運命の堕とし方

うしお

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蛇足の蛇足の蛇足編

15(蛇足の蛇足の蛇足2)

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「カミル様が、別荘へ行かれる。お前も着いていくように」

「かしこまりました」

団長から声をかけられ、ルイは領主の息子であるカミルの護衛につくことになった。
別荘までの道は治安もよく、山賊などの目撃情報もない。
常に気を張るルイに比べ、他の騎士たちの雰囲気はどこかゆるすぎるくらいだ。
団長は、ルイに騎士たちのまとめ役をするように、と言ったが、彼らが新参ものであるルイの言うことを聞くわけがない。
いくら団長が命令した結果であっても、この別荘にその目は少しも届かないのだ。
ただでさえ少ない人数で護衛をしなければならないと言うのに、騎士たちは度々邸を抜け出して近くの街へと降りていく。
元々、人嫌いの気があるカミルは、それを見ても咎めない。
むしろ、人が少ない方を好んでいるから、黙認することにしたらしい。
仕方なくルイは、当番を最低限の人数でまわすことで、双方の不満が爆発しないようにだけ調整を繰り返した。
ルイはもう、自分の信じる騎士道を、誰かと共有するつもりはなかった。
そんなものはない、と言われるのを恐れたのだ。

そんなある日、カミルはとんでもないものを拾ってきた。
正確にいうなら、これは誘拐なのかもしれない。
森の中を歩いていた裸の少女を、保護という名目で邸に連れてきてしまったのだ。
ルイは、カミルに少女の身元を調べるように進言した。
万が一、地元の子どもであるのならすぐに帰すべきだし、何より素性の知れないものを邸におくことには反対だった。
カミルは、領主のひとり息子である。
彼にとって有害な人物になるのなら、側に置いておくわけにはいかない。
だが、カミルからの反発は強く、ルイは驚きに満ちた命令を受けることになった。
そして、それはルイの中にあった騎士道を粉々に打ち砕く最後の楔になったのだった。

よちよちと生まれたての雛のように、廊下を歩く小さな後ろ姿をルイとマーサは追いかけていた。
マーサは、ルイが選んだ少女の世話人だ。
仕事がとても真面目なことと、ルイのように使用人の中で浮いている存在だったことが彼女をこの役目に選んだ理由だ。
少女のことを本気で隠そうと思うなら、最初から話す相手が少ない人間の方がいい。
カミルが領都に引き返してから、少女は邸の中を歩きたがった。
蒼い髪と赤い瞳の美しい少女。
彼女は常に裸体だった。
何度もマーサが服を着せようとしたのだが、どうしても本人が脱いでしまうため、いまではもう諦めている。
幸いなことに、長い髪のおかげである程度は隠れているし、幼いからか胸などの膨らみもほとんどない。
下半身については、かなり戸惑う話だが、これも見なければいいだけの話だ。
ルイがそんなことを考えている間に、少女は廊下の端にたどり着いていた。
廊下の壁に両手をぺたりとつけ、満面の笑みで振り返る少女はとても可愛い。
あまりの可愛さに、目が潰れてしまいそうだった。

「ウィー」

両手を大きくひろげ、よちよちと歩きながらルイを呼ぶ少女の声に、考える間もなく体が動く。
少女は舌ったらずで、ルイのことをウィーと呼び、マーサのことをアーと呼ぶ。
もう何度も繰り返された行為だというのに、ルイは少女を抱き上げる瞬間が一番緊張を強いられる。
変なところに触れないように、しかし、少女の体を落とすことがないように。
そして体は、絶対見ないように、と神経を尖らせた。
腕の中で身動ぎした少女が、ルイの顔をじっと見ても、ルイが視線を下げることはなかった。
見れば、少女の何もかもを見てしまう。

それほど幼くはないはずなのに、少女はまともに歩くことも、話すこともできない。
食事を与えればカトラリーも使わずに手掴みで食べ、マーサが汚れた口や手を拭こうとすれば暴れ出す。
マーサが手掴みで食べられるように、とパンに腸詰めを挟んで渡せば、喜んでかぶりつき、ルイと同じくらいの量を食べる。
何もかもが不思議な少女。
だが、その少女には、ルイもマーサも惑わされる不思議な魅力が宿っていた。
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