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推しが可愛すぎるんだけど!?
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一通り街見学を終えると、帰り道を進んでいく。
「そういえば花形のリースが飾られている家が何件かあったけど、あれはどういうものなの?」
「もうすぐ花祭りが開催されるから、その準備の一環だろう」
「花祭り?」
「伯爵領で毎年行われる恒例行事だ。自然豊かなこの場所独自の祭りで、持ち寄った花々で街中を飾り、毎年の安寧を祈るんだ。商店も多く出るため、他領や他国からも足を運ぶ者も多い」
「へ~!とても楽しそうだね!」
もしかしたらセイトナイト2に登場するイベントなのかもしれない。それ抜きにしても、是非参加してみたいと思う。ネイトと沢山の思い出を作りたい。
「私達も主催として参加することになる。ノエルが伯爵領に来てから初めての行事だから、を張りすぎることはない」
「うん!ありがとう」
夫夫なのだとしっかりと認めてもらえているような言葉に、ノエルは嬉しさをあふれさせた。ネイトが自分を受け入れてくれるたびに、幸福感が増していく。その幸福を積み上げていくたびに、お互いの距離も縮まっていく気がしていた。
街から出で、待たせてあった馬車に乗り込む。はしゃいで疲れてしまったノエルは、ネイトの隣に腰掛けて船を漕ぎ始める。
「着いたら起こす。寝ていろ」
「……ん。ありがとう」
肩に頭を預けると、額に唇が寄せられる。むず痒くもある多幸感を受け入れながら、ノエルはゆっくりとまぶたを閉じた。
丁度屋敷に到着するころ目を覚ました。肩にあったはずの頭はなぜだかネイトの膝の上に移動している。
「起きたのか」
「……重くなかった?」
「羽のように軽かったよ」
歯の浮くような台詞なのにネイトが言うと様になる。身体を起こしたノエルは、ぐっと伸びをすると「ありがとう」とお礼を伝えた。
疲れていた体も多少楽になっている。今日の夜はぐっすりと眠ることができる気がした。
ノエルの乱れた髪をネイトが整えてくれる。その優しさがくすぐったく感じて緩む唇を引き結んだ。
「疲れただろう。部屋に戻ろう」
「うん」
ファリスのことも気になるけれど、今はネイトと過ごした時間の余韻だけを感じていたい。先に降りたネイトに手を差し出された。その手を掴むとノエルもゆっくり馬車を降りる。階段に足をかけた瞬間、突然馬が身じろぎ馬車が微かに揺れた。その反動で体勢を崩してしまう。
「わっ!」
傾いた体が勢いよくネイトの方へ倒れた。そのまま顔面から胸へ飛び込んでしまう。
けれど鼻を打つ前にネイトが受け止めてくれたおかげで痛みはなかった。
「っ、ありがとう……助かったよ」
驚いて強張っている全身から力を抜くように、へへっと笑みをこぼす。そんなノエルのことを引き離したネイトが、焦ったような表情を向けてきて笑みが引っ込んだ。
「怪我はないのか?足はひねっていないな?鼻は?」
「大丈夫だよ」
「……本当か?」
「ネイトが受け止めてくれたから平気。それに少し揺れただけだからさ」
厳しい表情を御者に向けているネイトを制する。怪我はなかったのだから騒ぎ立てる必要もない。
「大丈夫でしたか!?申し訳な有りません!」
慌てた様子で駆け寄ってきた御者にノエルは笑みを向けながら「平気です」と返す。ネイトは不服そうだったけれど、顔をそらしただけで悪態をつくことはしなかった。それに安堵する。
御者に馬車を片すように促すと戸惑いながら立ち去っていく。それを横目で確認してから、ネイトの手をそっと掴みあやすように撫でた。
「ふふ、タコみたい」
尖っている唇を片手で突く。困ったように眉を寄せたネイトが気まずそうにノエルへ視線を向けてきた。
