運命の堕とし方

うしお

文字の大きさ
14 / 19
蛇足の蛇足の蛇足編

14(蛇足の蛇足の蛇足1)

しおりを挟む
「ふふっ、ルイの目は夜みたいに綺麗だね。なんだか、見てると吸い込まれそう」

すっかり息も絶え絶えになったルイの頬を両手で包み、美しい宝石の化身のようなユエラが笑う。
真っ黒なだけのルイの瞳を、綺麗だなんて言いながら。
そのまま近付いてきたユエラの唇は、ルイの唇にしっかりと重ねられた。
閉じ損ねた目の中に、赤い海と三日月が飛び込んでくる。
そちらの方が、よほど綺麗だ。
声にならぬ賛辞を胸に、三日月を見るルイの奥、深く入り込んだ舌の動きに行為の再開を感じ取る。
ルイの王は、性欲旺盛。
再び吹き荒れる嵐を前に、ルイは大人しく目を閉じた。

『カラス』

不吉を呼ぶ象徴とされる鳥の名が、ルイにつけられたあだ名だった。
真っ黒な髪に真っ黒な瞳。
誰も彼もが明るく華やかな色をまとう中、誰よりも陰気で不吉な色を持つルイは、周囲から爪弾きにされて育った。
物心ついた時には父も母もなく、ルイは領主が運営する養育院で暮らしていた。
養育院は、何らかの事情で捨てられた子や身寄りのない子を育てる場所で、簡単な教育と生きる術を教えてくれるところだった。
ある程度大きくなったら養育院を出て、領地のために役立つ職業に就くことが、養育院出身の子どもたちに求められる役目だ。
大抵は、男なら騎士を目指し、女なら針子や使用人などを目指すことが多い。
何故なら、それが一番領主の役に立てる職業だと教えられるからだ。

ルイは、あまりしゃべらない子どもだった。
みんなが遊んでいる時間も、黙々と与えられた木刀を振り続けているような子だ。
ただでさえ、遠巻きにされていたルイの側に寄ってくるものはいなかった。
だが、ある時やってきた騎士に、剣の筋がよいと言われ、ルイはその騎士の家に引き取られることになった。
だが、誰よりも真面目で騎士道精神にあふれた義父は、ある日、山賊退治に出かけた先で命を落としてしまった。
人質になっていた少女を守ろうとして、代わりに命を落としたのだという。
残されたのは、ルイと変わらぬ歳の義兄と義母の三人。
義母は、ルイにこのまま居てよいと声をかけてくれたのだが、その瞳は言葉を裏切っていた。
元より、引き取られた時から、義母はあまりよい顔をしていなかった。
ルイを引き取ることは、義父が独断で決めたのだとわかってからは余計に、ルイの居心地がよくなることは一度もなかった。
ルイは丁寧にその申し出を断り、縁を切って領軍の兵士になることを選んだ。
最後に挨拶をする時でさえ、ふたりの目は変わらなかった。
むしろ、いなくなってほっとする、と思われているようだった。
ルイの頭の中には、『カラス』と呼ばれていた頃の記憶が甦っていた。
お前は、不吉なものだと言われたような気がした。

領軍の兵士になったルイは、黙々と鍛練に励んだ。
誰よりも強く、誰かを守って死ねるような、義父のような騎士を目指していた。
家庭人としての義父はよく知らない。
だが、騎士として働く義父は、ルイの憧れだった。

そして、何年もの月日を経て、ようやくルイは騎士となった。
内側に入ってはじめてわかったのだが、騎士団には、ルイが思っていたような清廉な騎士はどこにもいなかった。
多くが跡を継ぐ家のない貴族の子息や商家の子息で、平民出の子どもたちも何人かいたが、ルイのような養育院出身のものになるとどこにもいなかった。
同じ騎士ではあっても、実家の後ろ楯がないものの立場は低く、雑用などを押し付けられた。
貴族の子息は商家の子息に押し付け、商家の子息は平民の子どもに押し付ける。
世界はその繰り返した。
それは、養育院でもよく見かけた風景だった。
恐らく、あの騎士が引き取ってくれていなかったら、その平民の子どもの下にはルイがひとりだけおかれたのだろう。
だが、一時でも貴族であった経歴からか、ルイのことは誰もが腫れ物のように扱い爪弾きにしていた。
誰も彼も、騎士ではない。
ここには騎士がひとりもいない。
ルイには、それが不快だった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

神父様に捧げるセレナーデ

石月煤子
BL
「ところで、そろそろ厳重に閉じられたその足を開いてくれるか」 「足を開くのですか?」 「股開かないと始められないだろうが」 「そ、そうですね、その通りです」 「魔物狩りの報酬はお前自身、そうだろう?」 「…………」 ■俺様最強旅人×健気美人♂神父■

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

神官、触手育成の神託を受ける

彩月野生
BL
神官ルネリクスはある時、神託を受け、密かに触手と交わり快楽を貪るようになるが、傭兵上がりの屈強な将軍アロルフに見つかり、弱味を握られてしまい、彼と肉体関係を持つようになり、苦悩と悦楽の日々を過ごすようになる。 (誤字脱字報告不要)

学園の卒業パーティーで卒業生全員の筆下ろしを終わらせるまで帰れない保険医

ミクリ21
BL
学園の卒業パーティーで、卒業生達の筆下ろしをすることになった保険医の話。 筆下ろしが終わるまで、保険医は帰れません。

王様お許しください

nano ひにゃ
BL
魔王様に気に入られる弱小魔物。 気ままに暮らしていた所に突然魔王が城と共に現れ抱かれるようになる。 性描写は予告なく入ります、冒頭からですのでご注意ください。

【本編完結】おもてなしに性接待はアリですか?

チョロケロ
BL
旅人など滅多に来ない超ド田舎な村にモンスターが現れた。慌てふためいた村民たちはギルドに依頼し冒険者を手配した。数日後、村にやって来た冒険者があまりにも男前なので度肝を抜かれる村民たち。 モンスターを討伐するには数日かかるらしい。それまで冒険者はこの村に滞在してくれる。 こんなド田舎な村にわざわざ来てくれた冒険者に感謝し、おもてなしがしたいと思った村民たち。 ワシらに出来ることはなにかないだろうか? と考えた。そこで村民たちは、性接待を思い付いたのだ!性接待を行うのは、村で唯一の若者、ネリル。本当は若いおなごの方がよいのかもしれんが、まあ仕方ないな。などと思いながらすぐに実行に移す。はたして冒険者は村民渾身の性接待を喜んでくれるのだろうか? ※不定期更新です。 ※ムーンライトノベルズ様でも投稿しています。 ※よろしくお願いします。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

処理中です...