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◇14◇ 【劇団/ペラギア視点】劇団、絶賛混乱中。
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◇ ◇ ◇
「私たちの役がなくなるって、どういうこと!?」
「ちょっと待ってよ!? どうして!?」
「もう、私たち食べていけないじゃない、こんなの!!」
(…………うるさっ)
ドアを開けた瞬間甲高い声が耳を襲う。
それは、私が人気女優リリスの代役として呼ばれた舞台の終演後だった。
劇団長の部屋に行くと、ちょうど何人かの女優たちが、団長をなじっている。
団長が言い返す。
「当たり前だろう!
看板女優のリリスがいなくなった。
客入りの見込みもかなり下方修正しなければならない。
かかる出演料を下げるしかないだろう!」
「そ、それにしたって!!」「なんで私たちの役ばっかり削るのよ!?」
「君たちの役は、リリスが客を連れてくることを見込んで組まれたものでしかなかったんだよ」
「そ、そんっなぁっ」
「酷な言い方をするが、君たちの中に、自分の名前で客を連れてこられる役者がいるのかね?
これは自分にしかできないと、明確な強みを持つ役者がいるのかね?」
「き、決まった人間にしか、主演を張らせないから悪いのよ! チャンスが与えられなければ、お客さんの印象にも残らないじゃない!!」
「そうよ! 私たちにもやらせてよ!!」
「ろくに実力もない努力も足りない無名の役者の主演。いったいどこの誰が出資するのか、言ってみたまえ」
「…………!! そんなの、劇団長ががんばってよッ!!」
いい加減鬱陶しくなってしまったので、私は思わず女優たちの頭を台本ではたいた。
「「「いッ!? たぁっ!?」」」
「だ、誰よッ…………ぺ、ペラギア……さん?」
「そろそろ反省でもしてる頃かと思ったけど。
あんたたちよね? 得意気に、リリスのデマばらまきまくってたの。劇団の連中から聞いたわよ」
いまは別の劇団に所属する私ペラギアは、今回、古巣の劇団から頼まれて助っ人にきていた。
超人気女優リリス・ウィンザーが同じ劇団の女優に襲われ大怪我。
しかもそれがリリスがその女優をいじめていた復讐だという噂が広まり、劇団はリリスをやめさせなければならなくなった。
といってリリスの代役が務まる女優なんてそうそういない……ということで、私に声がかかったのだ。
「で、どんな気分よ?
事件にかこつけて中傷ばらまいて、目障りな年下の主演女優を追い出せたと思ったら、その主演女優が稼いだ金で今まで自分たちが食べていけてたこと思い知って」
「わ、私たち、そんなつもりじゃ……」
「どちらかというと、正義感よ!! ラミナの名誉を守りたかったっていうか」
「な、何で、リリスがいじめてないってわかるのよ!? いじめてたかもしれないじゃない!!」
「言うに事欠いて、それ?
────じゃ、私が新しく噂を広めてもいいわけよね。あんたたち名指しして、この女優たちが中傷を流してリリスをいじめた、って」
「わ、私たちのこれは、いじめじゃないっ!!
これは、正当な……っ」
「いじめてる奴って、いっつもそう言うのよねぇ。
『私たちのはいじめじゃない』って」
「「「…………!!」」」
女優たちは逃げるように団長室を出ていった。
他人の足引っ張ることしか考えてない奴って、ほんと嫌い。少ししたら自分のやったことなんて綺麗さっぱり忘れるんでしょうね。
「あいつらには、今度落とし前つけさせるわ」
「お、穏便にしてくれよ……?」
「劇団の不名誉にはならないようにしとくから多目に見てよ。
団長。ちょっと時間もらえる?」
答えを聞くまえに、団長室の椅子に私は座ってしまう。
「さすがに、28歳で令嬢役やるのはキツかったわ」
「そうかい?? 君に頼んで本当に良かったと思う。素晴らしい舞台だったよ」
「お世辞は良いわよ。
ついこの間まで、顔と才能と運動神経かねそなえてる芸歴13年の17歳が張ってた役よ。ある意味公開処刑の気分だったわ。
────それより、団長。どうしてリリスを追い出したの?」
「それは……」
「あんたにとって娘同然のリリスでしょ。
対外的には追い出したことにしといて、どこかに匿うこともできたはず。
責めてんじゃないのよ。理由を教えて」
「実は」
団長は、おずおずと、机のしたから手紙の束を取り出した。
