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サミエル・グロース⑥

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「サミエル隊長!!」
フレック騎士の親友ジョエル騎士が息を荒く、闘技場の入り口でサミエル隊長に声を上げた。
「ん?なんだお前は?」
「……はあはあ……」
ジョエル騎士は吐く息を押さえていた時、場内でサミエル隊長の前に蹲るフレック騎士に気付いた。
「フレック!?」
二人の側に駆け寄るジョエル騎士は地面に両膝を着き、今にも倒れそうなフレック騎士の肩に手をやると、ジョエル騎士はサミエル隊長を見上げた。
「サミエル隊長、彼が何をしたのですか?」
「第四騎士団の騎士か?!」
「……はい、ジョエルと言います。フレック騎士とは同期の仲間です…サミエル隊長、何故彼にこのような……」
「そうか、フレック騎士と同期か、ならフレック騎士とライト騎士の話しは聞いているのか!?」
「!」
ジョエル騎士はフレック騎士の傷だらけの姿を見て、ライト騎士が絡んでいると思いフレック騎士の肩をギュッと握り締めた。
「……フレック騎士から…聞いています…」
「ふっ、そうか、言っておくが指導をして欲しいと願い出たのはフレック騎士の方だが」
「!!」
「俺は稽古に付き合っただけだ」
「……」
カランと木刀を放したサミエル隊長はジョエル騎士に声をかけた「これでライト騎士と縁が切れたのだ喜ぶべきだろう?ククク」
「……っ」
サミエル隊長はフレック騎士とジョエル騎士の側を離れ闘技場を去って行った。
「フレック、フレック大丈夫か?」
正気を失ったかのようなフレック騎士の頬を流れる涙が見え、ジョエル騎士は驚き何も言えずにいた。
「……た」
「フレック?」
「……信じていた…これだけでも……信じたか…った……」
「フレック!?」
ガクッと体が地面の上に倒れたフレック騎士にジョエル騎士は真っ青な顔になり、フレック騎士を何度も呼んでいた…
「フレック、しっかりしろ!くそっ、こんな時に限って誰も通らないんだ?!今、団長達を呼んで来る待ってろ!」
ジョエル騎士は闘技場を離れフレック騎士は意識が遠くなる時、ライト騎士の笑顔を思い出していた。
フレック騎士がサミエル隊長の稽古で怪我をしたフレック騎士が床に臥して数日が経っていた。
コンコン!
「フレック俺だ入るぞ」
「ああ、ジョエルまた来たのか!?」
「う、グサッと来るような言い方は無いだろう?親友の見舞いに毎日来て何が悪い」
「ハハハハ…イタタタ……」
フレック騎士は二段ベッドの下で体を起こし笑った時、痛みを感じたお腹に手を当て笑顔をジョエル騎士に向けていた。
「まだ痛むのか?」
「少し痛みが来るだけで大丈夫だ」
「そうか…しかし回復力が早いとスパル先生が驚いていたぞ、あんなに大怪我をしていた奴が今では笑っているもんな」
「体の鍛え方が違うからな」
「はい、はい、聞かなかった事にしてやろう」
「それは酷いな」
笑顔を見せるジョエル騎士とフレック騎士…数日前の出来事が嘘のようにゆっくりと時間が流れていた。






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