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第三.五章 地下探し編
第六十三話 ラルドとエメの一週間
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「ラルド、ラルド。起きろ朝だぞ」
「うーん……ふぁーあ。おはよう、エメ」
「さっさとシリョウ村かウスト遺跡に行くぞ。時間は限られてるんだ。急げ」
「そんなに慌てなくても、メジスに乗れば一瞬で世界中を回れる。ゆっくりのんびり行こう」
「だからって二度寝しようとするな!」
ラルドは仕方なく身体を起こした。二人は朝ご飯の匂いにつられ、部屋から出た。
「おはよう。二人とも、良く眠れた?」
「バッチリだよ母さん」
「いやいや、母ちゃん、こいつ二度寝しようと「ふん!」
「ぐえぇ……」
「ラルド、あんまり乱暴しちゃダメよ。嫌われちゃうからね」
「……ごめんなさい」
「また今日から旅をするんでしょう? 元気になれるようにとびっきり凄いのを作ってあげるわ」
トパーの作った朝食を食べ終えた二人は、早速家から出ようとした。すると、ルビーが自分の部屋から出てきて呼び止めた。
「ラルド、ちょっと来い」
「父さん、何?」
二人がルビーの部屋に入ると、ルビーが話し始めた。
「お前、今、十二歳だろ? もうそろそろ村長になっても良い歳頃なんじゃないか?」
「え、でも、父さんは二十歳で村長になったんだろ? 流石に早すぎるんじゃ」
「お前が村長になれば、俺が代わりに旅を出来る。俺がいかに強いかは、昨日話しただろ。だから、代わりに行ってやる」
「父さん、良い加減にしてくれよ。僕は何があったって姉さんを見つける。もう僕は父さんの想像より遥かに強いんだ。死んだりしないよ」
「……」
「……もう良いよね? じゃあ、また今度」
二人は今度こそ家の外に出た。
「あなた、なんでラルドを止めようとしたの? 止まらないことなんて既にわかってるでしょう?」
「……昨日夢を見た。その夢は、恐ろしい夢だった。ラルドが魔王になる夢だ」
トパーは驚いた。
「! その夢が現実になるって言うの?」
「考えたくはないが、可能性はあるだろう。俺の夢、ときどき正夢になるんだ。サフィアが生まれる一日前に、娘が生まれる夢を見たり、ラルドがエメをテイムした日の前日にラルドがようやくテイム出来る夢を見たり」
「それならそうやって言えば良かったじゃない。なんで何も言わずに立っていたのよ」
「奴は最近夢の世界を回るようになったとカタラから訊いた。きっと奴もその夢を見るだろう。そうしたら、勝手に帰ってくるだろう。だから、敢えて放した」
「そう……でも、どうやって魔王になったのかは夢で出てこなかったの? それさえわかれば私たちで止められるじゃない」
「俺の夢のダメなところは、手段がわからないことだ。そうなったという結果しか出てこない。今でもラルドがどうやってエメをテイムしたのかわからないんだ。二人の口から出ることもないしな」
「ふーん。まあ、夢で済んで良かったってことにしておきましょう。そんな夢が現実になるはずがないわ」
「確かに、俺の夢で正夢になってるのは良いことばっかりだ。しかし、いつ悪いことが起きるかわからないからな」
二人は、ラルドの将来に不安を持つことになった。
一方ラルドとエメは、メジスに乗ってシリョウ村を目指していた。
「シリョウ村のネクロマンサーは、死者の声を聞けるってこの前言ってたよな。運悪く地下世界に行っちゃって死んだ奴の声が、もしかしたら聞こえるかもしれない」
「村程度に収まってる集団が、そこまでの力を持ってるとは俺は思えないがな」
「それ、僕らが言えることか?」
「それはまあ……あれだな」
ベッサから一瞬で出たメジスは、シリョウ村に雷のような速度で近づく。二人は吹き飛ばされそうになるが、なんとかしがみついていた。
そんなに時間のかからないうちに、二人とメジスはシリョウ村入り口にたどり着いた。
「メジス、ありがとう。しばらくここで待っててくれ」
「ヴィヒーン!」
メジスは苦しそうに鳴いた。
