捨てられた侯爵夫人の二度目の人生は皇帝の末の娘でした。

クロユキ

文字の大きさ
144 / 196

戸惑い⑧

しおりを挟む
コンコン!
「旦那様、皇女様の入浴の準備が……」
メイドのナディアが、入浴の知らせに図書室となった部屋を開けると床に座り泣いている皇女と抱き寄せるアレックの姿に目を見開いて驚いていた。
「し…」
と声に出さないアレックを見てメイドのナディアは頭を下げ静かに扉を閉めた。
「……まさか……奥様が…」
震える体を支えメイドのナディアはメイド長に会いに行った。
「……クスン…」と今まで泣いていたソフィアは落ち着きを取り戻していた。
(…彼女がこんなに泣く姿は初めて見た…俺がエミリーを庇い妻を何度泣かせるような事をしてきたのか…)
腕の中で少女となって変わってしまってもソフィアに会えた事がなによりも嬉しかった。
「……あ…私……」
我に返ったソフィアは、今アレックの腕の中にいる事に気がつき顔が真っ赤になっていた。
「…少しは落ち着いたのか…」
(話し方が…私が知っている旦那様に…)
「…はい…有り難う御座います…両親の安否も分かりよかったと思います…」
「…ご両親の事は後で話せばよかったと思ったが…」
「いえ…ずっと気になっていた事でしたから…あの…旦那様…いえ、アレック様…離してもらっても…」
「あ!…ああ、すまない…」
スルッと抱き締めていた手が離れソフィアはホッと息を吐いた。
「……俺が体に触れるのは嫌だろうな…」
「え?」
「いや、なんでもない…入浴の準備が出来たようだ後でメイドに向かわせる」
「はい…」
図書部屋を出たアレックとソフィアは廊下を歩き初めて一緒に歩いた。
「まだ…俺に話したい事聞きたい事があるだろう…君が眠れないのは全て俺のせいだ…」
「…どうして、エミリーを部屋に入れたのですか?」
「!!そ…それは…」
「一回ではありません…何回も…貴方はエミリーを部屋に呼んでいたのを私は知っていました…」
「……っ」
「…先ほど貴方は、私に子供がいないと話していました…私にその話をするなんて酷いと思いました…一度も私の元へ来る事はありませんでしたから…」
「ま、待ってくれ、君の元へ行こうとしたんだ…だが、君が俺に触れるのは嫌だと思って…」
「なんの事ですか?」
「…仕事が忙しく屋敷へ帰っても寝てしまう事が多かった日、いつも君は俺に声をかけてくれた…それが急に君からの声がなくなった…俺と目があっても戸惑う姿が多かったから、君が俺の事が嫌になったんだと思って…」
「いつ私が、旦那様を嫌だと言ったのですか?私を見てもため息を吐いていましたら私も戸惑います…まさか、私が旦那様を嫌だと思い…だから、エミリーの元へ…」
「……それは…」
「……入浴場へ行って来ます…」
「ソ…」
タタタ…アレックの側を離れたソフィアは廊下を走り、残されたアレックは、結婚したその日からのお互いのすれ違いに後悔するばかりだった…










しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

遊び人の令嬢が目を付けたのは、私の真面目な婚約者でした

おいどん
恋愛
子爵家の令嬢エリーネと伯爵家の次男のノルトが婚約を結んだのは、半年前だった。 真面目で優秀なノルトに相応しい婚約者であろうとするものの、エリーネには自信がなかった。 ある日、遊び人と噂の令嬢べルティーナとノルトが共にいるところを見てしまう。 「真面目クンは壁さえ破っちゃえばこっちのもんだからね〜」 「きっと、彼女の美しさに嫉妬しているのだわ…」 「…今度は、ちゃんと言葉にするから」

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

ほんの少しの仕返し

turarin
恋愛
公爵夫人のアリーは気づいてしまった。夫のイディオンが、離婚して戻ってきた従姉妹フリンと恋をしていることを。 アリーの実家クレバー侯爵家は、王国一の商会を経営している。その財力を頼られての政略結婚であった。 アリーは皇太子マークと幼なじみであり、マークには皇太子妃にと求められていたが、クレバー侯爵家の影響力が大きくなることを恐れた国王が認めなかった。 皇太子妃教育まで終えている、優秀なアリーは、陰に日向にイディオンを支えてきたが、真実を知って、怒りに震えた。侯爵家からの離縁は難しい。 ならば、周りから、離縁を勧めてもらいましょう。日々、ちょっとずつ、仕返ししていけばいいのです。 もうすぐです。 さようなら、イディオン たくさんのお気に入りや♥ありがとうございます。感激しています。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

【完結】妹に存在を奪われた令嬢は知らない 〜彼女が刺繍に託した「たすけて」に、彼が気付いてくれていたことを〜

桜野なつみ
恋愛
存在を消された伯爵家の長女・ビオラ。声を失った彼女が、唯一想いを託せたのは針と糸だった。 白いビオラの刺繍に縫い込まれた「たすけて」の影文字。 それを見つけたのは、彼女の母の刺繍に人生を変えられた青年だった──。 言葉を失った少女と、針の声を聴く男が紡ぐ、静かな愛の物語。

彼女にも愛する人がいた

まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。 「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」 そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。 餓死だと? この王宮で?  彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。 俺の背中を嫌な汗が流れた。 では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…? そんな馬鹿な…。信じられなかった。 だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。 「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。 彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。 俺はその報告に愕然とした。

処理中です...