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再会
③
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荒れていた心を優しさと美味しい料理で一瞬で滑らかにしてくれた彼を好きになった。自然と家に帰ろうって気持ちになっていて、お礼を伝えてから店を後にした。
本当はその後きちんとお礼を言いに行きたかったけど、何故かあの場所に行く勇気が出なくて、それに受験シーズンなこともあって中学を卒業するまで行くことは出来なかった。
高校1年になって時間が取れるようになると、あの喫茶店にもう一度行ってみようという気持ちが湧いてきた。彼に再開したら何を言おうとか、良く見られたくてお気に入りの1番良い服を選んで着たりして、記憶を頼りに喫茶店へと向かった。
緊張する心を押さえつけて扉を開くと、カランカランと軽快な音が耳に届く。前にも聞いたことのあるこの音に胸がじんわりと温かくなる気がした。
「いらっしゃいませ」
聞き覚えのある落ち着いた声が耳に届いて自然とその声の方へと視線を向けた。そこには当然のように彼がいて、その事に何故か酷く安堵している自分がいることに気がついた。
昼間なこともあってお客さんもちらほらと居る。前に座った席には儚げな顔をした男の人が座っていて、仕方ないと諦めて空いている席へと腰掛けた。
「いらっしゃい。メニュー表をどうぞ。注文が決まったらそこのベルを鳴らすか俺に声をかけてな」
彼が席に座った俺にメニュー表を手渡してくれて、それを受け取るとそのままカウンターの方に戻っていこうとする。俺のこと覚えてないのかな?って不安が過って思わず彼のことを呼び止めた。
「あの!」
「なにか分からないことでもあったかい?」
「……そのっ、俺のこと覚えてないですか?」
「えーと……」
「オムライスとホットミルク作ってくれたでしょ。ほらっ、腹空かせて座ってた中坊!」
「……えっ、……ああ!思い出したよ。髪の色が違うから気が付かなかったな。また来てくれたんだな」
そう言って笑顔を見せてくれた彼にほっとする。
(よかった覚えててくれたんだ……)
嬉しくてなにか話そうと口を開きかけた時、おっさんがあの儚げな美人に呼ばれて、俺にごめんねって言ってからその人の方に注文を取りに行ってしまった。
それを寂しく思いながらも、仕方ないかって自分に言い聞かせる。
周りのお客さんが彼のことを名前で呼んでいるのを聞いて、彼が小野田 由利さんって名前なのを知った。
「……小野田……へへ……俺と一緒だ」
驚いたことに小野田さんと俺の苗字は同じ小野田で、俺の名前は小野田 斗真だから、まるで小野田さんと結婚してるみたいだなって思って思わずニヤけてしまった。
手渡されたメニュー表を開いて目に付いたオムライスという文字を指でなぞる。使い古されて少し寄れたメニュー表すらも彼の一部の様に思えて、自分が相当彼のことを好きなんだって自覚した。
「注文は決まった?」
なかなか注文しない俺に小野田さんが声をかけてくれて、慌ててメニュー表を閉じた。
「……ホットミルクが見当たらなくて……」
「ああ、あれはメニューには乗ってないんだよ」
「……あ……そうなんだ。じゃあ、オムライスと、このマスターのおすすめコーヒーを」
「コーヒー飲めるようになったんだ」
ニヤリとからかうみたいに言われて、その見たことの無い表情にカーッと顔が赤くなった。
「もう高校生になったしっ」
「ふはっ、そうかそうか。なら少しだけ待っててな」
くつくつ笑いながらメニューをメモしてカウンターに戻っていく小野田さんの後ろ姿を見つめながら、もう死んじゃいそうって思った。
カフェコートを着た後ろ姿すら様になっていて、なんであの人はあんなに格好いいんだろって口元を抑える。気を緩めたらニヤけてしまいそうだ。
それに、あのホットミルクは俺だけの特別なんだってことも分かって、それが更に心臓のドキドキを増長させるのに一役買っている。
しばらくするとコーヒーとオムライスが運ばれてきて、ごゆっくりって小野田さんが声をかけてくれた。
