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53、王女は言い当てる
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「……楽しかったですか」
「はい、とても楽しくすごさせていただきました」
「そう、ですか。それならよかったのですが」
(……機嫌……あんまり良くない??)
急に私に会いに来てくれたわりには、言葉と裏腹に何だかイーリアス様の空気がおかしい、気がする。
気がするというのは、いつも通りイーリアス様の表情がほとんど変わらないから。
「どういったお話をなさったか、伺っても良いですか?」
「はい、まずは食糧支援の件でお礼をおっしゃってくださり、それからカサンドラ様と取り組まれている防災のお話などを……クロノス王太子殿下のお仕事も、とても多岐にわたるのですね」
「殿下からご覧になって、クロノス王太子殿下はどのように映りますか」
「やはり頭の良い方ですね。
それでいて柔軟で、思いきったことの出来る方だと思います。
結婚式を早めてくださったこともそうですけれど、こう、瞬発力があると申しますか。
カサンドラ様と仲がよい理由もわかる気がいたします」
(ん?)イーリアス様の空気が変わった、気がする。ちょっと拍子抜けをしたような。
でも、王太子としての評価を答えたのだから、間違ってはいないわよね?
「……クロノス王太子殿下は、とても女性に人気のある方ですが」
言われて、クロノス殿下の国宝級のダイヤモンドのような容姿を思い浮かべる。
「そうですね。
あのお美しい容姿に、理知的な立ち居振舞いでいらっしゃいますから。
望みもしないのに異性に寄ってこられるのも幸せとは限りませんけれど……お妃選びには有利かもしれませんね。
王族の結婚相手を決めるのは大変ですので」
「話していらっしゃって、殿下ご自身はどのようにお感じになりますか」
「?? ですから、とても頭の良い方だと……」
質問がループした。
その時、イーリアス様が私の目を覗き込む。
なぜか不意に、答えが見つかった気がした。
「あの……イーリアス様。
もしかして、焼きもちをお焼きになられていますか?」
と、口にしてしまったその時、イーリアス様と目が合った。
(………………)
目があった瞬間、自分が言ったばかりの言葉が恥ずかしくてたまらなくなった。
「…………って、そんなわけないですよねごめんなさい調子に乗りました」
確かに愛してると言われたのは事実だけど、さすがに自分から言うには恥ずかしすぎるセリフだった……。
「……妬いております」
「!」
そっぽ向きながら、ぽそりと言った彼の言葉を、私は聞き逃さなかった。
気づいてしまった。
やや日に焼けた肌色のイーリアス様も、耳が赤くなることに。
「私、疑われるようなことはありませんよ?」
「……もちろん、殿下のことは信頼申し上げております。
ですが、あのクロノス王太子殿下です。出会った端から女性が皆夢中になってしまう方です。
お歳も私よりも10も若く、容姿も私と違い大変優美で、おそらく人を怖がらせることもなく……そして何より王太子ですから、その。
…………もう良いでしょうか、殿下」
そっぽ向いたまま、とつとつと語るイーリアス様に、妙に心の中をくすぐられた。
一言で言えば(かわいい)と思ってしまう。
考えれば根拠がないことじゃない。もともと私はクロノス王太子殿下の妃候補として検討されていたのだから。
「私のことを思って、不安になられたということでしょうか?」
「……殿下もおっしゃったように、人の心の中のことは止められず、他の者にはどうしようもないのですから」
「目を合わせてください。イーリアス様」
そっぽ向いたイーリアス様の前に回り込む。
急角度で見上げると、正面から彼と目があった。
身体の大きな男性が恐かった。
子どもの頃のことを思い出すから。
力で勝てないと目に見えてわかるから。
今はこの大きな身体が愛おしい。夫のすべてが愛おしい。
「私、イーリアス様のおそばを絶対に離れませんから。
結婚証明書と、イーリアス様がかけてくださった〈誓約魔法〉に誓って。
……あれは、絶対に私を離したくないとお思いだったから、かけたのですよね?」
ちょっと自分で言っていて恥ずかしい。
結婚証明書には『互いに貞節であることを誓う』という項目があった。
イーリアス様がそれに〈誓約魔法〉をかけたということは、私もイーリアス様も他の異性に走ることは絶対にないということ。
「不安に思われる気持ちもわかります。私だって……焼きもちを焼くこともあるので」
「? 殿下が、そのように思われることは何も」
「……またお話しします」
たぶん私は、少し浮かれていた。
イーリアス様の新たな一面を見れたこと、焼きもちを焼く彼をかわいいと思う気持ち、愛されているという実感。
せっかくだからこの機会に、イーリアス様の昔の恋人の話を聞くこともできただろうに、水を差したくなかった。
「……ところで、イーリアス様」
「はい」
「イーリアス様も、とてもおモテになりますよね?」
「??? いえ、どちらかというと怖がられているかと思いますが」
……どうやら、そちらの方は自覚はないらしい。
◇ ◇ ◇
「はい、とても楽しくすごさせていただきました」
「そう、ですか。それならよかったのですが」
(……機嫌……あんまり良くない??)
