抱き着いた。ダニエルは侯爵位に戻り、二人は侯爵邸に住んでいる。
ダニエルはやはりジュリエッタの気配に気づいて、振り向いた。
「ジュリエッタ、迷っているの?」
「ええ、もちろん。女王になるだなんて思いもしなかったことだもの」
当然のようにアドルフが王位につくものだと思っていた。アドルフには継承者はいないが、そもそも10年限りのことなので、問題にはならない。
「俺には、ジュリエッタは女王を拒否していないように見える。でも、同時に不安を抱えている。その不安は何かな?」
ダニエルはジュリエッタの心をいつも見透かしている。ジュリエッタは顔を赤らめて、ダニエルの手を取り、お腹に当てた。
「ここに……」
勘の良いダニエルはすぐにジュリエッタの言いたいことがわかり、ジュリエッタと同じく顔を赤らめた。
「本当?」
「うん、まだ言うには早いと思ったけど」
ジュリエッタは身ごもったのだ、二人の子を。ダニエルは満面に喜びを浮かべた。ジュリエッタを優しく抱きしめる。
「それが不安なら、安心して欲しい。俺が煩わしいことのすべてを引き受けるから。それにハンナだっている。夫人だってきっと頼りになってくれる」
寝室にこもっていた夫人は、少しずつ、元気を取り戻しているように見えた。マクシのことも、マクシがマルコよりもちょうど10歳上だと知り、急に受け入れ始めた。夫人も公爵の10歳上である。そんなところに仲間意識を抱いたのだろう。最近では、ダニエルに対する態度も以前と違って丁重なものとなっている。
ダニエルはジュリエッタに囁いてきた。
「お腹の中の子に、あなたの立派な姿を見せてほしい。ジュリエッタなら、きっと素晴らしい女王になれる。ブルフェン王国最後の女王を立派に努められる」
ジュリエッタはダニエルの言葉を聞きながら、女王になる決意を固めていった。
***
ジュリエッタは鏡台に向かっていた。髪結いを終えたジュリエッタを、ハンナが四方八方から眺めては、細かい部分を調整している。
その日は即位式を予定していた。ハンナはいつも以上に真剣で、鼻息も大きくなっている。
「ねえ、ハンナ、こんな威厳のない女王なんていないわよね」
ハンナはシュコーッと鼻息を吸い込んで、吠える。
「姫さまっ! 姫さまの背中からは後光が差すくらい、ありがたみがありますわっ。貴族も民衆も姫さまのありがたみに皆ひれ伏しますからっ。ええ、私も今すぐひれ伏したいくらいでございますわっ」
ハンナはいつまでも、どこを切ってもハンナだ。常にジュリエッタの味方でいてくれる。
「ハンナ、いつも本当にありがとう。どうか、ハンナも幸せになってね」
「どうしたんです? 姫さま、改まって」
「ちゃんと言っておかないと言えないままだと嫌だから」
そのとき、ハンナはどきりとした。その言い方にどこか不吉さを感じた。ハンナはそれを振り払って言う。
「これからも何度でも言ってくださいませ。今も私は幸せですけど、欲張って更なる幸せを求めますから。そして、姫さまも、今以上に幸せになってくださいませ」
「ええ、もっともっと幸せになるわ」
ジュリエッタはそう言いながら腹に手を当てた。
「新しい命もあるのだもの」
それを聞いたハンナの鼻息はますます粗くなった。
「世界一の女王様にしてみせますわ!」
***
即位式。ジュリエッタは、アドルフから冠を授けられることになった。
誰の目にもフィリップが王位を奪われたことが明らかだったが、民衆にフィリップに同情するものはいなかった。ジュリエッタが女王になることが発表されても、贅沢三昧のジュリエッタを知っていた彼らは、喜ぶでもなかった。
ただ、平民議会が制定された。10年を経てば、貴族議会から決定権はすべて、平民議会に移譲される。しかし、そういう話を耳にしても、民衆にはどういうことが起きるのか想像もつかず、日々の生活に追われるだけだった。