カウンターに戻って作業を再開し始めた小野田さんの顔を盗み見ながら、オムライスをスプーンで掬って口へと運ぶ。そのオムライスは前に食べたのと全く同じ味がした。
本当はその後きちんとお礼を言いに行きたかったけど、何故かあの場所に行く勇気が出なくて、それに受験シーズンなこともあって中学を卒業するまで行くことは出来なかった。
高校1年になって時間が取れるようになると、あの喫茶店にもう一度行ってみようという気持ちが湧いてきた。彼に再開したら何を言おうとか、良く見られたくてお気に入りの1番良い服を選んで着たりして、記憶を頼りに喫茶店へと向かった。
緊張する心を押さえつけて扉を開くと、カランカランと軽快な音が耳に届く。前にも聞いたことのあるこの音に胸がじんわりと温かくなる気がした。
「いらっしゃいませ」
聞き覚えのある落ち着いた声が耳に届いて自然とその声の方へと視線を向けた。そこには当然のように彼がいて、その事に何故か酷く安堵している自分がいることに気がついた。
昼間なこともあってお客さんもちらほらと居る。前に座った席には儚げな顔をした男の人が座っていて、仕方ないと諦めて空いている席へと腰掛けた。
「いらっしゃい。メニュー表をどうぞ。注文が決まったらそこのベルを鳴らすか俺に声をかけてな」
彼が席に座った俺にメニュー表を手渡してくれて、それを受け取るとそのままカウンターの方に戻っていこうとする。俺のこと覚えてないのかな?って不安が過って思わず彼のことを呼び止めた。
「あの!」
「なにか分からないことでもあったかい?」
「……そのっ、俺のこと覚えてないですか?」
「えーと……」
「オムライスとホットミルク作ってくれたでしょ。ほらっ、腹空かせて座ってた中坊!」
「……えっ、……ああ!思い出したよ。髪の色が違うから気が付かなかったな。また来てくれたんだな」
そう言って笑顔を見せてくれた彼にほっとする。
(よかった覚えててくれたんだ……)
嬉しくてなにか話そうと口を開きかけた時、おっさんがあの儚げな美人に呼ばれて、俺にごめんねって言ってからその人の方に注文を取りに行ってしまった。
それを寂しく思いながらも、仕方ないかって自分に言い聞かせる。
周りのお客さんが彼のことを名前で呼んでいるのを聞いて、彼が小野田 由利さんって名前なのを知った。
「……小野田……へへ……俺と一緒だ」
驚いたことに小野田さんと俺の苗字は同じ小野田で、俺の名前は小野田 斗真だから、まるで小野田さんと結婚してるみたいだなって思って思わずニヤけてしまった。
手渡されたメニュー表を開いて目に付いたオムライスという文字を指でなぞる。使い古されて少し寄れたメニュー表すらも彼の一部の様に思えて、自分が相当彼のことを好きなんだって自覚した。
「注文は決まった?」
なかなか注文しない俺に小野田さんが声をかけてくれて、慌ててメニュー表を閉じた。
「……ホットミルクが見当たらなくて……」
「ああ、あれはメニューには乗ってないんだよ」
「……あ……そうなんだ。じゃあ、オムライスと、このマスターのおすすめコーヒーを」
「コーヒー飲めるようになったんだ」
ニヤリとからかうみたいに言われて、その見たことの無い表情にカーッと顔が赤くなった。
「もう高校生になったしっ」
「ふはっ、そうかそうか。なら少しだけ待っててな」
くつくつ笑いながらメニューをメモしてカウンターに戻っていく小野田さんの後ろ姿を見つめながら、もう死んじゃいそうって思った。
カフェコートを着た後ろ姿すら様になっていて、なんであの人はあんなに格好いいんだろって口元を抑える。気を緩めたらニヤけてしまいそうだ。
それに、あのホットミルクは俺だけの特別なんだってことも分かって、それが更に心臓のドキドキを増長させるのに一役買っている。
しばらくするとコーヒーとオムライスが運ばれてきて、ごゆっくりって小野田さんが声をかけてくれた。
カウンターに戻って作業を再開し始めた小野田さんの顔を盗み見ながら、オムライスをスプーンで掬って口へと運ぶ。そのオムライスは前に食べたのと全く同じ味がした。
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