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10、フアン1世
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フランスの歴史は複雑である。とりあえず僕は重要だと思う王様の名前と出来事だけノートに書き写した。
1314年 フィリップ4世亡くなる。
1328年 カペー朝最後の王シャルル4世亡くなる。
1328年 シャルル4世の甥フィリップ6世がヴァロワ朝初代のフランス王となる。
1337年 イングランド王エドワード3世によるフランスへの挑戦状送付で長い戦争が始まる。
1350年 フィリップ6世の子ジャン2世がフランス王となる。善良王と呼ばれた。
1364年 シャルル5世がフランス王となる。賢明王と呼ばれた。
1380年 シャルル6世がフランス王となる。親愛王、または狂気王と呼ばれた。
狂気王というすごい名前の王様が出てきた!この時フランスはまだイングランドと戦争をしている。エドワード3世は母がフィリップ4世の娘だったので、カペー朝が途絶えた時に王位継承権を主張して長い戦争が始まる。
1403年 シャルル7世生まれる。
1422年 シャルル7世フランス国王となる。
1453年 フランスにおけるイングランド領の大半を取り戻して長い戦争が終わる。
1461年 シャルル7世亡くなる。勝利王と呼ばれた。
年表で書けば簡単だが、シャルル7世の人生はノートには書ききれない複雑なものであった。母は末弟の王子に関心を示さず、見かねた周りの者によって修道院に入れられた。母イザボーはシャルルは王の子でないと主張し、王位を娘カトリーヌと結婚したイングランドのヘンリー5世に渡そうとした。そんなシャルルを娘マリーの婚約者として養育したのがヨランド・ダラゴンである。実の母に見捨てられ王位継承権を奪われた王子が、義理の母となる人に救われる。そんなことがあるのだろうか?ヨランド・ダラゴンという人はアラゴン王女である。彼女の父フアン1世はどんな人なのか?
数日後の夜、僕の部屋には3人の王様がやってきた。ラミロ2世とペドロ2世、そしてもう1人は知らない王様だった。
「フェリペ、紹介しよう。彼の名前はフアン1世、1350年に生まれて1396年に亡くなっている」
1396-1350=46 1532-1396=136 シャルル7世が生まれる前に亡くなっている。
「私の名前はフアン1世、狩人王、または不真面目王と呼ばれている」
「どうして不真面目王と呼ばれているのですか?」
しまった!つい口が滑ってしまった。こんな質問は失礼に決まっている。でもフアン1世はニコニコしながら続きを話した。
「父ペドロ4世と仲が悪く対立した。芸術を愛して文化面では貢献したが、政治は妃ビオランテとその寵臣が牛耳るのにまかせ、結果として家臣らの不満が増大し、浪費により王室は財政難に陥った。1396年、狩りの最中に死去したが、財政難のため王にふさわしい棺を作ってもらうこともできず、こうして亡霊となってさまようことになった」
「フェリペ、すまぬ。フランスの歴史に詳しい者を連れて来るつもりだったが、立派な業績を残した者は亡霊にはならない」
「まったく不真面目王などという不名誉なあだ名をつけられて、アラゴン王家の祖先に恥ずかしいとは思わないのか?」
「生きている時は楽しく充実していた。大好きな芸術に囲まれ、鷹狩りに夢中になっていた。結果大変なことになっていたようだが、気が付いた時にはもう遅かった」
「ラミロ2世、我々の世代とはもう価値観が違うのですね」
「確かにそうだ。私はアラゴンを守るために残酷な粛正を行った」
「私もまた命がけで戦い、戦死した」
「この時代の王はもう命がけで戦うことはなかったのか」
「そんなことありません!この時代、フランスとイングランドは長い戦争を続けていました」
僕は思わず口を挟んだ。
「百年以上もの長い戦いが続き、フランスの国土は荒れていました。その戦いに終止符を打ったのは勝利王と呼ばれたシャルル7世です」
「ほう、フランスには立派な王がいたのだな」
「その時フランスには神の声を聞いたという乙女が現れて、国の危機を救ったそうです。それだけでなくシャルル7世にはたくさんの優秀な側近がいました。でもシャルル7世は王になる前、実の母に見捨てられ大変な苦労をしました。その時に娘の婚約者という形で不幸な王子を支えたのが、ヨランド・ダラゴンという名の女性です」
「ヨランド・ダラゴンとは、アンジュー家に嫁いだ娘ビオランテのことか?」
「そうです」
「それならば、私はこれから不真面目王と名乗るのではなく、勝利王シャルル7世が王になる前に支えたヨランド・ダラゴンの父であると名乗ればいいのだな」
「それは娘の功績であって、そなたがしたことではない。娘の自慢なら私にもある。娘のペトロニーラは1歳でアラゴン女王となった」