あるとき、路地裏から忽然と浮浪者が消えた。救貧院が立ち上がり、貧困者はそこで支援を受け始めた。のちに様々な支援が行き渡ることになるが、それらはバルベリ侯爵の私財で賄われていることは、知られることではなかった。
フィリップの退位後、王都は急激に変わり始めていた。そんな中で、ジュリエッタの即位式は行われることになった。
少し腹の大きくなったジュリエッタは、輝かんばかりの美しさに、母性を湛えていた。テラスに姿を現したジュリエッタを見るなり、民衆は沸いた。
「ジュリエッタ女王、万歳!」
「女王陛下、幸あれ!」
民衆らは声を限りに叫び始めた。そうさせるだけのものがジュリエッタにはあった。
ジュリエッタが手を上げたそのときだった。一本の矢がジュリエッタに向かって飛んできたのは。
背後に寄り添っていたダニエルはすぐにその矢を手で払った。
しかし、攻撃は一か所からではなかった。テラスに入ってきた男が、ジュリエッタにとびかかった。その手にはナイフがあった。
ダニエルが男を押し飛ばしたときには、ジュリエッタの胸にはナイフが突き刺さっていた。
夫人がマルコからの報告を聞いたとき、いったい、何が起きているのかわからなかった。立て続けに起きる事柄に頭の整理が追い付かない。夫人は考えるのをやめた。
マルコはジュリエッタに言ってきた。
「ジュリエッタ、私の代わりに公爵を継いでくれないか?」
目を丸くするジュリエッタになおも言う。
「外国には、女性でも当たり前に大臣になる国が多いんだ。それに、この国にも継承者を男性に限る法律などどこにもない。いずれ公爵領はレオナルダ家の手を離れるけど、それまでの間、ジュリエッタに任せたほうがいいと思うんだ。それに私はもっと海に出たい」
ジュリエッタにも公爵領を経営してみたい、という欲がなくはなかった。領地も10年後には小作人たる農家へと権利移譲をするが、それまでに、少しでもヌワカロール農法を行き渡らせたいとも思っている。
ダニエルを見れば、いつものように穏やかに見返してくる。『お気に召すままに』と目で言っている。
ジュリエッタは一晩考え、爵位を引き受けることにした。そうと決まれば早々に公爵から爵位を譲られ、ジュリエッタは女公爵となった。
***
「ええっ、私が女王に?」
ジュリエッタが王宮に呼び出されて出向いてみると、アドルフは書面を見せてきた。それには、フィリップの御璽が押されていた。王宮急襲のときに、押させた書面だ。
その書面をよく読めば、フィリップから、アドルフへの譲位を記したものではなかった。20年前のフィリップの即位の無効を認めるものだった。
「20年前の譲位状には、前国王、つまり、僕たちの父上の御璽が押されてなかった。父は最後までフィリップの即位には反対だった。それで父は、正式な譲位状に誰の名を書いたと思う?」
ジュリエッタには思いつくはずもなかったが、こう訊いてくるところを見ると思い当たるのは一人しかいない。
「もしかして、お母さま?」
「そうだ、父上は姉上を最も信頼していた。兄は性格破綻者だし、僕は国王なんて器じゃなかったからね。この国には継承者を女性に限る法律なんかない。慣習的に男性ばかりが爵位を継いでいたが、父はそれを破ろうと考えたんだ。しかし、それを知った兄は、父が病気になったのをいいことに王宮の奥深くに軟禁して、即位してしまったのさ」
ジュリエッタは二の句が継げないままだった。
最近の夫人は情緒不安定だが、領地の経営手腕は確かだった。身分差別をするが、それも王者になるには必要なことなのかもしれない。確かにフィリップよりは良い国王になれたに違いない。
「20年前の即位は無効となり、王位の継承は姉上、そして、姉上の継承者であるマルコとジュリエッタに、正当な王位継承権が移ったんだ」
「これは、それを記した書類だったのね……」
「そして、マルコは爵位継承をジュリエッタに譲った。つまりレオナルダ家の当主はジュリエッタだ。王の座もジュリエッタのものとなる。貴族議会もこれを正当に認めるはずだ」
(私が女王………?)