「お前、鼻が利くんだな。まだ僕たちは臭わないけど、ついでにここでかけちゃおう」
ラルドは嗅覚を弱める呪文を唱えた。すると、メジスが悲鳴をあげるのをやめ、凛とした顔になった。
「よし、これで良いな。じゃあ、大人しく待っててくれよ」
メジスはうなずいた。
二人はとうとうシリョウ村に足を入れた。日が出ているはずなのに空は紫色で、常に寒い風が吹いている。入り口付近にいたネクロマンサーが、二人に話しかけた。
「おや? 君たち、この前来た……」
「はい。あの、村長に会わせてもらえないでしょうか?」
「うーん……あの村長が勇者なしで通してくれるかどうか。まあ、物は試しだな。久しぶりで右も左も思い出せないだろう。俺が案内してあげよう」
「ありがとうございます」
「あんがとな」
案内してくれるというネクロマンサーの後ろを二人はついていった。
道中、コンパスから声が聞こえた。
「ラルド君……聞こえますか」
「あ、そうぞうしん様。なんでしょうか」
「サフィアちゃんを見つけるために今度は地下世界に夢経由で行こうとしているようですね。私も手伝えることは手伝いますよ」
「ありがとうございます。今僕たちはシリョウ村の村長に会いに行ってます」
「シリョウ村ですか……私の仕事をとても邪魔する……いや、なんでもないです。早速村長さんの場所に向かってください。私も話が聞きたいです」
「はい」
しばらく歩いて、二人は村長の家にたどり着いた。案内してくれたネクロマンサーが、扉をノックする。
「何者だ」
「こないだ勇者レイフについてきていた少年です。入れてあげてください」
「そうか。今メイドを向かわせる。少年をここまで案内してくれてありがとうな」
「いえいえ。さ、二人とも、ここで待ってたら扉が開かれるから、ここへ来なさい」
ネクロマンサーがどいた地点に、二人は立った。すると、すぐにメイドのゾンビが扉を開けた。
(げえ。そういえばここの村長ってそういう人だったな……)
「えっと、タヒイさん……でしたっけ。どうか僕たちを村長のところへ連れていってください」
「あら、私の名前、覚えててくれたんですね。嬉しいです」
タヒイは頬を赤らめる。しかし、ゾンビなので全く可愛くない。
「こちらです。ついてきてください。ところで、村長の名前は覚えていますか?」
「村長は、ナキガラさんでしたよね」
「そうです。道は忘れても、人の名前を覚えてるだけで十分です」
「は、はあ……」
「さあ、こちらになります。どうぞ扉を開けてください」
ラルドは扉を開けた。中に入ると、ヨボヨボの爺さんが椅子に座っていた。
「……うむ。物忘れが激しくなってきたが、ワシはちゃんと君たちのことを覚えているぞ。して、何の用じゃ?」
「実は……」
「なるほど。ちかせかいという場所で死んだ者の声を聞きたいと。ちかせかいは、地下の世界ってことで良いか?」
「はい。お願いします」
「では、早速試してみるとしよう。ブツブツ……」
しばらくして、ナキガラはカッと目を開いた。いきなり目を開くものだから、二人はギョッとする。
「この死者の声は……間違いなく地下世界の物じゃ。ハッキリ地下世界と言うとる。しかし、声がかすれていて良く聞こえぬ」
「聞こえ辛くても大丈夫です。聞き取れたところだけ教えてください」
「わかった。もうしばらく聞いてみる」
どれくらいの時間が経ったのか、ナキガラは聞こえた声を次々と紙に書いた。そこに書かれた文字列は、意味不明な物だった。その文章を見て、ナキガラはため息を吐く。
「はあ……ダメじゃな。こんなことでは、力になれない」
「大丈夫ですよナキガラさん。この文字たちを並び替えれば、きっとちゃんとした情報になるはずです」
「それなら良いが……じゃあ、この紙は君に渡す。ぜひ有効活用してくれ」
ラルドは受け取った紙をカバンにしまった。
「ナキガラさん、本日はありがとうございました。また会いましょう」
「さよなら」
「達者でな」
二人はナキガラの家から出て、その勢いで村からも出た。ナキガラにもらった紙を広げ、文字を見る。
(うわー、これからこの文字たちを並び替えなくちゃいけないのか……骨が折れるな)
