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第1章
宝石
しおりを挟むいよいよニュースでも記録的大寒波が話題になり始めていた。
ニュースに出てくる専門家も災害レベルだと声をあげている。
家に着くと母親の車がなかった。
仕事で遅くなるのだろう。
たまにある事だ。
玄関に入るとリビングからテレビの音が聞こえた。
入ると舞華が大寒波のニュースを見ていて咲恵に気がつくと
「お姉ちゃん…おかえりなさい…」
と恐る恐る言った。
もうずっと話していなかった。
あの日から。
咲恵も避けていたのもあるが。
「…ただいま」
咲恵がそう一言呟くとホッとしたようにテレビ画面に視線を戻した。
「お姉ちゃん、今年春来ないかもしれないって」
舞華がチャンネルを回すがどこも同じ話題。
「…そうみたいだね…」
「………大変だ……雪ですべって転ばないようにね!!」
「気をつけるよ…舞華も気をつけなね?」
舞華はまた彼女の方を向き笑顔でうんっと返事をした
ところで聞き覚えのある車の音がする。
2人はサッといつもの日常に戻った。
咲恵は部屋へ向かい、舞華は宿題を始める。
これが日常。
就寝の時間。
最近は寒すぎて寝付きが悪くなってしまった。
同時に春幸に会うことに対する不安は次第に諦めに変わって言っていた。
「なんで会えないんだろ…手順は変わらず踏んでるのに…」
しかしこの日は違った。
春幸を思いながら深い底へと落ちる瞬間。
足を掴まれ引っ張られた。
「(な、なに!?!?なになになに!?!?)」
パニック。
まるでプールで溺れる感覚。
咲恵は突然のことに慌てて目を開ける。
が、自分の部屋の天井はそこにはなかった。
むしろ咲恵は四つん這いの体勢をとっていた。
目の前には瓦礫の山。
あまりの突然のことにまだ認識できなかったが
どこか懐かしさを感じた気がした。
キャパオーバーで咲恵はボーッと一時停止をしてしまったかのような状態に…
「やっと…やっと見つけたぞ小娘……」
全く聞いた事のない怒りの篭もった男の声。
「……(声…?)」
「…おい!いつまでボーッとしてるつもりだ!!」
勢いよく身体を引っ張られ無理やり立ち上がる。
「貴様が《春が君》と会っていた咲恵という奴だな!?!?!」
罵声にも似た声が後ろからぐわんぐわん響いてくる。
「…春が君…?」
「とぼけるな!!むしろ!いい加減こっちを向けえぇい!!」
そんな言葉に従うようにゆっくりと身体を声のする方へ向けた。
見知らぬ男が1人立っていた。
「おだんご……」
お団子頭にしている男の服装は現実とは掛け離れたものですぐにこれは明晰夢だと認識した。
「おだんごではない!!!馬鹿にしてるのか!?!?私は礼々(らいらい)だ!!!!」
礼々はそう言うなり咲恵の胸ぐらを掴んだ。
「貴様のせいで…貴様のせいで!!!!春が君は…………おのれ…!!!!」
何故か何も言葉が出なかった。
礼々は胸ぐらを掴みながら咲恵を大きく揺さぶる。
彼が何を言っているのか分からなかった。
いや、分かりたくなかった。
嫌な予感しかしない。
だって
「ここ……【いつもの場所】じゃん…」
瓦礫の山になったそこはいつもの春幸と雑談をしていた場所。
神殿の跡だった。
あんな神殿を包んでいた綺麗な森も草花は枯れ果て、暖かな風も身を潜めている。
「な、なにが……」
悪寒がする。
寒い。
冬のようだ。
咲恵の青ざめる姿に礼々は物凄い形相で唇をかみ締め、睨みつけた。
「おのれっ…貴様まだとぼけるか…」
「なにが…なにがあったの?」
嫌だ嫌だ嫌だ。
知りたくない。
聞きたくない。
聞きたくないのに…
「春幸…は…?」
「きっ…さま…!!!軽々しくその名を…!!」
「死んでしまったの…」
礼々とは違う、女の子の声がする。
その声が聞こえた礼々は掴んでいた胸ぐらから手をゆっくり離し後ろを向いた。
彼が体勢を変えた為、咲恵にもその姿が確認できた。少女が1人。
見た目が中学生ぐらいの子で華やかな装飾を身にまとっていた。
「春が君…春幸様は…死んでしまったの…」
俯きがちに少女が答えた。
全身の血の気が引くのを感じた。
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