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16、マンフレーディとシチリアの晩鐘
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ハインリヒ7世と一緒に彼の異母弟コンラート4世とエンツォの2人に会いに行った。次はマンフレーディに会いに行くと思われる。僕は体調不良を理由に畑仕事をさぼって部屋にこもることにした。続けて2日出かけてフラフラしていたから嘘はついていない。でもベッドで寝るわけにはいかない。ハインリヒ7世はせっかちであるから、また今日の夜もやってくるかもしれない。分厚いラテン語の本のページをめくって、マンフレーディについて調べ、ノートに書き写した。
1232年 マンフレーディ生まれる(庶子)
1254年 異母兄コンラートが亡くなり、コッラディーノが幼いためシチリアの摂政となる。
1258年 コッラディーノが死んだと言う誤報を受け、シチリア王位を継ぐ。
1266年 ローマ教皇クレメンス4世の要請でフランス王ルイ9世の弟シャルル・ダンジューがイタリアに侵攻し、マンフレーディはベネヴェントの戦いで戦死する。
マンフレーディに関する記述はこれだけだった。何かもっと他にないだろうか。
1249年 娘のコンスタンサ生まれる。
1262年 アラゴン王ペドロ3世と結婚する。
1282年3月30日 シチリアの晩鐘事件。
1282年8月 アラゴン王国のペドロ3世がシチリアに上陸する。
そして夜、ハインリヒ7世が派手な吟遊詩人の衣装を身に付けて僕の部屋にやってきた。
「今夜はマンフレーディに会いに行く」
「そう思って昼間少し調べておいた」
「なかなか気が利くではないか。そなたも余の助手として成長したようだ」
モンソン城に行った時、ハインリヒ7世は仮面を付けていて目が見えないから僕が手を引いて歩いた。歩きながら僕は昔父さんから聞いた生まれ変わりの秘密や亡霊について話した。僕の父さんはユダヤ人の中でも特別な教えを受け継ぎ、魔術の本も持っていた。話に感激したハインリヒ7世はあの時キリスト教徒であることをやめ、僕と父さんの弟子になるとまで言った。でも彼は目が見え、自由に動けるようになってから、僕をこき使うようになった。あの時のことなどもう忘れているに違いない。
「シチリアの晩鐘事件とはなんだ?」
「アンジュー家の兵士がシチリアの女性に暴行して、住民が怒って暴動をおこし、4000人くらいのフランス人が殺された。そこにマンフレーディの娘と結婚したペドロ3世がやってきて・・・」
「一緒にモンソンに行ったアラゴンの王か?」
「あの時いたのはペドロ2世、今回はペドロ3世だよ」
「アラゴンの王は同じ名前ばかりでややっこしい。さあ、いくぞ」
目を開けると華やかな王宮の中にいた。ここはシチリアに違いない。大広間にはたくさんの人が集まっていた。そして華やかな衣装を着た人がリュートを弾いていた。
「あれが余の異母弟マンフレーディだ」
「かなりうまいよ。この人たちの中で吟遊詩人と言うのは恥ずかしい」
「我々の姿は狙った相手にしか見えない。それにそなたは見習いだから、歌わなくてよい」
やがて演奏は終わり、他の人はみんな大広間を出て行った。
「そこの2人はパーティー会場に行かなくてよいのか?」
「マンフレーディ様とお話がしたくて残りました。私は吟遊詩人のハインリヒ、これは見習いのフェリペです」
「私の1番上の兄もハインリヒという名前であった。もうかなり前に亡くなったが・・・父上が亡くなって、ホーエンシュタウフェン家が滅ぶのも遠くないであろう。父上は教皇と対立したのだから・・・」
「・・・・・」
「我らが滅びた後、シチリアを支配するのはアンジュー家になるのだろうか。私は今こうやって華やかな宴を開いているが、これも最後の悪あがきになるかもしれない」
「マンフレーディ様、あなたのようなリュートの名手の前で演奏するのは恥ずかしいのですが、私の歌を聞いていただけますか。実際の事件ではなく、私の創作です」
「それはおもしろい、歌ってみるがいい」
美しいシチリアはアンジュー家が支配することとなった
日の光はまぶしいままだが、もう人々は歌わなくなった
アンジュー家の圧政の中で、もう人々は笑わなくなった
シチリアの夕べ、晩鐘が響き渡る中、その事件は起きた
アンジュー家の乱暴な兵が、清らかな乙女を手にかけた
人々は怒りに燃え、アンジュー家への復讐を固く誓った
シチリアは戦乱の炎で燃え上がり、多くの血が流された
たくさんの血が流れたシチリアに、1人の救世主が来た
その勇者はアラゴンの王、昔のシチリア王の娘婿である
