バックドロップ・ガーターベルト・マーダーマーダー

ゆらゆら保逝園児

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B.G.M

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何の変哲もないホテルのドアが開かれ、何かが飛んできた。

元人間の生首だ。切断された首の根本には赤い肉が覗き、その顔は苦悶に満ちたデスマスクだった。

サッカーボールになった殺人鬼はそのまま転がっていき、壁に当たってようやく止まった。

「今、俺が舞い戻った。お前ら準備できてるか?」

天使の羽を思わせる純白の白髪に、死神に仕立ててもらったかのようなスーツを着崩したその男は、荒んだ声音で私たちに言った。集合時間はとっくに過ぎている。3時間の遅刻だ。

「ケロイドを待ってたんだ。人を待たせた癖に、ずいぶん偉そうだな」

私は白髪の男、ケロイドが人を待たせることに何の罪悪感も持たない人間であることはわかっていたので、たいして語気を強めずに返した。私はこいつよりも大人だからな。

「ハイド、ケロイドは帰ってくるのが遅いなんていつものことなんだし、怒らないであげようよ」

こっちの紫の覆面で口元以外を覆ったガタイのいいスーツの男はカラス。見かけはいいが、体格に中身が伴っていないタイプのマッチョで、こうして私とケロイドの乳繰り合いにも反応するかわいいやつだ。

「カラスが言うなら仕方ないな、この辺りでやめておいてやろう。お前、カラスに感謝しろ。あと少しで撃つところだったんだからな」

顔を見て、言った。ケロイドの眼からは、私たち共同体ユニット「B.G.M」の人間であっても、内面から滲み出る殺意が向けられる。よく見ないでも、明らかにヤバいやつだ。しかし、ケロイドが私たちを殺すことはない。私たちは微妙な均衡の上に成り立っている、ライフワーキングの同僚だからだ。ケロイドにも、カラスにも、私にも、共同体の他の2人が居なければ、趣味、あるいは仕事、あるいは存在、私たちのメンタルモデルの奥深くに染み付いている愛すべき目標は、達成し得ない。

「ハ、ちびっ子が。遊んで欲しいなら最初からそう言え。素直じゃねえお姫さまだな」

ケロイドはソファでだらけていた私の両脇に手を入れ、持ち上げた。ゴスの黒ドレスと腰まで伸びた黒髪が、その拍子に揺れる。

「へ?」

「相変わらず重いなぁ?ダイエットとかしねえのか?」

「身長のことをバカにした上に体重まで笑うのか!ふざけるな!私は中身はお前の汚い内臓と違って精緻で繊細で完璧な精密機械が詰まってるんだ!お前ら人間と一緒にするな!」

私は人間ではない。人間の脳と筋肉と骨に当たる部位は、VK-1006系の旧式思考モジュールと人工筋肉と鉄骨で構成されているロボットだ。

誰が何のために私を作ったのかはわからない。だが、わからないことだらけだが、1つだけわかることがある。私を作ったやつはペドフィリアだってことだ。

「2人とも、やめておきなよ。みんな揃ったんだし、そろそろ行こう」

カラスがおもむろに立ち上がった。優しい男だが、仲間が争っているのを見るのは、それがじゃれ合いだとしても、許せない人間だった。私たちのじゃれ合いが限度を超えると、プロレスラーとして闘っている時と同じ雰囲気が出る。要するに、怒らせるとめんどくさい。

カラスが怒気を放ち始めたので、じたばた暴れる私は地面に降ろされた。

「怒るなよ、こんなのはスキンシップの一環に過ぎない。マジでやってる訳がないだろ、なぁ?」

ケロイドもめんどうなのは嫌いなようで、カラスがこうなる度に都度、遊びでやっていると弁明している。

「ふん」

私はそっぽを向いた。でも、ケロイドのことは嫌いではなかった。

「ウインクが、下で僕たちをずっと待ってる。早く行かないと、またキレられるよ。主に僕が」

ウインクというのは、情報屋兼私たちの運転手。艶のある漆黒のカルマンギアという極上の車でお出迎えしてくれ、その上、暇な時にはドライブに連れていってくれる。私はウインクが運転してくれるドライブが好きだ。ケロイドの運転は乱暴すぎるし、カラスはとろとろ走りすぎる。私はそもそも身体の大きさで運転が出来ない。よって、まともなアシとして使えるのは、共同体の中でウインクしかいない。

「今日はどこだっけ?忘れちまった」

「カミイケドイ地区のバカスマイル会館だ」

ケロイドはあくびをした。

「あー。そうだった」

「急ごう。ケロイドが遅れたせいで、やつら増えてるかもしれない」

私たちはそれぞれのエモノを携えて、部屋を後にした。
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