「別れない」と言われても「私はあなたと別れます」

クロユキ

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夫の期待

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ルイーゼは夫フェリクスとそしてメロディが一緒に馬車の中にいた。
今日から店へ行くルイーゼは緊張して落ち着きがなかった。
「フェリクス様、新しい宝石が欲しいの良いですか?」
ルイーゼの隣に座るメロディが、笑顔で両手を合わせて前に座るフェリクスに新しい宝石をお願いしていた。
ルイーゼは、普通にお願いをするメロディに驚いていた。
「高価な物は買えないがそれで良いのなら買ってあげよう」
「本当!嬉しい」
子供の様に喜ぶメロディにルイーゼは茫然としていた。
「君にも買ってあげよう」
「えっ!?い、いえ…私は遠慮致します…」
「まあ、せっかくフェリクス様が買ってくださると言っているのを断るなんて勿体ないわ」
「……」
(結婚をしてまだ日が浅いのにフェリクス様の宝石は高いと聞いた事があったから…本当に私に店を任せて良いの?)
ルイーゼは、宝石を買って貰うよりも仕事の事でそれどころではなかった。
「欲しい時は私に言いなさい、遠慮はしなくて良い」
「…ありがとうございます…」
「ルイーゼ様、フェリクス様と結婚できて良かったと思うわよフェリクス様は優しい方だから」
「おいおい、私の事を褒めて高価な宝石が欲しいと言わないでくれよ」
「ふふふ」
「……」
ルイーゼは、店に着く前から疲れを感じてしまった。
馬車が止まりルイーゼ達は馬車から降りた。最近までは、店の前を素通りしていたのがまさか自分がこの店で働く事になるとは思いもしなかった。
「……」
店が続く何十件目のその先に両親の店がある
「……」
「店に入ろう」
フェリクスとメロディが先に店へ入りルイーゼは、この場所から見えない両親の店の方を見た後フェリクスの宝石店へ入った。
「いらっしゃいませ」
店員の声を聞いたルイーゼは初めて入ったフェリクスの店に驚いた。
幾つもあるガラスケースの中に見たこともない高価な宝石の輝きに目が痛く思わず瞼を綴じてしまった。
「……」
「私の店へは初めてだったかな?」
フェリクスがルイーゼの側に立ち聞いていた。
「……はい、初めてです」
「目が慣れるまでゆっくりと見ていると良い」
「……はい」
ルイーゼはキラキラと店の中が眩しくここで働く事が出来るのか不安でフェリクスに断る事も考えていた。
「……あの…フェリクス様…」
「この店を君に任せ私は自分の仕事が出来ると思うと嬉しく思っているんだ」
「……」
ルイーゼは、言えなかった…自分を頼ってくれる夫に無理ですとは言えなかった。



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