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第二章 空中編
第二十七話 スカイ王国国王主催トーナメント 三
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「はぁ……俺は白旗を用意しておくぞ。さっさと降参だ」
「何を言ってるんだ。こんな物、燃やしてやる」
ラルドはエメが握っていた白旗を焼き尽くした。エメは唖然とする。
「あぁぁ、なんてことを……お前、あの化け物に本気で勝とうとしてるのかよ」
「もちろん。そうじゃなきゃ、姉さんのところにも行けないからな」
「エメ君、怖いなら隠れていなさい。俺たちでどうにかするから」
「い、いや、俺も戦います」
「そうか。じゃあ、頑張ろうな」
一行が話していると、アナウンスが聞こえた。
「今から扉を開く。両者とも、同時に入ってきたまえ」
扉が開くと同時に、サフィア捜索会とコトリーは闘技場に出てきた。コトリーは相変わらず目と背中から血を垂らしている。
「へへへ。今度の相手は地上人か。潰すときの感覚が楽しみだぁ」
(奴は目が潰れているのに相手を認識している……一体どんな方法を使っているんだろう)
ラルドはコトリーを注意深く眺める。
「さあさあ、試合を始めるぞ。三、二、一……始め!」
「おらぁ!」
一行に振り下ろされた手を、全員避けた。その部分はひび割れ、へこんだ。
「みんな、あいつの弱点をなんとか見つけるんだ!」
「弱点なんかないよぉー。俺はもう無敵なんだよ。ふひひひ」
ジシャンの風の呪文で浮かぶ一行は、手当たり次第に弱点を探す。腕、脚、胴体、顔。そこら中に弱点を探したが、これといって見つからなかった。行き当たりばったりで剣を振るが、どこに振っても弾かれてしまう。呪文も当然のようにかき消す。
「無駄だよ。俺の勝ちはもう決まってるんだ。諦めて潰されちゃえよ」
コトリーは腕を振り回す。適当に振っているのではなく、確実に一行を狙いにいっている。
(やっぱりおかしい。なんで僕たちの場所を把握できるんだ?)
ラルドは攻撃を避けながら考える。しかし、考えるのに夢中で最後の一撃を避けられなかった。
「うわぁ!」
「ふはは! 小僧、まずはお前から潰してやろう」
大きな音をたてつつラルドに近づくコトリー。その間に、ニキスが入り込む。
「んー? コクリュウじゃないか。俺の攻撃を受け切れるのか?」
「お茶の子さいさいだ」
「ほう、言うじゃねぇか。じゃあ、試してみるしかないなぁ!」
「ラルド、こいつの弱点、私にはわかった気がする」
「ほ、本当か!?」
「今の俺に弱点? はて、なんのことか」
「教えるためには一旦こいつを動けなくする必要がある。何か手はないか?」
「……一つだけある!」
「わかった。じゃあ、それを頼む」
ラルドは風の呪文を解除し、ジシャンのいる方へ向かう。その間、ニキスはコトリーの攻撃を必死に防ぐ。
「ジシャン様! 僕たちの風の呪文を重ねて、あいつを止めましょう!」
「私とあなたとレイフと。それだけで足りるかしら……」
「今はそれしか方法がありません。やりましょう!」
「……わかったわ。今すぐ風の呪文を解除して、レイフと一緒に放ってみるわ」
ジシャンが風の呪文を解除すると、ゆっくりと一行は落下する。ジシャンは急いでレイフを呼び、三人が揃った。一緒に風の呪文を唱え、コトリーに向けて放つ。ニキスは急いで離れた。
「うぉぉ、すごい風だ。でも、俺を止めるには少し足りないみたいだなぁ!」
コトリーはこちらに向かって走ってくる。少しづつだが、確実に近づいている。
「な、これでもダメなんて……」
恐怖でジシャンの身体が震える。そうすると、後ろから手が伸びた。手の主は、ウォリアだった。
「俺も加勢しよう。多少は使えるはずだ」
「私も。風のブレスで手伝おう」
「う、なんて風の強さだ……」
ウォリアとニキスの加勢により、コトリーは前に進めなくなった。ニキスはブレスを吐くのをやめ、コトリーの弱点として一つの説を提唱する。
