最強テイマーの姉が行方不明になりました〜最弱テイマーの僕が必ず見つけます〜

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第一章 地上編

第六話 再出発

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 牢へと戻ったラルドとエメは、もめていた。

「せっかくこの牢とおさらばできると思ったのに、なんであんなあっさり諦めるんだよ」
「だからと言って、父さんが折れるとも思えないだろう? きっとキャイが言ってた外に出られるチャンスは、別の出来事なんだろう。それまで大人しく待つよ」
「今すぐキャイを呼んで確認をとったらどうだ?」
「そうだな。呼んでみよう」

 ラルドはキャイを召喚した。キャイはラルドの方を見る。

「おや? まだ牢の中にいたのかい?」
「なあキャイ、外に出るチャンスって一体何なのか教えてくれないか?」
「うーん、もう少し待つべきかもしれないね。こないだのBランク冒険者は来たかい?」
「ちょっと前に来た。勝負したよ」
「あら、それなら一回出られたんじゃないかしら?」
「ああ。勝負のときに外に出た。勝負が終わった後、色々あって今ここにいるんだ」
「やはりあなたの父親に止められてしまったのね」
「なぜそれを……?」
「頑固そうだもの。あなたも、あなたの父親も。でも安心しなさい。そう遠くないうち……今日には完全に外に出ることができるわ」
「そうなのか? 一体この後僕たちがどうなるか教えてくれないか」
「まあ、楽しみに待っていなさい。少し時間がかかるから」
「やっぱりまた何か起きるってことだな」
「ええそうよ。じゃ、私はこれで。じゃあね」

 キャイはレイフの家へと戻っていった。

「今日はまだ何か起きるのか。そのときこそは外に出られると良いな」
「あの父さんが許すほど大きな出来事なのか。やっぱりカタラたちが死んじゃうんじゃ……」
「まさか。もっと違うのだろ、きっと」
「まあ今は待つしかない。カバン持ってきたから、魔王スゴロクでもやって暇を潰すか」
「俺は前ここまで進んだんだ。今回こそは魔王を倒すところまでいくぞ」

 二人は魔王スゴロクを始めた。
 夕方頃、魔王スゴロクを終えた二人の元へ何者かが歩いてくる。

「誰か来るな。きっとキャイが言ってた人だな」
「ちっ、二周目は無理か……もう少し遊びたかったんだが」
「それより外に出られる方が大事だろ。さあ、片付けよう」

 魔王スゴロクを片付け終えたとき、牢の前に人が立った。立った人は、レイフだった。

「やあラルド君、エメ君。調子はどうかな?」
「レイフ様! なぜわざわざこんなところまで?」
「いっぱい話さなくちゃいけないことがあってな。相変わらずサフィアのことは何も話せないが」
「話って、なんですか?」
「この前君を捕らえたサフィア捜索隊ってのがいただろ? 彼らがピンチになってるって、ホーネが言っていたのだ。しばらくしてホーネたちが帰ってきたとき、生き残ってたのは二人だけだった。すまないな、俺がいれば死人など出なかったろうに、奴らと喧嘩しちまって手伝うに手伝えなかった」
「いえ、二人帰ってきただけでも奇跡ですよ。ホーネさんたちがいなかったら、全滅も考えられたでしょう。僕はやっぱり必要なかったみたいですね」
「そんなことはない。君たちにはこれから活躍してもらうことになるから」
「え? どういうことですか?」

 ラルドは首をかしげる。

「サフィア捜索隊は本日をもって解散。サフィアを除いた魔王討伐隊の三人でサフィアを探すことになった。君たちにはその討伐隊の一員になって欲しいのだ」
「なんだと! 俺たち、ようやくサフィアさんを探しにいけるのか?」
「ああ。ラルド君の父親にも許可はとったよ。中々折れてくれなかったけどね。後は君たちが行きたいか行きたくないかだ。どうする?」
「ラルド、行かないなんて選択肢は無いよな?」
「もちろん、僕たちは魔王討伐隊の一員になります」
「今は魔王討伐隊じゃなくてサフィア捜索会に名前が変わったんだ。ようこそ、サフィア捜索会へ。今鍵を開けてやるからな」