「……とある貴族から、こんなにたくさん……リリスを“譲って”ほしいという手紙が」
「“譲る”? 愛人にしたいってこと?」
「……ではなくて、あくまでも女優としてのリリスを雇いたいということらしいんだが、どうもうさんくさく、気持ちが悪くて……。
といって、これをリリスの両親に見せたら、絶対に金に目の色を変えて連れていってしまうだろう。だから隠していたら……あの事件が起きた」
団長は深く、ため息をつく。
「この貴族、実は元々ラミナを贔屓にしていたんだ。
だから、もしかすると、ラミナにリリスの襲撃をさせたんじゃ……とも思ったんだけど、やはりそれじゃ、目的がわからなくなる。
だって一歩間違えれば、リリスは死んでたかもしれないんだから」
「ふうん……でも、だったらなおさらリリスを追い出す理由にはならないんじゃない?」
「……もしかしたら、ラミナのほかにも劇団の中に手先になっている奴がいるんじゃないか? そう疑ってしまってね……。
私の力不足で、さっきの女優たちみたいに、リリスをいじめようとする連中も出てきていた。
それに、両親が戻ってきてしまったら、またリリスは搾取される。情があって捨てきれないようだけど、絶対にあの親たちとは縁を切った方がいい。
……いろいろ考えると、私の手の届くところにいるよりは、私にもここの人間にも追えないところに行った方が、リリスは安全なんじゃないか……そう思ったのさ」
「────もうちょっといいやり方は絶対あったと思うけど、団長の意図はわかったわ」
私は髪をかき上げた。
「もう少し早く、私に相談してほしかったけど。
……じゃあ、私がするべきことは3つね。
その貴族の周辺を洗って事件との関係をしらべること、ラミナを締め上げて本当の動機を吐かせること、リリスを連れ戻すこと」
「え、しかし……それはつまり」
「前の仕事のつてを使うわよ。あんまり使いたくないけど」
使えば使うほど、私はいまの女優としての実力を正当に評価してもらえなくなる。そんなことはわかっている。だけど。
「でも、リリスの両親が……」
「戻ってきても私が追っ払ってやる。
それよりまずは、ラミナを取り調べした憲兵、紹介してくれないかしら」
女優ペラギア、28歳。前職、高級娼婦。
主な取引先────国王、高位貴族、豪商、新聞社社主、その他。
◇ ◇ ◇
「私たちの役がなくなるって、どういうこと!?」
「ちょっと待ってよ!? どうして!?」
「もう、私たち食べていけないじゃない、こんなの!!」
(…………うるさっ)
ドアを開けた瞬間甲高い声が耳を襲う。
それは、私が人気女優リリスの代役として呼ばれた舞台の終演後だった。
劇団長の部屋に行くと、ちょうど何人かの女優たちが、団長をなじっている。
団長が言い返す。
「当たり前だろう!
看板女優のリリスがいなくなった。
客入りの見込みもかなり下方修正しなければならない。
かかる出演料を下げるしかないだろう!」
「そ、それにしたって!!」「なんで私たちの役ばっかり削るのよ!?」
「君たちの役は、リリスが客を連れてくることを見込んで組まれたものでしかなかったんだよ」
「そ、そんっなぁっ」
「酷な言い方をするが、君たちの中に、自分の名前で客を連れてこられる役者がいるのかね?
これは自分にしかできないと、明確な強みを持つ役者がいるのかね?」
「き、決まった人間にしか、主演を張らせないから悪いのよ! チャンスが与えられなければ、お客さんの印象にも残らないじゃない!!」
「そうよ! 私たちにもやらせてよ!!」
「ろくに実力もない努力も足りない無名の役者の主演。いったいどこの誰が出資するのか、言ってみたまえ」
「…………!! そんなの、劇団長ががんばってよッ!!」
いい加減鬱陶しくなってしまったので、私は思わず女優たちの頭を台本ではたいた。
「「「いッ!? たぁっ!?」」」
「だ、誰よッ…………ぺ、ペラギア……さん?」
「そろそろ反省でもしてる頃かと思ったけど。
あんたたちよね? 得意気に、リリスのデマばらまきまくってたの。劇団の連中から聞いたわよ」
いまは別の劇団に所属する私ペラギアは、今回、古巣の劇団から頼まれて助っ人にきていた。
超人気女優リリス・ウィンザーが同じ劇団の女優に襲われ大怪我。
しかもそれがリリスがその女優をいじめていた復讐だという噂が広まり、劇団はリリスをやめさせなければならなくなった。
といってリリスの代役が務まる女優なんてそうそういない……ということで、私に声がかかったのだ。
「で、どんな気分よ?