アラゴン王の力で、シチリアに再び平和が取り戻された
シチリアの人々は光の中で、再び笑い、歌を取り戻した
「なかなか面白い歌だった。そなたの創作なのか」
「はい、私が今即興で作った歌です」
「いつの日か、この歌は多くの者に歌われるであろう。その時に私はいないが・・・兄上」
「・・・・・」
「会いに来てくれたのですね。私に未来を伝えるために・・・」
1232年 マンフレーディ生まれる(庶子)
1254年 異母兄コンラートが亡くなり、コッラディーノが幼いためシチリアの摂政となる。
1258年 コッラディーノが死んだと言う誤報を受け、シチリア王位を継ぐ。
1266年 ローマ教皇クレメンス4世の要請でフランス王ルイ9世の弟シャルル・ダンジューがイタリアに侵攻し、マンフレーディはベネヴェントの戦いで戦死する。
マンフレーディに関する記述はこれだけだった。何かもっと他にないだろうか。
1249年 娘のコンスタンサ生まれる。
1262年 アラゴン王ペドロ3世と結婚する。
1282年3月30日 シチリアの晩鐘事件。
1282年8月 アラゴン王国のペドロ3世がシチリアに上陸する。
そして夜、ハインリヒ7世が派手な吟遊詩人の衣装を身に付けて僕の部屋にやってきた。
「今夜はマンフレーディに会いに行く」
「そう思って昼間少し調べておいた」
「なかなか気が利くではないか。そなたも余の助手として成長したようだ」
モンソン城に行った時、ハインリヒ7世は仮面を付けていて目が見えないから僕が手を引いて歩いた。歩きながら僕は昔父さんから聞いた生まれ変わりの秘密や亡霊について話した。僕の父さんはユダヤ人の中でも特別な教えを受け継ぎ、魔術の本も持っていた。話に感激したハインリヒ7世はあの時キリスト教徒であることをやめ、僕と父さんの弟子になるとまで言った。でも彼は目が見え、自由に動けるようになってから、僕をこき使うようになった。あの時のことなどもう忘れているに違いない。
「シチリアの晩鐘事件とはなんだ?」
「アンジュー家の兵士がシチリアの女性に暴行して、住民が怒って暴動をおこし、4000人くらいのフランス人が殺された。そこにマンフレーディの娘と結婚したペドロ3世がやってきて・・・」
「一緒にモンソンに行ったアラゴンの王か?」
「あの時いたのはペドロ2世、今回はペドロ3世だよ」
「アラゴンの王は同じ名前ばかりでややっこしい。さあ、いくぞ」
目を開けると華やかな王宮の中にいた。ここはシチリアに違いない。大広間にはたくさんの人が集まっていた。そして華やかな衣装を着た人がリュートを弾いていた。
「あれが余の異母弟マンフレーディだ」
「かなりうまいよ。この人たちの中で吟遊詩人と言うのは恥ずかしい」
「我々の姿は狙った相手にしか見えない。それにそなたは見習いだから、歌わなくてよい」
やがて演奏は終わり、他の人はみんな大広間を出て行った。
「そこの2人はパーティー会場に行かなくてよいのか?」
「マンフレーディ様とお話がしたくて残りました。私は吟遊詩人のハインリヒ、これは見習いのフェリペです」
「私の1番上の兄もハインリヒという名前であった。もうかなり前に亡くなったが・・・父上が亡くなって、ホーエンシュタウフェン家が滅ぶのも遠くないであろう。父上は教皇と対立したのだから・・・」
「・・・・・」
「我らが滅びた後、シチリアを支配するのはアンジュー家になるのだろうか。私は今こうやって華やかな宴を開いているが、これも最後の悪あがきになるかもしれない」
「マンフレーディ様、あなたのようなリュートの名手の前で演奏するのは恥ずかしいのですが、私の歌を聞いていただけますか。実際の事件ではなく、私の創作です」
「それはおもしろい、歌ってみるがいい」
美しいシチリアはアンジュー家が支配することとなった
日の光はまぶしいままだが、もう人々は歌わなくなった
アンジュー家の圧政の中で、もう人々は笑わなくなった
シチリアの夕べ、晩鐘が響き渡る中、その事件は起きた
アンジュー家の乱暴な兵が、清らかな乙女を手にかけた
人々は怒りに燃え、アンジュー家への復讐を固く誓った
シチリアは戦乱の炎で燃え上がり、多くの血が流された
たくさんの血が流れたシチリアに、1人の救世主が来た
その勇者はアラゴンの王、昔のシチリア王の娘婿である
アラゴン王の力で、シチリアに再び平和が取り戻された
シチリアの人々は光の中で、再び笑い、歌を取り戻した
「なかなか面白い歌だった。そなたの創作なのか」
「はい、私が今即興で作った歌です」
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