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蛇足の蛇足の蛇足編
14(蛇足の蛇足の蛇足1)
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「ふふっ、ルイの目は夜みたいに綺麗だね。なんだか、見てると吸い込まれそう」
すっかり息も絶え絶えになったルイの頬を両手で包み、美しい宝石の化身のようなユエラが笑う。
真っ黒なだけのルイの瞳を、綺麗だなんて言いながら。
そのまま近付いてきたユエラの唇は、ルイの唇にしっかりと重ねられた。
閉じ損ねた目の中に、赤い海と三日月が飛び込んでくる。
そちらの方が、よほど綺麗だ。
声にならぬ賛辞を胸に、三日月を見るルイの奥、深く入り込んだ舌の動きに行為の再開を感じ取る。
ルイの王は、性欲旺盛。
再び吹き荒れる嵐を前に、ルイは大人しく目を閉じた。
『カラス』
不吉を呼ぶ象徴とされる鳥の名が、ルイにつけられたあだ名だった。
真っ黒な髪に真っ黒な瞳。
誰も彼もが明るく華やかな色をまとう中、誰よりも陰気で不吉な色を持つルイは、周囲から爪弾きにされて育った。
物心ついた時には父も母もなく、ルイは領主が運営する養育院で暮らしていた。
養育院は、何らかの事情で捨てられた子や身寄りのない子を育てる場所で、簡単な教育と生きる術を教えてくれるところだった。
ある程度大きくなったら養育院を出て、領地のために役立つ職業に就くことが、養育院出身の子どもたちに求められる役目だ。
大抵は、男なら騎士を目指し、女なら針子や使用人などを目指すことが多い。
何故なら、それが一番領主の役に立てる職業だと教えられるからだ。
ルイは、あまりしゃべらない子どもだった。
みんなが遊んでいる時間も、黙々と与えられた木刀を振り続けているような子だ。
ただでさえ、遠巻きにされていたルイの側に寄ってくるものはいなかった。
だが、ある時やってきた騎士に、剣の筋がよいと言われ、ルイはその騎士の家に引き取られることになった。
だが、誰よりも真面目で騎士道精神にあふれた義父は、ある日、山賊退治に出かけた先で命を落としてしまった。
人質になっていた少女を守ろうとして、代わりに命を落としたのだという。
残されたのは、ルイと変わらぬ歳の義兄と義母の三人。
義母は、ルイにこのまま居てよいと声をかけてくれたのだが、その瞳は言葉を裏切っていた。
元より、引き取られた時から、義母はあまりよい顔をしていなかった。
ルイを引き取ることは、義父が独断で決めたのだとわかってからは余計に、ルイの居心地がよくなることは一度もなかった。
ルイは丁寧にその申し出を断り、縁を切って領軍の兵士になることを選んだ。
最後に挨拶をする時でさえ、ふたりの目は変わらなかった。
むしろ、いなくなってほっとする、と思われているようだった。
ルイの頭の中には、『カラス』と呼ばれていた頃の記憶が甦っていた。
お前は、不吉なものだと言われたような気がした。
領軍の兵士になったルイは、黙々と鍛練に励んだ。
誰よりも強く、誰かを守って死ねるような、義父のような騎士を目指していた。
家庭人としての義父はよく知らない。
だが、騎士として働く義父は、ルイの憧れだった。
そして、何年もの月日を経て、ようやくルイは騎士となった。
内側に入ってはじめてわかったのだが、騎士団には、ルイが思っていたような清廉な騎士はどこにもいなかった。
多くが跡を継ぐ家のない貴族の子息や商家の子息で、平民出の子どもたちも何人かいたが、ルイのような養育院出身のものになるとどこにもいなかった。
同じ騎士ではあっても、実家の後ろ楯がないものの立場は低く、雑用などを押し付けられた。
貴族の子息は商家の子息に押し付け、商家の子息は平民の子どもに押し付ける。
世界はその繰り返した。
それは、養育院でもよく見かけた風景だった。
恐らく、あの騎士が引き取ってくれていなかったら、その平民の子どもの下にはルイがひとりだけおかれたのだろう。
だが、一時でも貴族であった経歴からか、ルイのことは誰もが腫れ物のように扱い爪弾きにしていた。