「すまない。逆に気を使わせてしまった」
「そんなの気にしないで。これからまた仕事をするんでしょう?俺は寝室に戻るけど、途中まで一緒に行こうよ」
「あぁ、そうしよう」
穏やかになった表情を見つめながら笑みをこぼす。やっぱりネイトの笑った顔が好きだと思った。ネイトの過保護な部分も好きだ。けれどいつかその過保護さで身を滅ぼしてしまわないか心配なるときもある。
「行こう」
手を引くと、半歩後ろをついてきてくれる。
屋敷内を歩きながら、ネイトの姿を見ていたいと思った。ペースを緩めて隣に並んでみる。ノエルにとってネイトは常に隣にいてほしい存在。だから前でも後ろでもなく、並んで歩んでいきたい。
「どうしたんだ?」
「隣りに居たいって思ったんだ。こうやってずっと手を繋いでいたい」
「私も同じ気持ちだ」
「そうだと嬉しい」
「嘘じゃない。わかるだろう?」
わかっている。けれどまだときどき不安になってしまう。この穏やかな幸せがどこまでも続いていくことをノエルも願っている。だからこそ不安に思ったり、泣きたくなったりするのかもしれない。
部屋の前につくと、ネイトがノエルの額にキスをしてくれた。気恥ずかしくなって視線をそらそうとしたら、ネイトが頬を差し出してきた。
「もしかしてネイトもしてほしいの?」
「……だめか?」
微かに頬が赤くなっているのがわかった。思わず笑ってしまう。甘え下手の典型のようなネイトが可愛らしくてたまらない。心が猫じゃらしでくすぐられたようにムズムズしてしまう。
少し背伸びをしてネイトの頬に唇を寄せた。心音が廊下に響いている錯覚をしてしまう。こんなにも愛おしいと思える存在はネイトだけだ。
「おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
簡単な挨拶ですら綿菓子のように舌先で蕩けるような甘さを含んでいる。もう手放すことなどできない温もりだ。
部屋に入りゆっくりと扉を閉める。その間、お互いの視線がずれることはなかった。
「そういえば花形のリースが飾られている家が何件かあったけど、あれはどういうものなの?」
「もうすぐ花祭りが開催されるから、その準備の一環だろう」
「花祭り?」
「伯爵領で毎年行われる恒例行事だ。自然豊かなこの場所独自の祭りで、持ち寄った花々で街中を飾り、毎年の安寧を祈るんだ。商店も多く出るため、他領や他国からも足を運ぶ者も多い」
「へ~!とても楽しそうだね!」
もしかしたらセイトナイト2に登場するイベントなのかもしれない。それ抜きにしても、是非参加してみたいと思う。ネイトと沢山の思い出を作りたい。
「私達も主催として参加することになる。ノエルが伯爵領に来てから初めての行事だから、を張りすぎることはない」
「うん!ありがとう」
夫夫なのだとしっかりと認めてもらえているような言葉に、ノエルは嬉しさをあふれさせた。ネイトが自分を受け入れてくれるたびに、幸福感が増していく。その幸福を積み上げていくたびに、お互いの距離も縮まっていく気がしていた。
街から出で、待たせてあった馬車に乗り込む。はしゃいで疲れてしまったノエルは、ネイトの隣に腰掛けて船を漕ぎ始める。
「着いたら起こす。寝ていろ」
「……ん。ありがとう」
肩に頭を預けると、額に唇が寄せられる。むず痒くもある多幸感を受け入れながら、ノエルはゆっくりとまぶたを閉じた。
丁度屋敷に到着するころ目を覚ました。肩にあったはずの頭はなぜだかネイトの膝の上に移動している。
「起きたのか」
「……重くなかった?」
「羽のように軽かったよ」
歯の浮くような台詞なのにネイトが言うと様になる。身体を起こしたノエルは、ぐっと伸びをすると「ありがとう」とお礼を伝えた。
疲れていた体も多少楽になっている。今日の夜はぐっすりと眠ることができる気がした。