「ラルド、この後どうするよ? そのままウスト遺跡に行くか?」
「うーん……ウスト遺跡で文字のパズルをするか、それとも別の場所でするかだな。一旦家に帰るのも一つの手かもしれない」
「オークたちのテントは中がそんなに明るくないうえに火なんかつけたら危ないもんな。家が最善の選択肢な気がするぜ」
「それじゃあ、家に行くか」
二人はメジスに乗り、家に帰ることにした。
「うーん……ふぁーあ。おはよう、エメ」
「さっさとシリョウ村かウスト遺跡に行くぞ。時間は限られてるんだ。急げ」
「そんなに慌てなくても、メジスに乗れば一瞬で世界中を回れる。ゆっくりのんびり行こう」
「だからって二度寝しようとするな!」
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「ぐえぇ……」
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「……ごめんなさい」
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「お前が村長になれば、俺が代わりに旅を出来る。俺がいかに強いかは、昨日話しただろ。だから、代わりに行ってやる」
「父さん、良い加減にしてくれよ。僕は何があったって姉さんを見つける。もう僕は父さんの想像より遥かに強いんだ。死んだりしないよ」
「……」
「……もう良いよね? じゃあ、また今度」
二人は今度こそ家の外に出た。
「あなた、なんでラルドを止めようとしたの? 止まらないことなんて既にわかってるでしょう?」
「……昨日夢を見た。その夢は、恐ろしい夢だった。ラルドが魔王になる夢だ」
トパーは驚いた。
「! その夢が現実になるって言うの?」
「考えたくはないが、可能性はあるだろう。俺の夢、ときどき正夢になるんだ。サフィアが生まれる一日前に、娘が生まれる夢を見たり、ラルドがエメをテイムした日の前日にラルドがようやくテイム出来る夢を見たり」
「それならそうやって言えば良かったじゃない。なんで何も言わずに立っていたのよ」
「奴は最近夢の世界を回るようになったとカタラから訊いた。きっと奴もその夢を見るだろう。そうしたら、勝手に帰ってくるだろう。だから、敢えて放した」
「そう……でも、どうやって魔王になったのかは夢で出てこなかったの? それさえわかれば私たちで止められるじゃない」
「俺の夢のダメなところは、手段がわからないことだ。そうなったという結果しか出てこない。今でもラルドがどうやってエメをテイムしたのかわからないんだ。二人の口から出ることもないしな」
「ふーん。まあ、夢で済んで良かったってことにしておきましょう。そんな夢が現実になるはずがないわ」
「確かに、俺の夢で正夢になってるのは良いことばっかりだ。しかし、いつ悪いことが起きるかわからないからな」
二人は、ラルドの将来に不安を持つことになった。
一方ラルドとエメは、メジスに乗ってシリョウ村を目指していた。
「シリョウ村のネクロマンサーは、死者の声を聞けるってこの前言ってたよな。運悪く地下世界に行っちゃって死んだ奴の声が、もしかしたら聞こえるかもしれない」
「村程度に収まってる集団が、そこまでの力を持ってるとは俺は思えないがな」
「それ、僕らが言えることか?」
「それはまあ……あれだな」
ベッサから一瞬で出たメジスは、シリョウ村に雷のような速度で近づく。二人は吹き飛ばされそうになるが、なんとかしがみついていた。
そんなに時間のかからないうちに、二人とメジスはシリョウ村入り口にたどり着いた。
「メジス、ありがとう。しばらくここで待っててくれ」
「ヴィヒーン!」
メジスは苦しそうに鳴いた。
「お前、鼻が利くんだな。まだ僕たちは臭わないけど、ついでにここでかけちゃおう」
ラルドは嗅覚を弱める呪文を唱えた。すると、メジスが悲鳴をあげるのをやめ、凛とした顔になった。
「よし、これで良いな。じゃあ、大人しく待っててくれよ」
メジスはうなずいた。
二人はとうとうシリョウ村に足を入れた。日が出ているはずなのに空は紫色で、常に寒い風が吹いている。入り口付近にいたネクロマンサーが、二人に話しかけた。
