最強テイマーの姉が行方不明になりました〜最弱テイマーの僕が必ず見つけます〜

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第四章 地下編

第七十三話 エメの秘密の力

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「ふ、エメ、来たか。なぁ、俺たちと協力してあいつの支配下から抜けないか? もうどうせサフィアは死んでるだろうしさ」
「あぁ。考えておこう。だが、今はそれより大事なことがある。それはまた別の機会にな」
「ふん。もう死んでる奴を捜すのに力を使ってどうすると言うのだ」
「……まだ決まったわけじゃない。サフィアが死んだとは。それに、俺もあの人に少し恩があるからな。」
「恩? 一体なんだと言うんだ」
「この話をするのは俺が認めた奴だけだ。残念だがお前には話せない」
「そうか。俺はお前に認められていないと。ならば、タイマン、しようか」
「そんなに話を訊きたいか。だがな、俺は強さだけでは認めない。強さに加え、見た目、性格、信念、俺を好きでいてくれるかどうか、とかがあるんだ」
「なんだそりゃ。一生見つからんだろそんな奴」
「当然だ。話す気が一切ないってことだよ。俺が認めたのは、ただ一人だけ。サフィアすらその中に入っていないということだ」
「そいつはすごい奴なんだな。誰だ?」
「教えねーよ。お前がいると対策もまともに出来ないから、ここから出てくわ。じゃあな」
「俺が黙ってお前の考える姿を見ると少しでも思ったのかよ」

 エメはフンスのテントから出て、誰もいない場所へ向かった。土に文字を書きながら、色々と考える。

(はかいしんの奴がどこまで俺の考えを知ることが出来るのかわからないから、下手に文字を書かない方が正解か……? いやでも、俺の頭の中まで見られてる可能性もあるもんな……うーん、どうしよう)
「エメ君、ちょっとお話良いかしら?」

 エメが振り返ると、さっきまでフンスのテントで爆睡していたジシャンが立っていた。エメはその場から起き上がり、ジシャンと目線を合わせる。

「話ってなんだ?」
「さっきたまたま聞いてたんだけど、あなたの認めた人っていうのを、私、知りたいなーなんて思って。私じゃダメかな……?」
「……あんたの強さ、見た目、性格、信念、俺を好きでいてくれるかどうか、それは認める。だけど、それでも話せない」
「そう……ごめんね、無理言っちゃって。でも、私のことをほとんど認めてくれてありがとう。ちょっと嬉しいわ」

 ジシャンはその場から立ち去った。

(……でもな、ジシャン。この話は俺が死ぬ前に必ず誰かにしたい話だ。いつの日かあんたにも話を訊く権利が与えられるかもしれないぞ)

 エメは再びしゃがみ、対策を考え始めた。
 一方、エメに頼りっきりだった一行は、エメと一緒に話して秘密の力を訊き出そうとしていた。しかし、その場にジシャンがやってきて、それを止めるように言った。

「どうしてだ? エメ君の力を把握してないと、俺たちも立ち回り辛いし、対策も多人数で考えた方が良いだろうし……」
「あの子、いつになく真剣な目をしてた。何を考えてるかはわからないけれど、壮大なことを考えてるに違いないわ。邪魔しちゃダメだと私は思う」
「ジシャン様、あいつが真剣になるなんてありえませんよ。あいつはいつも怠けてます」
「ラルド君、一番長くエメ君と付き合ってるあなたなら、彼がどれだけ真剣か、わかってあげられない? 今までの人生で、一度も真剣なところを見たことはないの?」
「そりゃあ、たまにはありますけど……」
「じゃあ、わかるわよね?」
「……はい」
「ジシャン、言わせてるだけだろ」
「そんなことないわ。ラルド君が納得してくれただけよ。ね? ラルド君」
「そうですね」
「さ! エメ君が対策を考えてるうちに、私たちが出来ることをしましょう!」

 ジシャンは急にその場で一行に踊りを見せつける。一行はただひたすらに困惑する。

「じ、ジシャン? 何をやってるんだ?」
「決まってるじゃない。ダンスよ、ダンス。あなたたち、寝てばかりで身体を動かしてないでしょう? そんなんじゃ現実での力が衰えるばかりよ。だから、運動しなきゃ」
「ダンスじゃなきゃダメなのか?」
「ダンスは楽しいじゃない! みんなで歌いながら踊る。歴史書にも記されてる伝統的なものよ。さあみんな、立って立って! アンジャレビバロンピ~」
「ダンス、楽しそう。私、やる」
「ジシャン様がやるなら、僕もやります」
「さあ、他のみんなも立ち上がって!」

 ジシャンは立ち上がることを促す。既に踊りに参加してる二人は楽しそうに踊り歌っている。その様子を見て少し綻んだのか、レイフが立ち上がり踊り始めた。その後に続いてウォリア、ラルドも踊り始めた。ダイヤとニキスは戸惑う。

