緑宝は優しさに包まれる〜癒しの王太子様が醜い僕を溺愛してきます〜

天宮叶

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幸せのお裾分け

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ダリウスさんからの謝罪に僕は大丈夫ですとか細く返すことしか出来なかった。

彼とこれ以上一緒に居るのが気まずくて辺りに視線を向けると、僕の乗ってきた馬車が目に止まって、馬車を待たせているので失礼しますと早口に伝えてからダリウスさんの前から立ち去った。

背中に視線を感じていて、少し歩いたあと馬車の目の前で振り返ってみたけれどその時には彼はもう僕に背を向けて中へと戻って行くところで視線は交り合うことは無かった。

「……誰なんだろう」

僕の記憶の奥底に居るダリウスさんはどんな人だっただろうか?

確実に彼と会ったことがある気がするのに良く思い出せない。

馬車に乗り込んで一息つくと、ゆったりとした揺れを感じながら目を閉じた。今日フェリクス様と話したことを何度も何度も頭の中で繰り返して、1人てくすりと笑ってみたり悲しくなってみたりする。

そうしていると、見えるようになった右目から一筋涙が溢れてきて色の変わった皮膚を濡らした。

この顔をフェリクス様に治してもらえば、僕は自信を持って彼の隣に立てるのだろうか……。

そんなことを考えてみるけど、きっとそれは違うって思うんだ。

彼は優しいから、僕が治してほしいと言えば直ぐにそうしてくれるのだと思う。

だけど、彼は言っていた。
断られたのは初めてだって。

それはつまり今も昔も、彼が誰かのためにあの力を使い続けているということで、彼は多分人に利用されることに慣れてしまっている。

僕のこの傷を治してもらうということも、彼を利用することになるんじゃないかなって思う。この傷は自分自身への戒めだけれど、それと同時に彼を利用してまで自分の顔を綺麗にしたいとは思わなかった。

彼は高潔な人だ。まるで聖職者の様に清らかで優しい。けれど、彼は聖職者ではない。

フェリクス様だって心を持った人間だから、利用されて良い気持ちをするはずないんだ。

そこまで考えて、自嘲気味に左頬をあげた。

「フェリクス様のことばっかりだ……」

気がついたら彼のことばかり考えている。

まだ僕達はお互いのことを何も知らないのに、僕の胸の中では既にフェリクス様の存在が大きくなり始めているんだ。

「……会いたい」

さっき会ったばかりなのに、もう会いたくなる。

自分から帰るって言ったくせに、こんなの都合が良すぎるけれど、でもどうしようもなく会いたくて仕方ない。

もしも僕が空を飛ぶ魔法を使えたなら直ぐに彼の元に飛んでいって抱きついてしまうかもしれない。
それに、空間を移動できる魔法があったなら、一瞬で彼の手を取ってまだ見たことの無い素敵な場所に2人で出かけるんだ。

フェリクス様となら自分の顔が醜いことを忘れて時間を過ごすことが出来るから。
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