緑宝は優しさに包まれる〜癒しの王太子様が醜い僕を溺愛してきます〜

天宮叶

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後悔と選択

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会場は今まで見たこともないくらい沢山の人で埋め尽くされていた。

馬車から降りて、フェリクス様の腕を取って一緒に歩きながらぎゅっと唇を噛み締める。

怖い……。

沢山の人の目がフェリクス様と僕のことを見つめている。

微かに手が震えて、それに気がついたフェリクス様が僕に向かって安心させるように微笑みを浮かべてくれた。

「兄上」

「オスマン、それにコーラル嬢も。楽しんでいるかい?」

「そこそこかな」

人当たりのいい笑みを浮かべながらオスマン様が声をかけて来てそちらへと視線を向けると、オスマン様と、その横に寄り添うように並んでいるラルの姿が視界へと入った。

最近気がついたけれど、オスマン様は気を許した相手以外には素の自分を見せないようにしているみたいだ。

華麗にドレスアップしているラルはいつも以上に美しさに磨きがかかっていて、双子の僕でもため息が零れ落ちそうな程に目を奪われる。

「ルダ、改めて婚約おめでとう。嬉しいわ」

ラルが僕の手を取って笑顔でお祝いをしてくれる事になんだか嬉しさで泣きそうになった。

今だに、こんな風にラルと仲良くできていることが夢みたいだって思うんだ。

「挨拶ををして回るのでしょう?」

「うん。フェリクス様と一緒に」

「……そうよね」

「どうかしたの?」

気まづげに僕から視線を逸らしたラルに尋ねると、彼女は言いにくそうに唇を噛み締めた後、意を決したように、お父様が居るのだと教えてくれた。

その言葉にヒヤリと背中に嫌な感覚が走る。

考えてみれば当たり前のことだ。

王太子様の婚約を祝うパーティーに公爵家の当主であるお父様が出席しないわけがないじゃないか。

「ルダ、大丈夫かい?」

フェリクス様が尋ねてきて、ラルも僕のことを心配を宿した瞳で見つめてくる。

どうしよう……。

フェリクス様が居てくれればきっと大丈夫だって信じているけれど、それでもお父様と対峙することに恐怖を覚えてしまう。

前に叩かれた頬がじくりと痛む気がした。

怖い……ものすごく怖い。

「無理しなくてもいいんだよ」

フェリクス様はそう言ってくれる。
ラルだって、フェリクス様の意見に賛成するように頷いてくれた。

でも……

僕はもう逃げたくないんだ。

ずっと逃げてきたから。

どうして愛してくれないんだって嘆いて、悲しんで、本人に突き離されてようやく自分が馬鹿だったのだと気がついた。

自分を幸せに出来るのは他人じゃないんだ。
幸せになりたいなら自分自身で努力して掴みとらないと……。

僕はもう他人に甘えるだけの自分で居たくないから。

「……僕は大丈夫」

だから、怯えてないで前を向かないと。
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