 レイフが牢の鍵を開ける。ようやく、ようやく本当に外に出られるようだ。あまりの嬉しさにエメは大興奮していた。

「やった、やった! 外だぞ外。ラルドも喜べよ」
「エメ、遊びにいくわけじゃないぞ。姉さんを見つけるために外に出るんだからな」
「んなことはわかってるさ」
「さあ二人とも、他のサフィア捜索会のメンバーを迎えにいこう」
 牢の外へと出たラルドとエメは、レイフの後ろをついていった。
 ラルドたちが村から出る前に、ルビーとトパーが話しかけてきた。

「レイフ殿、どうしてもラルドを連れていかなきゃダメなのですか?」
「さっきも見せましたでしょう、国王陛下直々に決めたサフィア捜索会のメンバー表。その中にラルド君が入ってるんですよ」
「もし私のラルドが死んだら、あなたがたは責任がとれるんですか……!」
「責任などとりません。だって、死なせませんから」
「父さん、母さん。僕、どうしても自らの手で姉さんを見つけたいんだ。一人最弱の息子を冒険に出させるのがつらい気持ちはわかるけど、どうしても見つけたいんだ」
「だからもう最弱とか気にしないって言ったじゃないか。それこそ、サフィアの捜索は魔王討伐隊だった三人に任せれば良いじゃないか。なんでうちのラルドが選ばれるんだ」
「陛下いわく『サフィアの弟だから実は強いに違いない』ってことらしいです。もうよろしいでしょうか」
「……ラルド。カタラたちが死んだら俺のせいだって言ってたよな?」
「うん。それがどうかしたの?」
「もしもお前が死んだら、サフィア捜索会の三人を処刑するからな」
「そんな物騒な……」
「それくらいの覚悟は当然持てるよな?」
「うん、持てるよ。じゃあ、今度は姉さんと一緒に帰ってくるからね。さようなら、父さん、母さん」
「ラルド、気をつけていくのよ。何か嫌なことがあったらすぐに戻ってくるのよ」
「じゃあ、ラルド君、エメ君、行こうか」

 レイフはラルドとエメを連れてツカイ村から出ていった。
 王国に向かう旅路、三人は話し合っていた。

「レイフ様、王様から直々に指名がされたって本当なんですか?」
「本当さ。なんなら陛下に会って確認させてやろうかい?」
「いえ、大丈夫です。でも、最弱が浸透してる僕をよく姉さん捜索会の一員に選びましたね」
「……ここだけの話にしてくれるかい?」
「何でしょう?」
「実は俺が君を推薦したんだ。俺の権限でな」
「そうだったんですね。わざわざありがとうございます」
「良いってことよ。さあ、もうすぐで王国だ。俺の家に既に他の奴らも集まってるはずだ」

 三人は王国の門の前にたどり着いた。既に日が落ちかけていた。レイフが門番に話しかける。

「レイフだ。門を開けてくれ」
「後ろの子たちは、ラルドたちじゃないですか? うちに入れるわけにはいきませんよ」
「陛下が選ばれた者だ。お前たちに拒否権などない」

 レイフは国王からもらった紙を見せた。門番は一気に汗をかく。

「そ、そうでしたか。失礼いたしました。さあ、中へどうぞ」

 門番が門を開ける。三人は王国の中へ入っていった。

「さて、俺の家に行こうか」
「はい!」
(ラルドのやつ、やたらと元気いっぱいだな)

 三人はレイフの家へ向かおうとした。しかし、道中で道をふさぐ者たちがいた。

「レイフさん、ここは通しませんよ」
「カタラ、ザメ! お前たちが生き残りか」
「君たちは、サフィア捜索隊だった子たちだね? 病院で黙って治療を受けてたらどうだ?」
「嫌です。俺たちもサフィア捜索会に入れてください。サフィア様を見つけたいんです」
(ちっ、めんどくさいな)
「めんどくさいのは私たちもわかってます。それでも、どうかお願いします……」
「あ、ああ。検討しておくからとりあえず今はどいてくれ」
「本当ですか! ありがとうございます!」
「さあ、そこをどいてくれ」
「おいラルド、お前とゴブリンの代わりに俺たちがサフィア捜索会に入るんだ。クビを覚悟してろよ?」
「はあ……」

 カタラとザメが道を開けると、三人はレイフの家へ歩き始めた。
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