***
その夜、ジュリエッタは侯爵邸の窓から、外を眺めているダニエルに後ろから抱き着いた。ダニエルは侯爵位に戻り、二人は侯爵邸に住んでいる。
ダニエルはやはりジュリエッタの気配に気づいて、振り向いた。
「ジュリエッタ、迷っているの?」
「ええ、もちろん。女王になるだなんて思いもしなかったことだもの」
当然のようにアドルフが王位につくものだと思っていた。アドルフには継承者はいないが、そもそも10年限りのことなので、問題にはならない。
「俺には、ジュリエッタは女王を拒否していないように見える。でも、同時に不安を抱えている。その不安は何かな?」
ダニエルはジュリエッタの心をいつも見透かしている。ジュリエッタは顔を赤らめて、ダニエルの手を取り、お腹に当てた。
「ここに……」
勘の良いダニエルはすぐにジュリエッタの言いたいことがわかり、ジュリエッタと同じく顔を赤らめた。
「本当?」
「うん、まだ言うには早いと思ったけど」
ジュリエッタは身ごもったのだ、二人の子を。ダニエルは満面に喜びを浮かべた。ジュリエッタを優しく抱きしめる。
「それが不安なら、安心して欲しい。俺が煩わしいことのすべてを引き受けるから。それにハンナだっている。夫人だってきっと頼りになってくれる」
寝室にこもっていた夫人は、少しずつ、元気を取り戻しているように見えた。マクシのことも、マクシがマルコよりもちょうど10歳上だと知り、急に受け入れ始めた。夫人も公爵の10歳上である。そんなところに仲間意識を抱いたのだろう。最近では、ダニエルに対する態度も以前と違って丁重なものとなっている。
ダニエルはジュリエッタに囁いてきた。
「お腹の中の子に、あなたの立派な姿を見せてほしい。ジュリエッタなら、きっと素晴らしい女王になれる。ブルフェン王国最後の女王を立派に努められる」
ジュリエッタはダニエルの言葉を聞きながら、女王になる決意を固めていった。
***
ジュリエッタは鏡台に向かっていた。髪結いを終えたジュリエッタを、ハンナが四方八方から眺めては、細かい部分を調整している。
その日は即位式を予定していた。ハンナはいつも以上に真剣で、鼻息も大きくなっている。
「ねえ、ハンナ、こんな威厳のない女王なんていないわよね」
ハンナはシュコーッと鼻息を吸い込んで、吠える。
「姫さまっ! 姫さまの背中からは後光が差すくらい、ありがたみがありますわっ。貴族も民衆も姫さまのありがたみに皆ひれ伏しますからっ。ええ、私も今すぐひれ伏したいくらいでございますわっ」
ハンナはいつまでも、どこを切ってもハンナだ。常にジュリエッタの味方でいてくれる。
「ハンナ、いつも本当にありがとう。どうか、ハンナも幸せになってね」
「どうしたんです? 姫さま、改まって」
「ちゃんと言っておかないと言えないままだと嫌だから」
そのとき、ハンナはどきりとした。その言い方にどこか不吉さを感じた。ハンナはそれを振り払って言う。
「これからも何度でも言ってくださいませ。今も私は幸せですけど、欲張って更なる幸せを求めますから。そして、姫さまも、今以上に幸せになってくださいませ」
「ええ、もっともっと幸せになるわ」
ジュリエッタはそう言いながら腹に手を当てた。
「新しい命もあるのだもの」
それを聞いたハンナの鼻息はますます粗くなった。
「世界一の女王様にしてみせますわ!」
***
即位式。ジュリエッタは、アドルフから冠を授けられることになった。
誰の目にもフィリップが王位を奪われたことが明らかだったが、民衆にフィリップに同情するものはいなかった。ジュリエッタが女王になることが発表されても、贅沢三昧のジュリエッタを知っていた彼らは、喜ぶでもなかった。
ただ、平民議会が制定された。10年を経てば、貴族議会から決定権はすべて、平民議会に移譲される。しかし、そういう話を耳にしても、民衆にはどういうことが起きるのか想像もつかず、日々の生活に追われるだけだった。
あるとき、路地裏から忽然と浮浪者が消えた。救貧院が立ち上がり、貧困者はそこで支援を受け始めた。のちに様々な支援が行き渡ることになるが、それらはバルベリ侯爵の私財で賄われていることは、知られることではなかった。
フィリップの退位後、王都は急激に変わり始めていた。そんな中で、ジュリエッタの即位式は行われることになった。
少し腹の大きくなったジュリエッタは、輝かんばかりの美しさに、母性を湛えていた。テラスに姿を現したジュリエッタを見るなり、民衆は沸いた。
「ジュリエッタ女王、万歳!」
「女王陛下、幸あれ!」
民衆らは声を限りに叫び始めた。そうさせるだけのものがジュリエッタにはあった。
ジュリエッタが手を上げたそのときだった。一本の矢がジュリエッタに向かって飛んできたのは。
背後に寄り添っていたダニエルはすぐにその矢を手で払った。
しかし、攻撃は一か所からではなかった。テラスに入ってきた男が、ジュリエッタにとびかかった。その手にはナイフがあった。
ダニエルが男を押し飛ばしたときには、ジュリエッタの胸にはナイフが突き刺さっていた。
267
あなたにおすすめの小説
婚姻契約には愛情は含まれていません。 旦那様には愛人がいるのですから十分でしょう?
すもも
恋愛
伯爵令嬢エーファの最も嫌いなものは善人……そう思っていた。
人を救う事に生き甲斐を感じていた両親が、陥った罠によって借金まみれとなった我が家。
これでは領民が冬を越せない!!