ノエルの乱れた髪をネイトが整えてくれる。その優しさがくすぐったく感じて緩む唇を引き結んだ。
「疲れただろう。部屋に戻ろう」
「うん」
ファリスのことも気になるけれど、今はネイトと過ごした時間の余韻だけを感じていたい。先に降りたネイトに手を差し出された。その手を掴むとノエルもゆっくり馬車を降りる。階段に足をかけた瞬間、突然馬が身じろぎ馬車が微かに揺れた。その反動で体勢を崩してしまう。
「わっ!」
傾いた体が勢いよくネイトの方へ倒れた。そのまま顔面から胸へ飛び込んでしまう。
けれど鼻を打つ前にネイトが受け止めてくれたおかげで痛みはなかった。
「っ、ありがとう……助かったよ」
驚いて強張っている全身から力を抜くように、へへっと笑みをこぼす。そんなノエルのことを引き離したネイトが、焦ったような表情を向けてきて笑みが引っ込んだ。
「怪我はないのか?足はひねっていないな?鼻は?」
「大丈夫だよ」
「……本当か?」
「ネイトが受け止めてくれたから平気。それに少し揺れただけだからさ」
厳しい表情を御者に向けているネイトを制する。怪我はなかったのだから騒ぎ立てる必要もない。
「大丈夫でしたか!?申し訳な有りません!」
慌てた様子で駆け寄ってきた御者にノエルは笑みを向けながら「平気です」と返す。ネイトは不服そうだったけれど、顔をそらしただけで悪態をつくことはしなかった。それに安堵する。
御者に馬車を片すように促すと戸惑いながら立ち去っていく。それを横目で確認してから、ネイトの手をそっと掴みあやすように撫でた。
「ふふ、タコみたい」
尖っている唇を片手で突く。困ったように眉を寄せたネイトが気まずそうにノエルへ視線を向けてきた。
「すまない。逆に気を使わせてしまった」
「そんなの気にしないで。これからまた仕事をするんでしょう?俺は寝室に戻るけど、途中まで一緒に行こうよ」
「あぁ、そうしよう」
穏やかになった表情を見つめながら笑みをこぼす。やっぱりネイトの笑った顔が好きだと思った。ネイトの過保護な部分も好きだ。けれどいつかその過保護さで身を滅ぼしてしまわないか心配なるときもある。
「行こう」
手を引くと、半歩後ろをついてきてくれる。
屋敷内を歩きながら、ネイトの姿を見ていたいと思った。ペースを緩めて隣に並んでみる。ノエルにとってネイトは常に隣にいてほしい存在。だから前でも後ろでもなく、並んで歩んでいきたい。
「どうしたんだ?」
「隣りに居たいって思ったんだ。こうやってずっと手を繋いでいたい」
「私も同じ気持ちだ」
「そうだと嬉しい」
「嘘じゃない。わかるだろう?」
わかっている。けれどまだときどき不安になってしまう。この穏やかな幸せがどこまでも続いていくことをノエルも願っている。だからこそ不安に思ったり、泣きたくなったりするのかもしれない。
部屋の前につくと、ネイトがノエルの額にキスをしてくれた。気恥ずかしくなって視線をそらそうとしたら、ネイトが頬を差し出してきた。
「もしかしてネイトもしてほしいの?」
「……だめか?」
微かに頬が赤くなっているのがわかった。思わず笑ってしまう。甘え下手の典型のようなネイトが可愛らしくてたまらない。心が猫じゃらしでくすぐられたようにムズムズしてしまう。
少し背伸びをしてネイトの頬に唇を寄せた。心音が廊下に響いている錯覚をしてしまう。こんなにも愛おしいと思える存在はネイトだけだ。
「おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
簡単な挨拶ですら綿菓子のように舌先で蕩けるような甘さを含んでいる。もう手放すことなどできない温もりだ。
部屋に入りゆっくりと扉を閉める。その間、お互いの視線がずれることはなかった。
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