BLSS、その他まとめ

うしお

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涙の記憶

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 白球が真っ青な空に吸い込まれて、俺たちの夏は終わった。
 泣きそうになりながら、俺は必死に笑おうとした。泣いて終わるなんて悲しすぎる。

「ごめんな、ダメだった」

 だけど、口に出してしまったら、涙も一緒に流れてしまった。駆け寄ってきた仲間たちに、もみくちゃにされながら泣いた。仲間たちもみんな泣いて、並んでお辞儀をしながらさらに泣いた。体から水分がなくなりそうなくらい思いきり泣いた。バッテリーを組んでいたあいつと、抱き合いながら。

 あれから二十年。小さくて可愛かったあいつはいない。

「おっ、ホームラン」

「……どうして、ここまで変わるかね」

「え?なんか言ったか?」

「なんでもねぇよ」

「あいつら一発キメちまったし、オレらも一発キメとくか?」

「いきなりなんだよ、そのゲスな発想」

「だって、まだ忘れられないんだろ」

「……おまえ」

「任せとけ。今日もしっかり啼かせてやるから」

「そんなこと言われて任せられるか!」

「はいはい、おとなしく任せとけよ。お前の女房はテクニシャンだぜ」

 小さな巨人、なんて呼ばれていた俺の女房役は、いまや高身長のイケメン様だ 形ばかりの抵抗なんて何のその。さっさと俺を組み敷いて、いつものように泣かせにくる。

「いい加減、あの時の涙なんて忘れちまえ」

 もうとっくに忘れたよ。その一言が言えなくて、俺は今日も、あいつの下で泣かされている。
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