急に私に会いに来てくれたわりには、言葉と裏腹に何だかイーリアス様の空気がおかしい、気がする。
気がするというのは、いつも通りイーリアス様の表情がほとんど変わらないから。
「どういったお話をなさったか、伺っても良いですか?」
「はい、まずは食糧支援の件でお礼をおっしゃってくださり、それからカサンドラ様と取り組まれている防災のお話などを……クロノス王太子殿下のお仕事も、とても多岐にわたるのですね」
「殿下からご覧になって、クロノス王太子殿下はどのように映りますか」
「やはり頭の良い方ですね。
それでいて柔軟で、思いきったことの出来る方だと思います。
結婚式を早めてくださったこともそうですけれど、こう、瞬発力があると申しますか。
カサンドラ様と仲がよい理由もわかる気がいたします」
(ん?)イーリアス様の空気が変わった、気がする。ちょっと拍子抜けをしたような。
でも、王太子としての評価を答えたのだから、間違ってはいないわよね?
「……クロノス王太子殿下は、とても女性に人気のある方ですが」
言われて、クロノス殿下の国宝級のダイヤモンドのような容姿を思い浮かべる。
「そうですね。
あのお美しい容姿に、理知的な立ち居振舞いでいらっしゃいますから。
望みもしないのに異性に寄ってこられるのも幸せとは限りませんけれど……お妃選びには有利かもしれませんね。
王族の結婚相手を決めるのは大変ですので」
「話していらっしゃって、殿下ご自身はどのようにお感じになりますか」
「?? ですから、とても頭の良い方だと……」
質問がループした。
その時、イーリアス様が私の目を覗き込む。
なぜか不意に、答えが見つかった気がした。
「あの……イーリアス様。
もしかして、焼きもちをお焼きになられていますか?」
と、口にしてしまったその時、イーリアス様と目が合った。
(………………)
目があった瞬間、自分が言ったばかりの言葉が恥ずかしくてたまらなくなった。
「…………って、そんなわけないですよねごめんなさい調子に乗りました」
確かに愛してると言われたのは事実だけど、さすがに自分から言うには恥ずかしすぎるセリフだった……。
「……妬いております」
「!」
そっぽ向きながら、ぽそりと言った彼の言葉を、私は聞き逃さなかった。
気づいてしまった。
やや日に焼けた肌色のイーリアス様も、耳が赤くなることに。
「私、疑われるようなことはありませんよ?」
「……もちろん、殿下のことは信頼申し上げております。
ですが、あのクロノス王太子殿下です。出会った端から女性が皆夢中になってしまう方です。
お歳も私よりも10も若く、容姿も私と違い大変優美で、おそらく人を怖がらせることもなく……そして何より王太子ですから、その。
…………もう良いでしょうか、殿下」
そっぽ向いたまま、とつとつと語るイーリアス様に、妙に心の中をくすぐられた。
一言で言えば(かわいい)と思ってしまう。
考えれば根拠がないことじゃない。もともと私はクロノス王太子殿下の妃候補として検討されていたのだから。
「私のことを思って、不安になられたということでしょうか?」
「……殿下もおっしゃったように、人の心の中のことは止められず、他の者にはどうしようもないのですから」
「目を合わせてください。イーリアス様」
そっぽ向いたイーリアス様の前に回り込む。
急角度で見上げると、正面から彼と目があった。
身体の大きな男性が恐かった。
子どもの頃のことを思い出すから。
力で勝てないと目に見えてわかるから。
今はこの大きな身体が愛おしい。夫のすべてが愛おしい。
「私、イーリアス様のおそばを絶対に離れませんから。
結婚証明書と、イーリアス様がかけてくださった〈誓約魔法〉に誓って。
……あれは、絶対に私を離したくないとお思いだったから、かけたのですよね?」
ちょっと自分で言っていて恥ずかしい。
結婚証明書には『互いに貞節であることを誓う』という項目があった。
イーリアス様がそれに〈誓約魔法〉をかけたということは、私もイーリアス様も他の異性に走ることは絶対にないということ。
「不安に思われる気持ちもわかります。私だって……焼きもちを焼くこともあるので」
「? 殿下が、そのように思われることは何も」
「……またお話しします」
たぶん私は、少し浮かれていた。
イーリアス様の新たな一面を見れたこと、焼きもちを焼く彼をかわいいと思う気持ち、愛されているという実感。
せっかくだからこの機会に、イーリアス様の昔の恋人の話を聞くこともできただろうに、水を差したくなかった。
「……ところで、イーリアス様」
「はい」
「イーリアス様も、とてもおモテになりますよね?」
「??? いえ、どちらかというと怖がられているかと思いますが」
……どうやら、そちらの方は自覚はないらしい。
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