「俺もやらなきゃダメな空気だな、これ……」
「私にとって踊りというのはもっと神聖なものだ。付き合えん」
「何言ってるのよ。あなた、もうすっかり人間の生活に慣れてるじゃない。少しは人間側の遊びにも付き合いなさいよ」
「ぐ……それでは仕方ない。私が正しい踊りというものを教えてやろうではないか」
「お、乗り気になったわね。さあ、あとはダイヤ君だけよ」
「この身体になってから、踊りって一回もしてないんだ。だから、上手く踊れるかどうか……」
「上手でも下手でも構わないわよ。ほら、ウォリアを見て。あんなにムキムキだから、くるくる回るのが下手じゃない。だから、大丈夫よ」
「それじゃあ、人間時代を思い出しながら踊らせてもらおう」

 一行は歌って踊って楽しむ。
 それを疎ましいと思う男が一人、エメ。

(俺から離れてくれたからうるさくなくて済むと思ったら、めちゃくちゃうるさくなってんじゃねぇか。何してくれてんだよジシャン……これじゃあろくに考え事出来ないぞ)

 しかし、あまりに楽しそうにしている一行を止めるのも気が引けるエメは、騒音に耐えながら対策を考える。エメが使った秘密の力は、エメの頭の中でのみ存在する。

(この力は……まだ使えるか? でも、試しにいくなんてダメだよな。それで見破られたらどうすんだって話だし。とは言っても、これ以上の力を出すのは今の俺には出来ないかもしれない……師匠、あなたがもっと生きていれば……そうか。その手があったか!)

 何かを閃いたエメは、一行の踊る場に走った。
 一行は踊りと歌に集中してエメに全く気づいていない。エメは指笛を吹いて一行を止めた。踊りをやめたジシャンがエメに話しかける。

「あら、エメ君。何か思いついたの?」
「一つ、思いついた。でも、これは俺一人でやらせてもらう」
「エメ、隠さずに教えてくれよ。何を思いついたんだ?」
「ラルド、お前のホース、借りてくぞ。シリョウ村に行ってくる」
「シリョウ村に行くってことは、死者に関係があるということか」
「そうそう。それじゃあ今日中には帰ってくるから待っててくれ。じゃあな」

 メジスを動かそうとエメは手綱を握る。しかし、メジスはエメを振り落とした。

「いった! おいおい、どうしたんだよ。シンジュ、こいつなんか言ってないか?」
「心、読んでみる」

 シンジュを通して、一行はメジスの言葉を聞く。

(俺は小僧の下っ端だ。お前の下っ端ではない。俺を動かして良いのは、小僧だけだ)
「そうか……それじゃあラルド、頼んだ。シリョウ村まで行けさえすれば良い。あとは外で待っていてくれ」
「わかった」

 ラルドはメジスに乗り、その後にエメが乗る。そして、メジスは走り出した。
 シリョウ村にあっという間に着いた二人は、メジスから降りた。

「ラルド、嗅覚を弱める呪文をかけてくれ」
「そろそろ僕も臭いでクラクラしてきたところだ。メジスと合わせてかけてやる」
「ありがとな。それじゃあ、また後でな」

 嗅覚を弱める呪文で臭いが気にならなくなったエメは、改めてラルドと別れの挨拶をした。

「でも、あいつに死者で知り合いの奴なんかいるのかな……」
「ヒヒーン」
「すまんな。今の状態じゃお前が何を言ってるのかわからない。シンジュも連れてこれば良かったな」

 メジスはショボンとした。
 ナキガラの家の前に、エメはたどり着いた。扉をノックすると、タヒイが出てきた。

「あなたはこの前のゴブリンさんですね。ナキガラ様に用事ですか?」
「あぁ。案内してくれ」
「わかりました」

 エメはタヒイの後ろをついていった。
 ナキガラの部屋へ向かう途中、エメはタヒイにここに来た目的を訊かれた。

「ゴブリンさん、今回は誰の声を聞きたいのですか?」
「それは秘密だ。ナキガラにしか教えない。本当は誰にも話したくないが、今回ばかりは力を借りなくちゃ出来ないからな」
「それは残念です。まあ、誰しも秘密にしたいことはありますよね。気持ちは良くわかります。私も生前は隠し事ばかりしていました」
(生前か……今は肌が紫と水色のツギハギでまさにゾンビって感じだけど、生きてた頃はどんな感じだったんだろう)
「さあ、着きましたよ。どうぞ扉を開けて中へ」
「ありがとう」

 部屋の中に入ったエメは、タヒイに聞かれないようにすぐに扉を閉めた。

「やあゴブリン。今回は誰の声を聞きたいんだ?」
「……俺の師匠、夢のスペシャリストの声が聞きたい」
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