善良で善人で、人に尽くすのが好きな両親は何の迷いもなくこう言った。
『エーファ、君の結婚が決まったんだよ!! 君が嫁ぐなら、お金をくれるそうだ!! 領民のために尽くすのは領主として当然の事。 多くの命が救えるなんて最高の幸福だろう。 それに公爵家に嫁げばお前も幸福になるに違いない。 これは全員が幸福になれる機会なんだ、当然嫁いでくれるよな?』
と……。
そして、夫となる男の屋敷にいたのは……三人の愛人だった。
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
離縁した旦那様が、今になって後悔の手紙を送ってきました。
睡蓮
恋愛
乱暴な言葉を繰り返した挙句、婚約者であるロミアの事を追放しようとしたグレン。しかしグレンの執事をしていたレイはロミアに味方をしたため、グレンは逆追放される形で自らの屋敷を追われる。その後しばらくして、ロミアのもとに一通の手紙が届けられる。差出人はほかでもない、グレンであった…。
【完結】「お前とは結婚できない」と言われたので出奔したら、なぜか追いかけられています
22時完結
恋愛
「すまない、リディア。お前とは結婚できない」
そう告げたのは、長年婚約者だった王太子エドワード殿下。
理由は、「本当に愛する女性ができたから」――つまり、私以外に好きな人ができたということ。
(まあ、そんな気はしてました)
社交界では目立たない私は、王太子にとってただの「義務」でしかなかったのだろう。
未練もないし、王宮に居続ける理由もない。
だから、婚約破棄されたその日に領地に引きこもるため出奔した。
これからは自由に静かに暮らそう!
そう思っていたのに――
「……なぜ、殿下がここに?」
「お前がいなくなって、ようやく気づいた。リディア、お前が必要だ」
婚約破棄を言い渡した本人が、なぜか私を追いかけてきた!?
さらに、冷酷な王国宰相や腹黒な公爵まで現れて、次々に私を手に入れようとしてくる。
「お前は王妃になるべき女性だ。逃がすわけがない」
「いいや、俺の妻になるべきだろう?」
「……私、ただ田舎で静かに暮らしたいだけなんですけど!!」
一年後に離婚すると言われてから三年が経ちましたが、まだその気配はありません。
木山楽斗
恋愛
「君とは一年後に離婚するつもりだ」
結婚して早々、私は夫であるマグナスからそんなことを告げられた。
彼曰く、これは親に言われて仕方なくした結婚であり、義理を果たした後は自由な独り身に戻りたいらしい。
身勝手な要求ではあったが、その気持ちが理解できない訳ではなかった。私もまた、親に言われて結婚したからだ。
こうして私は、一年間の期限付きで夫婦生活を送ることになった。
マグナスは紳士的な人物であり、最初に言ってきた要求以外は良き夫であった。故に私は、それなりに楽しい生活を送ることができた。
「もう少し様子を見たいと思っている。流石に一年では両親も納得しそうにない」
一年が経った後、マグナスはそんなことを言ってきた。
それに関しては、私も納得した。彼の言う通り、流石に離婚までが早すぎると思ったからだ。
それから一年後も、マグナスは離婚の話をしなかった。まだ様子を見たいということなのだろう。
夫がいつ離婚を切り出してくるのか、そんなことを思いながら私は日々を過ごしている。今の所、その気配はまったくないのだが。
[完結中編]蔑ろにされた王妃様〜25歳の王妃は王と決別し、幸せになる〜
コマメコノカ@女性向け・児童文学・絵本
恋愛
王妃として国のトップに君臨している元侯爵令嬢であるユーミア王妃(25)は夫で王であるバルコニー王(25)が、愛人のミセス(21)に入り浸り、王としての仕事を放置し遊んでいることに辟易していた。
そして、ある日ユーミアは、彼と決別することを決意する。
狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します
ちより
恋愛
侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。
愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。
頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。
公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。
あなたの言うことが、すべて正しかったです
Mag_Mel
恋愛
「私に愛されるなどと勘違いしないでもらいたい。なにせ君は……そうだな。在庫処分間近の見切り品、というやつなのだから」
名ばかりの政略結婚の初夜、リディアは夫ナーシェン・トラヴィスにそう言い放たれた。しかも彼が愛しているのは、まだ十一歳の少女。彼女が成人する五年後には離縁するつもりだと、当然のように言い放たれる。
絶望と屈辱の中、病に倒れたことをきっかけにリディアは目を覚ます。放漫経営で傾いたトラヴィス商会の惨状を知り、持ち前の商才で立て直しに挑んだのだ。執事長ベネディクトの力を借りた彼女はやがて商会を支える柱となる。
そして、運命の五年後。
リディアに離縁を突きつけられたナーシェンは――かつて自らが吐いた「見切り品」という言葉に相応しい、哀れな姿となっていた。
*小説家になろうでも投稿中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる