立体工作

うしお

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4、出会い 4

計画は、驚くほど順調に進んだ。
途中で俺がトイレに立つと、すぐに沢樫がついてきて、隣の小便器前に立った。
まるであの日を再現しているようだ。
二人並んで用を足しつつ、これからどう誘おうかと頭を悩ませる。
当初の予定では、沢樫が酔い潰れるまで飲ませて持ち帰るつもりだったのだが、思っていたよりもアルコールに強い質のようだ。
これでは、いつまで経っても持ち帰ることはできないだろう。
そうこうしているうちに、出るものは出尽くした。
もう一度、どこかで仕切り直さねばと思った俺に、追いかけてきた沢樫が声をかけてくる。

「あ、あの……志島課長、このあと二人だけで飲み直しませんか……? 俺、志島課長ともっとお話したいんです……ダメ、ですか?」

これが、飛んで火に入る夏の虫、というやつなのだろうか。
別に騙したり、危害を加えようというつもりはないが、ほとんど話したことのない男相手に二人きりになりたいなんて自ら誘うようなことを言うとは、危機感が足りないのではないだろうか。
だが、向こうがそういうつもりでいるのならば話は早い。

「それなら、家に来るか? 一人暮らしだから、たいしたもてなしはできないが、ゆっくり話すことはできると思うぞ」

「え、家に? いいんですか?」

「明日から冬期休暇だろう。帰省をする予定がないなら、泊まっていってかまわない。ああ、着替えくらいは用意しないと、さすがに困るかもしれないな」

「あ、じゃ、じゃあ、近くのコンビニに寄ってもいいですか」

「かまわないぞ。適当に食べるものも買っていこう」

頬を赤く染めながら、まるでおやつをねだっている犬の顔によく似た表情で言うから、思わず頭を撫でていた。
沢樫が嫌がらなかったため、たっぷりと撫でることができた。
予想以上に、沢樫の毛並みはふわふわで心地よい手触りだった。

「それじゃあ、このあと二人で抜け出すか」

こくりと頷いた沢樫を連れ、俺は準備が整っている自宅へ向かうことにする。
会社の忘年会とはいえ、規模が大きいからか、すぐに抜け出せた。
上の連中はもともと機会さえあれば飲む人間ばかりなので、俺たちが戻った時には、すでに気持ちよく酔っ払っていたのだ。
適当なところで、タクシーを手配するよう頼んで会場をあとにする。
今日ばかりは、彼らよりも優先したい男がいるのだ。
酔っ払いたちに、かまってなどいられない。
さて、準備が整っているとはいえ、沢樫をすぐに寝室へ連れ込むのは難しいだろう。
コンビニに寄り、沢樫が下着を購入する横で、追加の酒類と適当につまめるものを購入しておく。
コンドームコーナーの前を通ったが、コンビニでは自分のものに合うサイズのものを入手できないことは知っているのでそのまま通りすぎた。
それに、必要なものは、すでに揃えてちゃんとストックしてある。
在庫管理は得意分野だ。

「さあ、着いたぞ。あがってくれ」

「お、おじゃまします」

おどおどと足を進める沢樫の背中を見ながら、玄関ドアに鍵とチェーンをかけておく。
万が一、逃げられたとしても、鍵さえかけておけばここで足止めすることができるだろう。
基本的に、余計なものは置かない主義なので、飾り気など微塵もないリビングに沢樫が立っている。
ふわふわした頭で、あちこちをきょろきょろ見ている様は可愛らしい。
このまま鎖に繋げてしまえたら、逃げられる心配などしなくていいのに。

「手洗いうがいをするなら、そこのドアを出て右だ。洗面台がある」

「あ、はいっ、ありがとうございます! いってきます」

コンビニ袋をテーブルの側に置き、ちょこちょこと洗面台の方へと消えていく。
実に可愛らしくて、見ていて飽きる気がしない。
沢樫が、手洗いとうがいをすませてくる間に、スーツから部屋着に着替えておく。
ついでに、スウェットのポケットに、ファーでくるまれた手錠を突っ込んでおいた。
可能なら、さっさと手錠をかけて、沢樫を拘束してしまおう。

「……遅いな」

手早く準備を整えたとはいえ、沢樫が戻ってこない。
洗面台は、それほど複雑なところにあるわけでもないのに、とドアを開いたところで沢樫が、廊下の左側にあるドアから飛び出してくるのが見えた。
そこは、寝室のドアだ。

「あ、あの、俺、間違えちゃって……」

どうやら、準備していたあれこれを、沢樫に見られてしまったらしい。
寝室に連れ込む時には、拘束が済んでいる予定だったから、無防備に置いてあった枕元やサイドボードの上の玩具やコンドームの山を見てしまったのだろう。
俺はゆっくりと沢樫に近づいて、その体をしっかりと抱き締めた。
沢樫は、おろおろとしたまま、俺の腕の中に収まっている。

「見てしまったんだな」

「あ、あの、俺、志島課長の趣味のこと、誰にも言ったりしないんで!」

「……そうか。でも、口約束では不安だな」

「え、あ、じゃあ、け、契約書とか、書いたらいいですか……?」

「いや、それよりもっといい方法がある」

「いい方法……?」

「そうだ」

きょとんと俺を見上げてくる沢樫のあごを固定して、そのまま唇を重ねた。
びくんっと震えた沢樫の舌を絡めとり、頭の後ろを押さえつけながら、口内を蹂躙していく。
沢樫からの抵抗は思ったよりも控えめで、これなら問題なく計画を進められると判断した。
もう片方の手で、俺のシャツを掴んだまま震えている沢樫の手首に、手早く手錠をかけていく。
かしゃりかしゃりと左右の手首に手錠をかけても、沢樫は逃げ出そうとはしなかった。
はふはふと切なそうな吐息を漏らしながら、すがるように抱きついてくる体を、寝室のドアへと押しつけた。

「……沢樫、逃げないのか?」

口付けのあいまに問いかければ、沢樫はとろりと蕩けた瞳でこちらを見上げた。
飲み込み切れなかった唾液を滴らせた唇を、赤く濡れた舌が拭い取る。
それがなんともなまめかしく、陰茎に血が集まっていくのを感じた。
先程までの無邪気な子犬のような雰囲気が、いつの間にか、淫乱な娼婦のような雰囲気に変わっている。

「逃げる……? どうして? 俺、すごく嬉しいです……志島課長のこと、ずっと気になってたんです」

「そうか、それなら、このままいいだろうか?」

「このまま……」

俺が寝室のドアを開けば、沢樫は一気に頬を赤く染め、俺の胸に飛び込んできた。

「あ、あの、それって、つまり、そういうこと、なんですよね」

「ああ、俺は君を……」

「オナホにしてくれるんですね!」

恋人に、と言おうとした俺の言葉に、沢樫の元気な声が重なった。
発言の内容が理解できない。
沢樫は、いま、何になると言ったのだろう。
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