「私が思う奴の弱点は、第三の目だ」
「第三の目? そんなのついてないじゃないか」
「いいや、物理的な目ではない。心眼だ。奴の心の中にまだ目があるのだ。その目を破壊すれば、倒せると思うのだ」
「でも、心眼なんてどうやって破壊するんだよ。心の中に入り込むなんて、人間の出来ることじゃないぞ」
「人間ならばな。私に任せなさい。心を剥ぎとってみせよう」
ニキスは風で動きの止まったコトリーに近づいた。胸部を掴み、思い切り引っ張る。
「どういうつもりだ、コクリュウ。どんなに引っ張ったって、俺は死なないぞ」
「その割には顔を流れる汗がすごいな。やはりここに何か隠してるんだろう?」
「ふざけやがって。これでも食らえ!」
コトリーはニキスに殴りかかる。ニキスはそれを華麗に避け、代わりに引っ張って薄くなっている胸部を裂かせた。
「あっ! しまった……」
「ふふーん。やはりあったな。これが心眼か。血走ってて不気味だ。さて、これを握り潰してやろう」
「まっ、待ってくれ! 降参だ、降参! だから、それを返してくれ!」
ニキスはそう言われると、少し停止した。コトリーは白旗を上げている。
「……良かろう。王、この試合、私たちの勝ちで良いよな」
「そうだな。勝者、サフィア捜索会!」
風の呪文をずっと放っていた四人は、疲れでその場に座り込む。ニキスは一行に駆け寄る。
「お前たちのおかげだ。ありがとうな」
「いや、先に弱点を見つけた君を褒め称えるよ、俺は。ありがとう」
「へ、へへ。褒められると嬉しくなってしまうな」
一行が団欒していると、心眼を返してもらったコトリーが忍び寄る。
「もらったぁ!」
「む!」
ニキスは急いで振り返り、振り下ろされた拳を受け止めた。
「なんの真似だ、コトリー。試合はもう終わっているぞ」
「試合だぁ? そんなこと関係ねぇ! 俺は今お前を殺すことだけを考えてるんだ!」
「……戦士の風上にも置けない奴だ。王! これをどう思う!」
観客たちが無言で見つめる中、王は判断を下した。
「……そのデカブツに戦士としての誇りなし。このわしが殺してしんぜよう」
王は席から飛び降り、コトリーが片手に握っていた心眼を槍で突き刺した。あまりの痛みに、コトリーは仰向けになり暴れ回る。
「ぎゃああ! すびばせんでした! もうごんな前は二度としませんがらぁ、命だけは、いのぢだけはぁ!」
王はその言葉を無視し、心眼を突き続ける。次第に暴れなくなっていき、ついには息を引き取った。
「……愚か者めが。さあ、次の試合のために、こいつをさっさと燃やしてしまうぞ。コクリュウよ、すまなかった」
「しょうがない。私以外の誰かが襲われなかったのは不幸中の幸いだ」
「本当に申し訳ない。ルール表に試合後は争ってはいけないということを書かなければならなかったな」
王はジャンプし、元の場所へ戻った。ニキス以外の一行もその後、観戦席に向かった。
「モゴロよ、この空気はどうにかならんのか」
「つ、次の試合はきっと盛り上がるはずです。だから今はこの空気に耐えていてください」
「はぁ……わしが止めに入るべきじゃなかったな。すっかり空気が冷えておる」
「仕方ないですよ。あの状況、他の人にはどうにも出来なかった場面ですから」
「王様! コトリーの遺体を焼き尽くしました!」
「うむ。それでは、次の試合を始めるアナウンスを流そう」
王は魔導機に口を近づけると、アナウンスをした。
「あー、あー。これより第六試合を始める。両者とも、扉の前に待機したまえ」
「うーんと次の試合は……カワネギ対サフィア捜索隊か」
「カワネギはどんなチームでした?」
「火の呪文を上手く操る魔法使いチームって感じだったな」
「火の呪文はウルフに庇わせれば良いから、カタラたちが勝ちそうですね……はぁ」
「まあ、俺たちがついてればどうにかなるさ。どっちが勝ったって俺たちの勝利は確実だ」
そんな話をしていると、闘技場の扉が開かれた。
