上 下
238 / 484

シェル王子の護衛騎士⑧

しおりを挟む
シモン騎士はメイド二人を宥めながら歩き、城内へ入る事が出来た。
本来なら既に城内に入り今夜のシェル王子の護衛の準備を部屋でしている筈なのにと、両腕をメイド二人が掴み身体を寄せてくる為歩きにくい状態のシモン騎士はシェル王子の護衛をする前から疲れていた。
「……君達二人に聞くけどメイド長に怒られ無いかな…私と一緒に居ると……」
「大丈夫ですよシモン様、怒られる事は私達は慣れていますから」
「それに私達今日はお休みを貰って居るのでメイド長何も言えないと思いますよ」
「……」
メイド二人は暑苦しい程身体を寄せシモン騎士の腕に放れようとはしないためシモン騎士は困っていた。
幸いにも外での騎士達と会う事は無かったがチラホラとメイド達が歩く姿が見えシモン騎士とメイド二人に気付いたメイド達は驚いた顔を見せシモン騎士の腕に頭を寄せているメイドの一人が「ふふふ、良いでしょう!」と態度で表しシモン騎士の腕を組んでいるメイド二人が他のメイド達に見せつけて居るように見え、メイドの中にはシモン騎士を慕い自分で行動が出来ないメイドはその様子を見て泣くメイドもいた。
メイド達の痛いような視線を浴びながらシモン騎士は、自分の意思とは違う、また噂が城内に流れてしまうと息を吐いていた。
何度も「違う誤解だ」と騎士達にメイド達に話しても信じて貰えず、毎週のように城下町へ行き姉と会う事がいつの間にかシモン騎士に女性がいると噂になり、更に他にも女性が居ると噂が噂を大きく成ってゆき、シモン騎士は誤解を解くことに疲れそのままにしておく事に成ってしまった。
「……君達そろそろ放れてくれないか?」
「ええっ!?通路まで御一緒させて下さいシモン様」
「私達がシモン様に寄って来るメイド達を追い払いますよ」
シモン騎士が放れるようにとメイドの二人に話したが放れる様子も無かった……
「……困ったな…君達が放れないとこの近辺はジル様が良く通られる場所だと聞いて、ジル様に御会いした時に何て言えば良いかな……」
「「ジル王子!?」」
バッ!とシモン騎士の腕を放したメイドの二人は苦笑いをシモン騎士に見せ辺りをキョロキョロと見渡していた。
「…どうしたんだ?君達、突然放れてジル様に何か……」
「ジル様は顔は良いのに性格が恐い人なのよ、もし御会いしたらどうしょうかと思って……」
「そうよ顔は良いのにどうして性格はあんな方なのかしら、信じらんないわ」
「……君達思っていても声に出さない方が良いと……」

「うぎやああぁぁああ~~~っ!」

「「「!?」」」
ビクッ!?とシモン騎士とメイドの二人は驚き、腕を放していたメイド二人がまたシモン騎士の腕にしがみつき、顔が何かに怯えたように松明の灯火で周りの建物に草木等を見渡し歩く足を止めていた。
「…い、今の悲鳴のような声は何処から?」
「分かんないよ~っ、何?何なの?……足が動かないよ~っ、怖い~っ!シモン様」
「……ねぇ、ねぇ、さっきの悲鳴あの窓から聞こえて来なかった?!」
一人のメイドが指先を一つの窓に向け聞いていた。
建物が並ぶ幾つもの窓の一つだけ、ベランダがあり窓の中から漏れて見えるカーテンの隙間からランプの灯火が見える部屋があった。
「君達はメイド長に連絡を何かあったのかも知れない」
シモン騎士は手に持っていたランプをメイドに持たせ、メイド達の握り締めていた手を退けるとシモン騎士は走り出しその時一人のメイドが何かを思い出し声に出し掛けていた。
「……あのお部屋は確か……」
メイドの声を聞かずシモン騎士は、外からの侵入者のようにベランダのある部屋にベランダを支える柱を登り、その姿を見つめるメイド二人は、メイド長に連絡に行くのも忘れシモン騎士の身軽さに見惚れその場から動かないでシモン騎士を見ていた。
ベランダに辿り着いたシモン騎士は、まさか自分がこんな事をするとは思わずとにかく部屋の中に入らなくてはと窓を開ける場所に手を掛けていた。
「鍵が掛かっていると外から入る事は無理だな…」
と思いながら窓を開ける場所に手を掛け動かし「カチャ」と窓の扉が開いた為シモン騎士はまさか開くとは思いもしなかったと、部屋の中に入る事に躊躇いはあったが悲鳴の事も気になり部屋の中に入る事にした。
同じ頃のウィル王子の部屋では、思わず叫んでしまい布団に潜り両手で口を押さえていたウィル王子は、また大声を出してしまったと潜っている布団の中からため息を吐き、モゾモゾと潜っていた顔を出し「はあ~っ」と大きく息を吐いた。
「シェル王子がエリック騎士が見ている目の前でキスするか?普通……最近の俺って自分でも怖いくらいにキスしてくる男達を受け入れて居るような気がするけど……」
俺は寝ている身体を腕の力を使い起こし、そして座ると「ふう」と息を吐いた。少しずつだが自分で身体を動かせるようになり自分で身体を起こせるまでにも成っていた。
俺が身体を起こし座ったと同時に、窓を開ける音が「カチャ」と聞こえ俺は音がする窓に目をやった。
キィイ…と外側から窓が開くのが見え開いた窓から風が入りカーテンが揺れる中、人らしき影が見え、俺はまるで金縛りにでも掛かったように身体が固まり、人が部屋の中に入る姿が分かり俺は目を見開き、風に揺れる金色に靡く髪の毛とスラッと高い身長に容姿がまるで王子様に見え俺は驚きの余り声も出ず綺麗な男性を見ているだけだった。




しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【完結】転生後も愛し愛される

恋愛 / 完結 24h.ポイント:56pt お気に入り:858

狡いよ、意気地なし

BL / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:8

【異世界大量転生2】囲われモブは静かに引きこもりたい

BL / 完結 24h.ポイント:986pt お気に入り:9,068

鉱夫剣を持つ 〜ツルハシ振ってたら人類最強の肉体を手に入れていた〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,002pt お気に入り:160

合法異常者【R-18G】

uni
BL / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:11

ゆるゆる王様生活〜双子の溺愛でおかしくなりそう〜

BL / 完結 24h.ポイント:71pt お気に入り:159

見せかけだけの優しさよりも。

BL / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:147

伯爵令嬢は執事に狙われている

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:449

おいてけぼりΩは巣作りしたい〜αとΩのすれ違い政略結婚〜

BL / 完結 24h.ポイント:468pt お気に入り:2,532

処理中です...