私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲

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 友人たちには結婚のキャンセルを伝えた。隆司に襲われかけたことまでは伝えなかった。到底、軽々しく伝えられるようなことではなかった。
 家を出たことも伝えると、心配をさせたようで、『今、どこにいるの?』『うちに来る?』と訊いてきた。
『由紀兄さんを頼ってるの』と返せば、『叔父さんなのよね。なら、安心ね』と納得したようだった。

(叔父さんだから、安心なはずなのに)

 優月は、ベッドの上で、由紀也の腕に抱かれていた。
 今朝、由紀也は「ここで一緒に寝てもいい」と言ってくれた。
 優月は一人で寝ないで済むことに安心して由紀也のベッドに入り、「おいで」と言われて、その胸に飛び込んだものの。

(安心するけど、落ち着かないわ)

 頑丈そうな由紀也の胸に抱かれていると、何故だか気が高ぶってくる。そっと背中に回された腕に、もっと強く抱きしめて欲しいと思ってしまう。

(こんな気持ちおかしいわ)

「優月」

 耳元で名前を呼ばれて、背中に甘やかな痺れが走る。

「暑い?」
「え……?」
「耳が真っ赤だ」

 見られているのだと思うと急に恥ずかしくなって、耳を抑えた。

「見ないで……」
「見たらダメ?」
「恥ずかしいわ」
「可愛いから見てしまう」
「ダメ……、恥ずかしいわ」

 顔を上げると、甘く笑んだ由紀也と目が合った。
 由紀也の大人の色香に、優月はくらくらとした衝動を覚えた。

(もう、由紀兄さんは格好良すぎるんだわ)

 優月が俯くと、由紀也は優月の頭を撫でてきた。
 もっと体じゅうを撫でて欲しいような気になって優月は恥ずかしくなった。
 そのうち、由紀也の手が止まり、寝息が聞こえてきた。
 その寝息に優月は安寧を覚え、やがて寝入った。
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