「おや? 君たち、この前来た……」
「はい。あの、村長に会わせてもらえないでしょうか?」
「うーん……あの村長が勇者なしで通してくれるかどうか。まあ、物は試しだな。久しぶりで右も左も思い出せないだろう。俺が案内してあげよう」
「ありがとうございます」
「あんがとな」
案内してくれるというネクロマンサーの後ろを二人はついていった。
道中、コンパスから声が聞こえた。
「ラルド君……聞こえますか」
「あ、そうぞうしん様。なんでしょうか」
「サフィアちゃんを見つけるために今度は地下世界に夢経由で行こうとしているようですね。私も手伝えることは手伝いますよ」
「ありがとうございます。今僕たちはシリョウ村の村長に会いに行ってます」
「シリョウ村ですか……私の仕事をとても邪魔する……いや、なんでもないです。早速村長さんの場所に向かってください。私も話が聞きたいです」
「はい」
しばらく歩いて、二人は村長の家にたどり着いた。案内してくれたネクロマンサーが、扉をノックする。
「何者だ」
「こないだ勇者レイフについてきていた少年です。入れてあげてください」
「そうか。今メイドを向かわせる。少年をここまで案内してくれてありがとうな」
「いえいえ。さ、二人とも、ここで待ってたら扉が開かれるから、ここへ来なさい」
ネクロマンサーがどいた地点に、二人は立った。すると、すぐにメイドのゾンビが扉を開けた。
(げえ。そういえばここの村長ってそういう人だったな……)
「えっと、タヒイさん……でしたっけ。どうか僕たちを村長のところへ連れていってください」
「あら、私の名前、覚えててくれたんですね。嬉しいです」
タヒイは頬を赤らめる。しかし、ゾンビなので全く可愛くない。
「こちらです。ついてきてください。ところで、村長の名前は覚えていますか?」
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「そうです。道は忘れても、人の名前を覚えてるだけで十分です」
「は、はあ……」
「さあ、こちらになります。どうぞ扉を開けてください」
ラルドは扉を開けた。中に入ると、ヨボヨボの爺さんが椅子に座っていた。
「……うむ。物忘れが激しくなってきたが、ワシはちゃんと君たちのことを覚えているぞ。して、何の用じゃ?」
「実は……」
「なるほど。ちかせかいという場所で死んだ者の声を聞きたいと。ちかせかいは、地下の世界ってことで良いか?」
「はい。お願いします」
「では、早速試してみるとしよう。ブツブツ……」
しばらくして、ナキガラはカッと目を開いた。いきなり目を開くものだから、二人はギョッとする。
「この死者の声は……間違いなく地下世界の物じゃ。ハッキリ地下世界と言うとる。しかし、声がかすれていて良く聞こえぬ」
「聞こえ辛くても大丈夫です。聞き取れたところだけ教えてください」
「わかった。もうしばらく聞いてみる」
どれくらいの時間が経ったのか、ナキガラは聞こえた声を次々と紙に書いた。そこに書かれた文字列は、意味不明な物だった。その文章を見て、ナキガラはため息を吐く。
「はあ……ダメじゃな。こんなことでは、力になれない」
「大丈夫ですよナキガラさん。この文字たちを並び替えれば、きっとちゃんとした情報になるはずです」
「それなら良いが……じゃあ、この紙は君に渡す。ぜひ有効活用してくれ」
ラルドは受け取った紙をカバンにしまった。
「ナキガラさん、本日はありがとうございました。また会いましょう」
「さよなら」
「達者でな」
二人はナキガラの家から出て、その勢いで村からも出た。ナキガラにもらった紙を広げ、文字を見る。
(うわー、これからこの文字たちを並び替えなくちゃいけないのか……骨が折れるな)
「ラルド、この後どうするよ? そのままウスト遺跡に行くか?」
「うーん……ウスト遺跡で文字のパズルをするか、それとも別の場所でするかだな。一旦家に帰るのも一つの手かもしれない」
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