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60、王女は彼女を頼る
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◇ ◇ ◇
…………母の影のちらつく手紙を受け取ってから、私は情報収集に動いていた。
結婚披露パーティーまでもう少し。その間に何かを仕掛けてこられる可能性もある。少しでも準備をしておきたかった。
といっても、友達といえる人はまだいない。
宰相閣下と奥様(イーリアス様の祖母)に相談したら、様々な方を紹介してくださって、さらにお茶会などで引き合わせてくださった。
いろいろな人にそれとなく話を聞く限りでは、私のトリニアスでの噂を知る人は、まだいなさそうだ。
……私への嫌がらせなら、私の知らないところで噂をばらまいていそうなものなのに。母の性格を考えると、少し不気味だ。
それとも、何か今後私に交渉を仕掛けてくるつもり?
(そもそも、もう2度と私の顔なんて見たくないんじゃなかったの??)
たとえ何かの理由で国王陛下や兄が私を呼び戻そうとしても、母だけは反対しそうなのに。
母の方でも何か事情が変わったの?
疑念を持っていたら、ある時、新聞の片隅に載っていた記事を目にした。
父、トリニアス国王陛下が軍の者から襲撃を受け、重傷を負ったらしい。
それは結構前のことらしく、外国のニュースなので、ベネディクト国内に入ってくるまでにはかなり時間がかかったのだ。
大丈夫だろうか、と心配する気持ちはある。でも、実の父親だけど会いに帰りたいという気持ちはもうない。
会ってしまえば、また、都合良く私を使おうとしてくる父に失望するのが目に見えている。
それはそれとして、王が重傷を負ったというのは王政への影響が大きいだろう。
(……イーリアス様が危惧されたように、仕事が回らなくなって私を呼び戻そうとしている??)
彼のそばからは絶対に離れないつもりだけど、あの手紙のせいで様々な可能性を考えてしまう。
こうして私を掻き乱すことが、あの手紙をよこした目的なのかしら……。
◇ ◇ ◇
そんな中で私はこの日、ある来客を迎えていた。
「こちらからのご相談ですのにご足労いただき、ありがとうございます、ミス・メドゥーサ」
「いえ、頼っていただき光栄ですわ。よろしくお願い申し上げます」
……夜会で会ったイーリアス様の先輩、ミス・メドゥーサを邸に呼んだのだ。
イーリアス様の王立学園時代を知り、サブリナさんとも面識がある彼女と話せば、何かヒントが見つかるかもと思ったのだ。
さっそくミス・メドゥーサをティールームに通し、ホメロス公爵家一押しの最上級の紅茶と、料理人たちが腕によりをかけたお菓子をふるまった。
「とても美味しゅうございますわ」
甘いものは大好きらしい。嬉しそうな顔でしばらくケーキに舌鼓を打っていたミス・メドゥーサは、少しおなかを満たしたところで、さて、と私に向き直る。
「サブリナのことでしたわね。
まぁ、後輩としては品行方正なタイプでしたわ。
王立学園に通っているぐらいの歳の子だと、優等生とか良い子といわれるのをあまり好みませんけれど、彼女はそういわれたがっている空気を感じました。
学園の中で問題を起こしたことはなかったかと思います。
イーリ……いえ、少将閣下との交際開始はわたくしの卒業後ですけれど、そのあとしばらく悪い噂もなく、といって良い方で評判になることもなく……」
「そうだったのですね」
「ただその後、閣下との交際中に他の男性に粉をかけ、結婚したことで『醜聞』とまではいかなくとも、評判はかなり悪くなりましたわ。
しかも戦場で傷を負ったことを理由にした点では、軍人たちやその妻たちの反感を買っておりますし。
サブリナとその両親がやったことは、要領よく立ち回ったように見えて、その実とても雑だったのです」
ミス・メドゥーサの分析は辛辣だ。
彼女も心情的にイーリアス様寄りらしい。
「……伯爵夫人かつ大尉夫人とはいえ、サブリナは今でも社交界で良い扱いはされていないようですわね。
夫の階級も結婚以来上がっていないと聞きますし、あまり夜会やお茶会にも誘われない様子ですわ。
おそらく彼女が殿下にまつわる噂をどうにかして広めようとしても、
『自分が捨てた後に出世した元恋人への未練と、新妻に対する嫉妬だ』
と鼻で笑われ、相手にされないのではないかしら……というのがわたくしの率直な意見ですわ」
私はうなずく。
少しだけ安堵した。
だけど、母……王妃陛下は、どうやって彼女の存在を知ったのか、どうして彼女に目を付けたのか。
イーリアス様と私の結婚が決まってから、元々ベネディクト国内に送っていた間諜に指示を出し、イーリアス様の身辺を洗わせたということ?