誰も彼も、騎士ではない。
ここには騎士がひとりもいない。
ルイには、それが不快だった。
すっかり息も絶え絶えになったルイの頬を両手で包み、美しい宝石の化身のようなユエラが笑う。
真っ黒なだけのルイの瞳を、綺麗だなんて言いながら。
そのまま近付いてきたユエラの唇は、ルイの唇にしっかりと重ねられた。
閉じ損ねた目の中に、赤い海と三日月が飛び込んでくる。
そちらの方が、よほど綺麗だ。
声にならぬ賛辞を胸に、三日月を見るルイの奥、深く入り込んだ舌の動きに行為の再開を感じ取る。
ルイの王は、性欲旺盛。
再び吹き荒れる嵐を前に、ルイは大人しく目を閉じた。
『カラス』
不吉を呼ぶ象徴とされる鳥の名が、ルイにつけられたあだ名だった。
真っ黒な髪に真っ黒な瞳。
誰も彼もが明るく華やかな色をまとう中、誰よりも陰気で不吉な色を持つルイは、周囲から爪弾きにされて育った。
物心ついた時には父も母もなく、ルイは領主が運営する養育院で暮らしていた。
養育院は、何らかの事情で捨てられた子や身寄りのない子を育てる場所で、簡単な教育と生きる術を教えてくれるところだった。
ある程度大きくなったら養育院を出て、領地のために役立つ職業に就くことが、養育院出身の子どもたちに求められる役目だ。
大抵は、男なら騎士を目指し、女なら針子や使用人などを目指すことが多い。
何故なら、それが一番領主の役に立てる職業だと教えられるからだ。
ルイは、あまりしゃべらない子どもだった。
みんなが遊んでいる時間も、黙々と与えられた木刀を振り続けているような子だ。
ただでさえ、遠巻きにされていたルイの側に寄ってくるものはいなかった。
だが、ある時やってきた騎士に、剣の筋がよいと言われ、ルイはその騎士の家に引き取られることになった。
だが、誰よりも真面目で騎士道精神にあふれた義父は、ある日、山賊退治に出かけた先で命を落としてしまった。
人質になっていた少女を守ろうとして、代わりに命を落としたのだという。
残されたのは、ルイと変わらぬ歳の義兄と義母の三人。
義母は、ルイにこのまま居てよいと声をかけてくれたのだが、その瞳は言葉を裏切っていた。
元より、引き取られた時から、義母はあまりよい顔をしていなかった。
ルイを引き取ることは、義父が独断で決めたのだとわかってからは余計に、ルイの居心地がよくなることは一度もなかった。
ルイは丁寧にその申し出を断り、縁を切って領軍の兵士になることを選んだ。
最後に挨拶をする時でさえ、ふたりの目は変わらなかった。
むしろ、いなくなってほっとする、と思われているようだった。
ルイの頭の中には、『カラス』と呼ばれていた頃の記憶が甦っていた。
お前は、不吉なものだと言われたような気がした。
領軍の兵士になったルイは、黙々と鍛練に励んだ。
誰よりも強く、誰かを守って死ねるような、義父のような騎士を目指していた。
家庭人としての義父はよく知らない。
だが、騎士として働く義父は、ルイの憧れだった。
そして、何年もの月日を経て、ようやくルイは騎士となった。
内側に入ってはじめてわかったのだが、騎士団には、ルイが思っていたような清廉な騎士はどこにもいなかった。
多くが跡を継ぐ家のない貴族の子息や商家の子息で、平民出の子どもたちも何人かいたが、ルイのような養育院出身のものになるとどこにもいなかった。
同じ騎士ではあっても、実家の後ろ楯がないものの立場は低く、雑用などを押し付けられた。
貴族の子息は商家の子息に押し付け、商家の子息は平民の子どもに押し付ける。
世界はその繰り返した。
それは、養育院でもよく見かけた風景だった。
恐らく、あの騎士が引き取ってくれていなかったら、その平民の子どもの下にはルイがひとりだけおかれたのだろう。
だが、一時でも貴族であった経歴からか、ルイのことは誰もが腫れ物のように扱い爪弾きにしていた。
誰も彼も、騎士ではない。
ここには騎士がひとりもいない。
ルイには、それが不快だった。
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