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第二章 空中編

第二十二話 スカイ王国国王主催トーナメント予選

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 カラン……ジシャンの家のポストに、何かが投函される音がした。

「うー……王様からかな」

 ジシャンは目をこすりながら、ポストを確認しにいく。そこにはやはり、スカイ王からの手紙が入っていた。

「足りなかった四人の枠も埋まったのかしら。とにかくみんなに知らせなくちゃ」

「ラルド君、起きて」

 ジシャンはラルドの身体をゆする。ラルドの目が少しずつ開いていき、最終的にはぱっちりと開いた。

「ジシャン様、おはようございます。それはなんですか」
「これ? 王様からの手紙よ。無事予定通り今日から予選が始まるみたい。上の二人も起こして、早く向かいましょ」
「そうですね。僕は先に外で待ってますから、追ってきてください」
「わかったわ。具体的にどの辺で待ってる?」
「あの大きな岩のあるところで待ってます」
「あそこね。オッケー。じゃあ、私は二人を起こしにいってくるわね。いってらっしゃい」

 二人はわかれた。ラルドは大きな岩のある場所に着き、ニキスを呼び出していた。

「あの三人はどこだ」
「すぐに来るから待ってて。ほら、来たよ」
「ラルドくーん!」
「揃ったな。さあ、私の背中に乗りなさい」

 一行はニキスの背中に乗った。それを確認したニキスは、空へ飛んでいった。
 門の前にニキスは着地し、乗っていた一行は背中から降りた。

「コクリュウさん、地上人なんか連れてどうしたんですか」
「ほう、今日は門番がいるのか。珍しいな」
「なんせトーナメント当日ですからね。部外者の侵入はことごとく許せませんから」
「そのトーナメントに出るのが、彼らだ」
「そうですか。前のトーナメントにも地上人の女はいましたが、今回も地上人が出るとは……」
「特にあの小さい奴、お前たちの度肝を抜いてやろうとしてるぜ」
「前の地上人も圧倒的強さでしたが、今回も地上人が圧倒すると?」
「私も戦うから、圧倒するのは間違いないさ」
「コクリュウさんが出るって……もしかして、テイマーに捕まってしまったのですか」
「ああ。あの小さい奴にやられちまった」
「とりあえず、参加権の証明をお願いします。王からもらった紙はありますか?」
「おーいラルド。あの紙を出すんだ」

 ラルドは駆け寄り、王からもらった紙と手紙を出す。それを注意深く見た門番は、首を縦に振った。

「うん、確かに王から認められてるようですね。では、闘技場で待っていてください」

 門番が門を開け、その下を一行は通っていった。
 闘技場に着くと、周りは人だらけだった。入り口から溢れるほど行列が出来ている。

「ちっ、もっと早くこれば良かったな。こんなにいるとは予想外だった」
「あら、コクリュウさん。地上人と一緒にトーナメントに参加されるのですか」
「ああ。参加者だから、列を無視して受付に行きたいんだが」
「それでしたら、こっち側の列が参加者の列ですよ」
「ありがとう。危うく並ぶ列を間違えるところだった」

 長蛇の列とは別に、短めの列があった。そこにラルドたちは並んだ。どんどん列が短くなっていき、ついにラルドたちは受付にたどり着いた。

「コクリュウさん、やはり地上人にテイムされてしまったのですね……」
「バカにしたけりゃバカにしろ。ほら、参加権の紙だ」
「チーム名はお決まりですか?」
「チーム名か……ラルド、どうする?」
「普通にサフィア捜索会で良いと思う」
「んじゃ、サフィア捜索会で」
「はい、わかりました。予選は地下で行われます。地下までの道は上の案内を見ながら向かってください」
「わかった。みんな、行くぞ」

 一行は案内に従い闘技場の地下に着いた。様々な者たちが、リングの上で戦っている。

「お、コクリュウよ、来たか。これで二ブロックも全員揃ったな」
「王、予選は何回あるんだ?」
「一ブロックにつき八チームあるから、三回だな。一応これを渡しておこう。予選の対戦表だ」