(だとすれば、他にもイーリアス様周りの人に接触している可能性があるかしら??)
…………母の影のちらつく手紙を受け取ってから、私は情報収集に動いていた。
結婚披露パーティーまでもう少し。その間に何かを仕掛けてこられる可能性もある。少しでも準備をしておきたかった。
といっても、友達といえる人はまだいない。
宰相閣下と奥様(イーリアス様の祖母)に相談したら、様々な方を紹介してくださって、さらにお茶会などで引き合わせてくださった。
いろいろな人にそれとなく話を聞く限りでは、私のトリニアスでの噂を知る人は、まだいなさそうだ。
……私への嫌がらせなら、私の知らないところで噂をばらまいていそうなものなのに。母の性格を考えると、少し不気味だ。
それとも、何か今後私に交渉を仕掛けてくるつもり?
(そもそも、もう2度と私の顔なんて見たくないんじゃなかったの??)
たとえ何かの理由で国王陛下や兄が私を呼び戻そうとしても、母だけは反対しそうなのに。
母の方でも何か事情が変わったの?
疑念を持っていたら、ある時、新聞の片隅に載っていた記事を目にした。
父、トリニアス国王陛下が軍の者から襲撃を受け、重傷を負ったらしい。
それは結構前のことらしく、外国のニュースなので、ベネディクト国内に入ってくるまでにはかなり時間がかかったのだ。
大丈夫だろうか、と心配する気持ちはある。でも、実の父親だけど会いに帰りたいという気持ちはもうない。
会ってしまえば、また、都合良く私を使おうとしてくる父に失望するのが目に見えている。
それはそれとして、王が重傷を負ったというのは王政への影響が大きいだろう。
(……イーリアス様が危惧されたように、仕事が回らなくなって私を呼び戻そうとしている??)
彼のそばからは絶対に離れないつもりだけど、あの手紙のせいで様々な可能性を考えてしまう。
こうして私を掻き乱すことが、あの手紙をよこした目的なのかしら……。
◇ ◇ ◇
そんな中で私はこの日、ある来客を迎えていた。
「こちらからのご相談ですのにご足労いただき、ありがとうございます、ミス・メドゥーサ」
「いえ、頼っていただき光栄ですわ。よろしくお願い申し上げます」
……夜会で会ったイーリアス様の先輩、ミス・メドゥーサを邸に呼んだのだ。
イーリアス様の王立学園時代を知り、サブリナさんとも面識がある彼女と話せば、何かヒントが見つかるかもと思ったのだ。
さっそくミス・メドゥーサをティールームに通し、ホメロス公爵家一押しの最上級の紅茶と、料理人たちが腕によりをかけたお菓子をふるまった。
「とても美味しゅうございますわ」
甘いものは大好きらしい。嬉しそうな顔でしばらくケーキに舌鼓を打っていたミス・メドゥーサは、少しおなかを満たしたところで、さて、と私に向き直る。
「サブリナのことでしたわね。
まぁ、後輩としては品行方正なタイプでしたわ。
王立学園に通っているぐらいの歳の子だと、優等生とか良い子といわれるのをあまり好みませんけれど、彼女はそういわれたがっている空気を感じました。
学園の中で問題を起こしたことはなかったかと思います。
イーリ……いえ、少将閣下との交際開始はわたくしの卒業後ですけれど、そのあとしばらく悪い噂もなく、といって良い方で評判になることもなく……」
「そうだったのですね」
「ただその後、閣下との交際中に他の男性に粉をかけ、結婚したことで『醜聞』とまではいかなくとも、評判はかなり悪くなりましたわ。
しかも戦場で傷を負ったことを理由にした点では、軍人たちやその妻たちの反感を買っておりますし。
サブリナとその両親がやったことは、要領よく立ち回ったように見えて、その実とても雑だったのです」
ミス・メドゥーサの分析は辛辣だ。
彼女も心情的にイーリアス様寄りらしい。
「……伯爵夫人かつ大尉夫人とはいえ、サブリナは今でも社交界で良い扱いはされていないようですわね。
夫の階級も結婚以来上がっていないと聞きますし、あまり夜会やお茶会にも誘われない様子ですわ。
おそらく彼女が殿下にまつわる噂をどうにかして広めようとしても、
『自分が捨てた後に出世した元恋人への未練と、新妻に対する嫉妬だ』
と鼻で笑われ、相手にされないのではないかしら……というのがわたくしの率直な意見ですわ」
私はうなずく。
少しだけ安堵した。
だけど、母……王妃陛下は、どうやって彼女の存在を知ったのか、どうして彼女に目を付けたのか。
イーリアス様と私の結婚が決まってから、元々ベネディクト国内に送っていた間諜に指示を出し、イーリアス様の身辺を洗わせたということ?
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