「さぁー第六試合、カワネギ対サフィア捜索隊! 果たしてどちらが勝つのでしょうか!」
「三、二、一……始め!」
試合開始が告げられた。
「何を言ってるんだ。こんな物、燃やしてやる」
ラルドはエメが握っていた白旗を焼き尽くした。エメは唖然とする。
「あぁぁ、なんてことを……お前、あの化け物に本気で勝とうとしてるのかよ」
「もちろん。そうじゃなきゃ、姉さんのところにも行けないからな」
「エメ君、怖いなら隠れていなさい。俺たちでどうにかするから」
「い、いや、俺も戦います」
「そうか。じゃあ、頑張ろうな」
一行が話していると、アナウンスが聞こえた。
「今から扉を開く。両者とも、同時に入ってきたまえ」
扉が開くと同時に、サフィア捜索会とコトリーは闘技場に出てきた。コトリーは相変わらず目と背中から血を垂らしている。
「へへへ。今度の相手は地上人か。潰すときの感覚が楽しみだぁ」
(奴は目が潰れているのに相手を認識している……一体どんな方法を使っているんだろう)
ラルドはコトリーを注意深く眺める。
「さあさあ、試合を始めるぞ。三、二、一……始め!」
「おらぁ!」
一行に振り下ろされた手を、全員避けた。その部分はひび割れ、へこんだ。
「みんな、あいつの弱点をなんとか見つけるんだ!」
「弱点なんかないよぉー。俺はもう無敵なんだよ。ふひひひ」
ジシャンの風の呪文で浮かぶ一行は、手当たり次第に弱点を探す。腕、脚、胴体、顔。そこら中に弱点を探したが、これといって見つからなかった。行き当たりばったりで剣を振るが、どこに振っても弾かれてしまう。呪文も当然のようにかき消す。
「無駄だよ。俺の勝ちはもう決まってるんだ。諦めて潰されちゃえよ」
コトリーは腕を振り回す。適当に振っているのではなく、確実に一行を狙いにいっている。
(やっぱりおかしい。なんで僕たちの場所を把握できるんだ?)
ラルドは攻撃を避けながら考える。しかし、考えるのに夢中で最後の一撃を避けられなかった。
「うわぁ!」
「ふはは! 小僧、まずはお前から潰してやろう」
大きな音をたてつつラルドに近づくコトリー。その間に、ニキスが入り込む。
「んー? コクリュウじゃないか。俺の攻撃を受け切れるのか?」
「お茶の子さいさいだ」
「ほう、言うじゃねぇか。じゃあ、試してみるしかないなぁ!」
「ラルド、こいつの弱点、私にはわかった気がする」
「ほ、本当か!?」
「今の俺に弱点? はて、なんのことか」
「教えるためには一旦こいつを動けなくする必要がある。何か手はないか?」
「……一つだけある!」
「わかった。じゃあ、それを頼む」
ラルドは風の呪文を解除し、ジシャンのいる方へ向かう。その間、ニキスはコトリーの攻撃を必死に防ぐ。
「ジシャン様! 僕たちの風の呪文を重ねて、あいつを止めましょう!」
「私とあなたとレイフと。それだけで足りるかしら……」
「今はそれしか方法がありません。やりましょう!」
「……わかったわ。今すぐ風の呪文を解除して、レイフと一緒に放ってみるわ」
ジシャンが風の呪文を解除すると、ゆっくりと一行は落下する。ジシャンは急いでレイフを呼び、三人が揃った。一緒に風の呪文を唱え、コトリーに向けて放つ。ニキスは急いで離れた。
「うぉぉ、すごい風だ。でも、俺を止めるには少し足りないみたいだなぁ!」
コトリーはこちらに向かって走ってくる。少しづつだが、確実に近づいている。
「な、これでもダメなんて……」
恐怖でジシャンの身体が震える。そうすると、後ろから手が伸びた。手の主は、ウォリアだった。
「俺も加勢しよう。多少は使えるはずだ」
「私も。風のブレスで手伝おう」
「う、なんて風の強さだ……」
ウォリアとニキスの加勢により、コトリーは前に進めなくなった。ニキスはブレスを吐くのをやめ、コトリーの弱点として一つの説を提唱する。
「私が思う奴の弱点は、第三の目だ」
「第三の目? そんなのついてないじゃないか」
「いいや、物理的な目ではない。心眼だ。奴の心の中にまだ目があるのだ。その目を破壊すれば、倒せると思うのだ」