「娘自慢はやめてくれ。私には息子のハイメしかいなかった」
「だが、そのハイメ1世は征服王と呼ばれた」
3人の王様たちの自慢話は長々と続いた。
1314年 フィリップ4世亡くなる。
1328年 カペー朝最後の王シャルル4世亡くなる。
1328年 シャルル4世の甥フィリップ6世がヴァロワ朝初代のフランス王となる。
1337年 イングランド王エドワード3世によるフランスへの挑戦状送付で長い戦争が始まる。
1350年 フィリップ6世の子ジャン2世がフランス王となる。善良王と呼ばれた。
1364年 シャルル5世がフランス王となる。賢明王と呼ばれた。
1380年 シャルル6世がフランス王となる。親愛王、または狂気王と呼ばれた。
狂気王というすごい名前の王様が出てきた!この時フランスはまだイングランドと戦争をしている。エドワード3世は母がフィリップ4世の娘だったので、カペー朝が途絶えた時に王位継承権を主張して長い戦争が始まる。
1403年 シャルル7世生まれる。
1422年 シャルル7世フランス国王となる。
1453年 フランスにおけるイングランド領の大半を取り戻して長い戦争が終わる。
1461年 シャルル7世亡くなる。勝利王と呼ばれた。
年表で書けば簡単だが、シャルル7世の人生はノートには書ききれない複雑なものであった。母は末弟の王子に関心を示さず、見かねた周りの者によって修道院に入れられた。母イザボーはシャルルは王の子でないと主張し、王位を娘カトリーヌと結婚したイングランドのヘンリー5世に渡そうとした。そんなシャルルを娘マリーの婚約者として養育したのがヨランド・ダラゴンである。実の母に見捨てられ王位継承権を奪われた王子が、義理の母となる人に救われる。そんなことがあるのだろうか?ヨランド・ダラゴンという人はアラゴン王女である。彼女の父フアン1世はどんな人なのか?
数日後の夜、僕の部屋には3人の王様がやってきた。ラミロ2世とペドロ2世、そしてもう1人は知らない王様だった。
「フェリペ、紹介しよう。彼の名前はフアン1世、1350年に生まれて1396年に亡くなっている」
1396-1350=46 1532-1396=136 シャルル7世が生まれる前に亡くなっている。
「私の名前はフアン1世、狩人王、または不真面目王と呼ばれている」
「どうして不真面目王と呼ばれているのですか?」
しまった!つい口が滑ってしまった。こんな質問は失礼に決まっている。でもフアン1世はニコニコしながら続きを話した。
「父ペドロ4世と仲が悪く対立した。芸術を愛して文化面では貢献したが、政治は妃ビオランテとその寵臣が牛耳るのにまかせ、結果として家臣らの不満が増大し、浪費により王室は財政難に陥った。1396年、狩りの最中に死去したが、財政難のため王にふさわしい棺を作ってもらうこともできず、こうして亡霊となってさまようことになった」
「フェリペ、すまぬ。フランスの歴史に詳しい者を連れて来るつもりだったが、立派な業績を残した者は亡霊にはならない」
「まったく不真面目王などという不名誉なあだ名をつけられて、アラゴン王家の祖先に恥ずかしいとは思わないのか?」
「生きている時は楽しく充実していた。大好きな芸術に囲まれ、鷹狩りに夢中になっていた。結果大変なことになっていたようだが、気が付いた時にはもう遅かった」
「ラミロ2世、我々の世代とはもう価値観が違うのですね」
「確かにそうだ。私はアラゴンを守るために残酷な粛正を行った」
「私もまた命がけで戦い、戦死した」
「この時代の王はもう命がけで戦うことはなかったのか」
「そんなことありません!この時代、フランスとイングランドは長い戦争を続けていました」
僕は思わず口を挟んだ。
「百年以上もの長い戦いが続き、フランスの国土は荒れていました。その戦いに終止符を打ったのは勝利王と呼ばれたシャルル7世です」
「ほう、フランスには立派な王がいたのだな」
「その時フランスには神の声を聞いたという乙女が現れて、国の危機を救ったそうです。それだけでなくシャルル7世にはたくさんの優秀な側近がいました。でもシャルル7世は王になる前、実の母に見捨てられ大変な苦労をしました。その時に娘の婚約者という形で不幸な王子を支えたのが、ヨランド・ダラゴンという名の女性です」
「ヨランド・ダラゴンとは、アンジュー家に嫁いだ娘ビオランテのことか?」
「そうです」
「それならば、私はこれから不真面目王と名乗るのではなく、勝利王シャルル7世が王になる前に支えたヨランド・ダラゴンの父であると名乗ればいいのだな」
「それは娘の功績であって、そなたがしたことではない。娘の自慢なら私にもある。娘のペトロニーラは1歳でアラゴン女王となった」
「娘自慢はやめてくれ。私には息子のハイメしかいなかった」
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