 ニキスは王から紙をもらった。その紙を一行に見せる。

「最初に戦うのは、天空四天王……? 大層なチーム名だな」
「これより、二ブロックの予選を開始する! まずはサフィア捜索会対天空四天王だ!」

 対戦表を見ていた一行は王の声を聞き、紙をしまってリングに上がった。

「ふはは! 初戦の相手が地上人だとは、ボーナスタイムだな」
「ルールは単純、全員倒れて十秒以内に起き上がれなければ負けだ。さあ、戦い始めるが良い」

 試合開始を告げる音が響くと同時に、天空四天王は突進してきた。

「先手必勝!」
「ふん。それが攻撃のつもりか?」

 竜の姿に戻ったニキスに攻撃を阻まれ、天空四天王は怯む。

「こ、コクリュウさん!? なぜ地上人なんかの味方をしてるのですか!」
「すうぅー……はあ!」

 天空四天王はニキスの放った炎のブレスによって丸焦げになった。

「ちくしょう、地上人め、汚い手を使いやがって……でも、コクリュウさんを避けて攻撃を当てるまでよ」

 天空四天王はニキスを避け、一行に攻撃した。しかし、全員剣が身体に触れる前に何かによって遮られてしまった。

「な、剣が手前で止まってしまった……」
「みんな、反撃のチャンスよ!」

 男たちは剣で、ジシャンは呪文で反撃した。反撃された天空四天王は、あまりの痛みに後ろへ移動した。

「くっ……俺たちに傷をつけるとは、やるじゃないか。だが、剣が効かないならば、呪文で攻撃するまでよ」
「えっ? リーダー、俺たち、呪文なんか使えませんよ」
「一つ方法があるだろう? 合体さ。所詮は地上人、合体した俺たちには勝てない」
「その奥義を使うのは最後までとっておいた方が良くないですか?」
「コクリュウさんが相手にいるんだ。いくら地上人と言えど油断ならん。さあ、合体するぞ」
「は、はあ……」

 天空四天王は合体を始める。それを阻止しようとラルドは火の呪文を放った。

「ぐわあ! ち、地上人、合体中は攻撃しちゃいけない決まりを知らないのか?」
「黙って合体するところを見てろって言うのか。お断りだ」

 ラルドは火の呪文を何度も放つ。その度に天空四天王は何度も合体しようとする。痺れを切らしたのか、天空四天王は合体することを諦め、直接攻撃をもう一度試みた。

「俺たちの合体を邪魔しやがって、許さんぞ」

 ラルドを囲んだ天空四天王は、四方から攻撃する。しかし、どの攻撃もラルドには届かなかった。

「地上人、貴様、何をしたんだ……?」
(ジシャン様の防御呪文、すごいや。こんなに強力な一撃も受け止めるなんて)
「ラルド! 離れろ!」

 ニキスの声を聞いて、ラルドは急いでその場を離れた。ニキスは、チャージが完了した炎のブレスを放った。一瞬で出す炎よりも遥かに強いブレスだ。今度は丸焦げ程度では済まないであろう。

「し、しまった……」

 ブレスをモロに食らった天空四天王は、翼が焼き切れてしまった。翼を失うと同時に膝から崩れ落ち、動かなくなった。

「十、九、八……」

 負けを決めるカウントダウンが始まった。

「ニキス、どういうことだ? 翼を失った瞬間、動かなくなっちゃったじゃないか」
「翼を持つ者たちは、それが誇りなのだ。それを失ってしまえば、精神に異常をきたしてしまい、動けなくなってしまう」
「なんだか可哀想だ……」
「仕方あるまい。これは遊びじゃないからな」
「三、二、一……終了! 勝者、サフィア捜索会!」

 翼を失い動けなくなった天空四天王は、急いで病院へ運ばれていった。

「ニキス、翼は復活するのか?」
「翼が残ってたらくっつけるだけで良いが、私が焼き切ってしまったからな。あいつらの生存は絶望的であろう」
「これをあと何回もやるなんて、気が滅入るな……」
「スカイ人の度肝を抜くんだろ? なんとか我慢して頑張ってくれ」
「サフィア捜索会、リングから降りたまえ。次の試合が始まるぞ」

 一行はリングから降りた。
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