信じていました…

信じていた人の裏切り⑭

「…ア、アリーヌも…一緒だったのですか？…うっ…」
「ああ、馬車の中で今も泣いているだろう」
「えっ！？」
クリストフはアリーヌが泣いていると聞き動揺していた。
アランは、床に蹲るクリストフの側で腰を落とした。
「君が迎えに行くか？クリストフの姿を見ればアリーヌも喜ぶだろう」
「っ…い、いえ……」
「私も馬車まで迎えに行きたくはない、メイドに行かせ客室へ来るように言ってくれ」
「……」
クリストフは震える体を押さえ立ち上がろうとしたが足に力が入らず起き上がる事が出来なかった。
「…仕方がない人を呼ぼう」
アランは、廊下で戸惑いながら待っていた執事に声をかけた。
「男の使用人をクリストフを客室まで連れて行って欲しい、それと妻が馬車の中にいるメイドを何人か向かわせ客室へ連れて行ってくれ」
「え、あ、は、はい」
執事はクリストフが蹲る姿と書類の紙が床に散らばったのを見て動揺して、廊下を急いだ。
「…彼女は、どうしている？」
「か…彼女…？」
「君の奥さんだよ」
「……部屋で休んでいます…」
「妻から聞いたが、彼女も君とアリーヌとの関係を知ってしまったと聞いた…気を失なってその後は会っていないと聞いた」
「……」
クリストフの何も話さないのを見てアランは腰を上げため息を吐いた。アランのため息を吐く声を聞いただけでクリストフはビクッと蹲る体を動かした。
「君は客室でアリーヌが来るのを待っているといいだろう…二人で今後の話しでもしたらいい」
「え…」
バタンと部屋を出たアランにクリストフはギュッと手を握り締めていた。
「う…ううっ…」
クリストフは泣いた…お腹の痛みよりも…ローラとの別れが近付いている悲しさにクリストフは泣いていた。