使い魔スライムと俺

うしお

文字の大きさ
42 / 109

42、どうして記憶があるんだろう

しおりを挟む
俺はいま、一匹のいもむしだった。
そう、いつか蝶々になることを夢見て、サナギに籠ったいもむしなのだ。
だから、羽化するまでどうか俺を放っておいてください。
……ここにいるのは、いもむしなんです。
数寄屋悠一じゃないんですぅぅ。
だから、放っておいてよぉぉ。

「数寄屋くん、怒っているのかね? 勝手なことをしてすまなかったと思っている。どうか、謝罪をさせてくれないだろうか。君の体のことも心配だし、その、薬も用意してある。出来れば、シャワーを浴びて、すっきりした方が良いと思うのだが、どうだろうか?」

どこかで聞いたことがあるような声の人が、俺のまわりをおろおろしながらうろついている気もするが、いもむしな俺には関係ない。
そうまったく、関係な……いわけないんだよなぁぁぁぁっ!

御前崎教授に、思いきり中出しされたせいか、さっきからお腹が痛くなってきてるし、がんがんちんこを突っ込まれたアナルは、腫れてるみたいで熱っぽい。
変な格好をいっぱいさせられたせいで、体中がばきばきに痛いし、特に腰なんかずきんずきんしてる。
俺が今日、目を覚まして最初にしたことは、綺麗にベッドメイクされていたシーツをひっぺがして自分の体に巻き付けることだった。
どこだかわからなかったけど、そこには自分しかいなかったから、遠慮なくやらせてもらった。
そんなわけで、シーツの中に閉じこもって現実逃避しているというのに、その現実がすぐ真横にいてさっきからしきりに話しかけてきている。

「どうか、出てきて顔を見せてくれないだろうか?」

そんな風に優しく言ってもらったところで、俺はどんな顔で教授に会えばいいんだよ!
頭のよくない俺にだってなぁ、記憶力ってもんはあるんだぞっ!
どこの世界に、職場の上司にちんこを突っ込まれて脱処女したその日に、アナルセックスでいっぱいイかせてなんておねだりかまして、次の日に、ご本人と平気な顔でご対面出来ちゃうやつがいると思うんだよぉおおっ!
そんなん無理に決まってるだろ!
勘弁してくれぇええっ!
なんて、一生懸命気を逸らそうとしても、お腹の中がぐるぐるっと強烈な痛みを訴えてきてる事実はなくなってくれない。
正直、本当に限界だった。

「数寄屋くん、本当にすまない。君の気持ちも確かめないまま、あのような行為に及んでしまったが、私は本気で君のことを、」

「トイレっ、トイレ、いきます!」

俺は、シーツ製のいもむし姿でベッドから飛び降りると、教授がいると思われる方に向かって叫んだ。

「今すぐ、トイレに行かせてください!」

「わかった。任せたまえ」

思いの外、頼もしい返事が返ってきたかと思うと、肩にぽんと手を置かれた。
手を引いてもらおうとのばした手が、宙を切る。

「うぇっ……!」

体がいきなりふわんと浮かんで、まぬけな声が口から出た。
イメージとしては、手でも引いてもらって、トイレに誘導してもらうつもりだったのだが、イケメンな教授はなんといもむしな俺をそのままひょいとお姫様だっこで持ち上げたのだ。
突然の浮遊感に驚いているうちに、教授は俺をだっこしたままひょいひょいっと移動していく。
すぐに、がちゃっとドアの開く音がしたかと思うと、俺はトイレの中に降ろされていた。

「君の名誉のためにも、私は少し離れて待機するので、用が済み次第出てきてくれたまえ。出てきたら、風呂場でもベッドでも、食卓にでも連れていくので何でも言って欲しい。では、一旦、失礼するよ」

いもむしなままの俺はぽかんとしながら、ドアが閉まる音を聞いた。
それから、急いでさなぎのごときシーツからもぞもぞっと抜け出て、自分史上最悪のトイレタイムに突入したのだった。

トイレからようやく出られるようになった時、俺はめちゃくちゃげっそりしていた。
本来、出す側に立つ人間として、天国のようなイメージを持っていた中出しというものが、出される側にとって、地獄の入口になりかねないものなのだということを知ってしまったせいだ。
まさか、こんなことになるものだとは思っていなかった。
二度とやらせるものか、と心に誓う。
絶対に、もうやらせない。
そんな決意も新たに、シーツを体に巻き付けて歩いていたら、目を閉じて壁にもたれている教授を見つけた。
廊下の端にある窓から、朝日がきらきらと差し込んでいる。
くっ、逆光だからだろうか、イケオジがいつもよりもさらに輝いて見えるぜ。

「……ああ。数寄屋くん、もう大丈夫なのかね?」

見ている俺の気配を感じたのか、静かに目を開いた教授は、声をかけながらゆっくりと俺に近付いてくる。
なんだか、俺よりも教授の方がげっそりしているんじゃないだろうか。
少しやつれたような笑顔を見せる教授なんて、違和感しかない。
いつもの高圧的な態度はどこにいってしまったんだろう?
とんでもない勘違いで、俺のアナル処女を奪った責任でも感じているんだろうか。

「よければ、浴室に案内したいのだが、体調の方はどうかね? 濡らしたタオルで全身を拭かせてはもらったが、着替える前にさっぱりしておきたいだろう?」

目が覚めた時、記憶の中にある俺はどろどろだったけれど、そのままじゃなかったから、何らかの後始末はしてくれたんだろうと思っていた。
けど、教授が俺の全身を拭いたっていうのかよ。
面倒なことは全部、人にやらせるものだと思っているようなこの人が、自分で?

びっくりしすぎた俺は、とりあえずシャワーを浴びてリセットすることにした。
考えたって、わからないことはわからないのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...