事件にかこつけて中傷ばらまいて、目障りな年下の主演女優を追い出せたと思ったら、その主演女優が稼いだ金で今まで自分たちが食べていけてたこと思い知って」
「わ、私たち、そんなつもりじゃ……」
「どちらかというと、正義感よ!! ラミナの名誉を守りたかったっていうか」
「な、何で、リリスがいじめてないってわかるのよ!? いじめてたかもしれないじゃない!!」
「言うに事欠いて、それ?
────じゃ、私が新しく噂を広めてもいいわけよね。あんたたち名指しして、この女優たちが中傷を流してリリスをいじめた、って」
「わ、私たちのこれは、いじめじゃないっ!!
これは、正当な……っ」
「いじめてる奴って、いっつもそう言うのよねぇ。
『私たちのはいじめじゃない』って」
「「「…………!!」」」
女優たちは逃げるように団長室を出ていった。
他人の足引っ張ることしか考えてない奴って、ほんと嫌い。少ししたら自分のやったことなんて綺麗さっぱり忘れるんでしょうね。
「あいつらには、今度落とし前つけさせるわ」
「お、穏便にしてくれよ……?」
「劇団の不名誉にはならないようにしとくから多目に見てよ。
団長。ちょっと時間もらえる?」
答えを聞くまえに、団長室の椅子に私は座ってしまう。
「さすがに、28歳で令嬢役やるのはキツかったわ」
「そうかい?? 君に頼んで本当に良かったと思う。素晴らしい舞台だったよ」
「お世辞は良いわよ。
ついこの間まで、顔と才能と運動神経かねそなえてる芸歴13年の17歳が張ってた役よ。ある意味公開処刑の気分だったわ。
────それより、団長。どうしてリリスを追い出したの?」
「それは……」
「あんたにとって娘同然のリリスでしょ。
対外的には追い出したことにしといて、どこかに匿うこともできたはず。
責めてんじゃないのよ。理由を教えて」
「実は」
団長は、おずおずと、机のしたから手紙の束を取り出した。
「……とある貴族から、こんなにたくさん……リリスを“譲って”ほしいという手紙が」
「“譲る”? 愛人にしたいってこと?」
「……ではなくて、あくまでも女優としてのリリスを雇いたいということらしいんだが、どうもうさんくさく、気持ちが悪くて……。
といって、これをリリスの両親に見せたら、絶対に金に目の色を変えて連れていってしまうだろう。だから隠していたら……あの事件が起きた」
団長は深く、ため息をつく。
「この貴族、実は元々ラミナを贔屓にしていたんだ。
だから、もしかすると、ラミナにリリスの襲撃をさせたんじゃ……とも思ったんだけど、やはりそれじゃ、目的がわからなくなる。
だって一歩間違えれば、リリスは死んでたかもしれないんだから」
「ふうん……でも、だったらなおさらリリスを追い出す理由にはならないんじゃない?」
「……もしかしたら、ラミナのほかにも劇団の中に手先になっている奴がいるんじゃないか? そう疑ってしまってね……。
私の力不足で、さっきの女優たちみたいに、リリスをいじめようとする連中も出てきていた。
それに、両親が戻ってきてしまったら、またリリスは搾取される。情があって捨てきれないようだけど、絶対にあの親たちとは縁を切った方がいい。
……いろいろ考えると、私の手の届くところにいるよりは、私にもここの人間にも追えないところに行った方が、リリスは安全なんじゃないか……そう思ったのさ」
「────もうちょっといいやり方は絶対あったと思うけど、団長の意図はわかったわ」
私は髪をかき上げた。
「もう少し早く、私に相談してほしかったけど。
……じゃあ、私がするべきことは3つね。
その貴族の周辺を洗って事件との関係をしらべること、ラミナを締め上げて本当の動機を吐かせること、リリスを連れ戻すこと」
「え、しかし……それはつまり」
「前の仕事のつてを使うわよ。あんまり使いたくないけど」
使えば使うほど、私はいまの女優としての実力を正当に評価してもらえなくなる。そんなことはわかっている。だけど。
「でも、リリスの両親が……」
「戻ってきても私が追っ払ってやる。
それよりまずは、ラミナを取り調べした憲兵、紹介してくれないかしら」
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