「でも、心眼なんてどうやって破壊するんだよ。心の中に入り込むなんて、人間の出来ることじゃないぞ」
「人間ならばな。私に任せなさい。心を剥ぎとってみせよう」
ニキスは風で動きの止まったコトリーに近づいた。胸部を掴み、思い切り引っ張る。
「どういうつもりだ、コクリュウ。どんなに引っ張ったって、俺は死なないぞ」
「その割には顔を流れる汗がすごいな。やはりここに何か隠してるんだろう?」
「ふざけやがって。これでも食らえ!」
コトリーはニキスに殴りかかる。ニキスはそれを華麗に避け、代わりに引っ張って薄くなっている胸部を裂かせた。
「あっ! しまった……」
「ふふーん。やはりあったな。これが心眼か。血走ってて不気味だ。さて、これを握り潰してやろう」
「まっ、待ってくれ! 降参だ、降参! だから、それを返してくれ!」
ニキスはそう言われると、少し停止した。コトリーは白旗を上げている。
「……良かろう。王、この試合、私たちの勝ちで良いよな」
「そうだな。勝者、サフィア捜索会!」
風の呪文をずっと放っていた四人は、疲れでその場に座り込む。ニキスは一行に駆け寄る。
「お前たちのおかげだ。ありがとうな」
「いや、先に弱点を見つけた君を褒め称えるよ、俺は。ありがとう」
「へ、へへ。褒められると嬉しくなってしまうな」
一行が団欒していると、心眼を返してもらったコトリーが忍び寄る。
「もらったぁ!」
「む!」
ニキスは急いで振り返り、振り下ろされた拳を受け止めた。
「なんの真似だ、コトリー。試合はもう終わっているぞ」
「試合だぁ? そんなこと関係ねぇ! 俺は今お前を殺すことだけを考えてるんだ!」
「……戦士の風上にも置けない奴だ。王! これをどう思う!」
観客たちが無言で見つめる中、王は判断を下した。
「……そのデカブツに戦士としての誇りなし。このわしが殺してしんぜよう」
王は席から飛び降り、コトリーが片手に握っていた心眼を槍で突き刺した。あまりの痛みに、コトリーは仰向けになり暴れ回る。
「ぎゃああ! すびばせんでした! もうごんな前は二度としませんがらぁ、命だけは、いのぢだけはぁ!」
王はその言葉を無視し、心眼を突き続ける。次第に暴れなくなっていき、ついには息を引き取った。
「……愚か者めが。さあ、次の試合のために、こいつをさっさと燃やしてしまうぞ。コクリュウよ、すまなかった」
「しょうがない。私以外の誰かが襲われなかったのは不幸中の幸いだ」
「本当に申し訳ない。ルール表に試合後は争ってはいけないということを書かなければならなかったな」
王はジャンプし、元の場所へ戻った。ニキス以外の一行もその後、観戦席に向かった。
「モゴロよ、この空気はどうにかならんのか」
「つ、次の試合はきっと盛り上がるはずです。だから今はこの空気に耐えていてください」
「はぁ……わしが止めに入るべきじゃなかったな。すっかり空気が冷えておる」
「仕方ないですよ。あの状況、他の人にはどうにも出来なかった場面ですから」
「王様! コトリーの遺体を焼き尽くしました!」
「うむ。それでは、次の試合を始めるアナウンスを流そう」
王は魔導機に口を近づけると、アナウンスをした。
「あー、あー。これより第六試合を始める。両者とも、扉の前に待機したまえ」
「うーんと次の試合は……カワネギ対サフィア捜索隊か」
「カワネギはどんなチームでした?」
「火の呪文を上手く操る魔法使いチームって感じだったな」
「火の呪文はウルフに庇わせれば良いから、カタラたちが勝ちそうですね……はぁ」
「まあ、俺たちがついてればどうにかなるさ。どっちが勝ったって俺たちの勝利は確実だ」
そんな話をしていると、闘技場の扉が開かれた。
「さぁー第六試合、カワネギ対サフィア捜索隊! 果たしてどちらが勝つのでしょうか!」
「三、二、一……始め!」
試合開始が告げられた。
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