31 / 53
推しの父親はまさかの!?
しおりを挟む
真夜中にふと眼を覚ました。起き上がり何気なく窓の外を見ると、いつも煌煌と輝いている月が赤く染まっていることに気がついた。不吉な感覚がして窓から目をそらす。
「にゃーん」
そのとき閉めていたはずの窓が独りでに開き、部屋の中に黒猫が飛び込んできた。驚きに目を見開き、羽織っていた毛布を強くつかむ。寝室は上階にあり、よじ登って来るには高すぎる。それなのに危うげなく窓から姿を表した黒猫の姿に違和感を覚えた。
「どうやって登ってきたんだ?」
黒猫に手を伸ばすとベッドの上に飛び乗ってきた。いつもすぐに逃げていくというのに、今はまるでノエルに用でもあるかのように錯覚してしまう。
膝下で立ち止まった黒猫が赤い瞳を真っ直ぐに見つめてくる。ノエルは、どうしてだかその赤い瞳を見たことがある気がした。
「君は……」
手を伸ばそうとしたとき、黒猫が胸元に飛びついてきた。勢いに負けて仰向けに体を倒す。
「お前が神の祝福を受けた人間か」
低く響くようなずっしりとした男性の声が聞こえてきて耳を疑う。小さな牙をむき出しにした黒猫が、ノエルの胸元に仁王立ちして見下ろしてくる。
金縛りにあったかのように体は微動だにしない。
「君が喋ってるの?俺のことを知っているの?」
贈り物のことはネイトにしか話していない。それにこの状況もうまく飲み込めないでいた。
「お前が助けた黒猫だといえばわかるだろう。我は魔王カエラム。この世界を混沌に陥れる者だ」
「あのときの黒猫?魔王カエラムってセイントナイトの……」
混沌に陥れる者という言葉は、セイトナイトで何百回も目にしたことのある魔王のお決まりの台詞だ。赤い瞳にウェーブを描くような黒髪と褐色が特徴的なイケオジといった風貌が人気の悪役。それが魔王カエラムだった。
「魔王はエアリス達に倒されたはずなのに……」
「たしかに我はあの者等に敗れ塵となって消える運命であった。だが最後の魔力を使い魂を別の世界へ飛ばすことで生きながらえたのだ。そのときちょっとした時空の歪みが発生した。このセイントナイトの世界と地球の間に繋がりができたのだ」
「じゃあ君が日本にいたのは魂が日本に飛ばされたからってこと?」
「そうだ。我は力の大半を失い猫として暮らすことを余儀なくされた。だが失った力も時が経てば少しずつだが取り戻すことができる。我は再びこの世界を混沌へ導く準備を進めていた。だがその途中でお前が我を助けようと飛び出してきたのだ。本来お前は死ぬはずではない魂だった。神も時空を歪めた我のことを監視していたからな。お前に贈り物を与えたのは防げなかった罪滅ぼしというところだろう」
神様が転生させてくれた根本的な理由を知りたいとずっと思っていた。けれど魔王のせいだとは欠片も予想していなかったため驚きが隠せない。
それにノエルにとってこの世界はゲームの中の世界であって、時空の歪みだとか繋がりだとか言われてもピンとこなかった。
「歪みが生じてこの世界と日本が繋がったことはなんとなくわかったんだけど、そもそもこの世界は俺にとってゲームの中の世界なんだ」
「世界に歪みが生じたとき、神はセイントナイトの世界を地球に溶け込ませる方法を模索した。魔法や魔物が存在するこの世界が認知されれば混乱は避けられない。それを避けるために取った手段がセイントナイトという世界そのものをゲームの中の世界という形で馴染ませるというものだった。お前がこの世界に転生させられたのは相性が良かったのだろうな。おかげでお前の転生にまぎれて我もこの世界に戻ることができた」
一気に聞かされた事実がノエルの頭の中で暴れまわっていた。理解しようとしても難しくてよくわからない。けれど一つだけはっきりとしているのは、この世界は現実で目の前の黒猫はれっきとした魔王だということ。
「ずっと機会があったはずなのにどうして今更正体を明かしたの?」
「お前を殺さなければ魔王の誕生が阻止されてしまうからだ」
「ネイトのこと知っているの?」
「当たり前だ。あれは我の息子だからな」
情報過多で頭痛がしてきそうだ。けれど魔王の息子なら、次期魔王に選ばれたことも納得できる。それでも突然衝撃的なことを聞かされすぎたせいでノエルはひどく混乱していた。
「にゃーん」
そのとき閉めていたはずの窓が独りでに開き、部屋の中に黒猫が飛び込んできた。驚きに目を見開き、羽織っていた毛布を強くつかむ。寝室は上階にあり、よじ登って来るには高すぎる。それなのに危うげなく窓から姿を表した黒猫の姿に違和感を覚えた。
「どうやって登ってきたんだ?」
黒猫に手を伸ばすとベッドの上に飛び乗ってきた。いつもすぐに逃げていくというのに、今はまるでノエルに用でもあるかのように錯覚してしまう。
膝下で立ち止まった黒猫が赤い瞳を真っ直ぐに見つめてくる。ノエルは、どうしてだかその赤い瞳を見たことがある気がした。
「君は……」
手を伸ばそうとしたとき、黒猫が胸元に飛びついてきた。勢いに負けて仰向けに体を倒す。
「お前が神の祝福を受けた人間か」
低く響くようなずっしりとした男性の声が聞こえてきて耳を疑う。小さな牙をむき出しにした黒猫が、ノエルの胸元に仁王立ちして見下ろしてくる。
金縛りにあったかのように体は微動だにしない。
「君が喋ってるの?俺のことを知っているの?」
贈り物のことはネイトにしか話していない。それにこの状況もうまく飲み込めないでいた。
「お前が助けた黒猫だといえばわかるだろう。我は魔王カエラム。この世界を混沌に陥れる者だ」
「あのときの黒猫?魔王カエラムってセイントナイトの……」
混沌に陥れる者という言葉は、セイトナイトで何百回も目にしたことのある魔王のお決まりの台詞だ。赤い瞳にウェーブを描くような黒髪と褐色が特徴的なイケオジといった風貌が人気の悪役。それが魔王カエラムだった。
「魔王はエアリス達に倒されたはずなのに……」
「たしかに我はあの者等に敗れ塵となって消える運命であった。だが最後の魔力を使い魂を別の世界へ飛ばすことで生きながらえたのだ。そのときちょっとした時空の歪みが発生した。このセイントナイトの世界と地球の間に繋がりができたのだ」
「じゃあ君が日本にいたのは魂が日本に飛ばされたからってこと?」
「そうだ。我は力の大半を失い猫として暮らすことを余儀なくされた。だが失った力も時が経てば少しずつだが取り戻すことができる。我は再びこの世界を混沌へ導く準備を進めていた。だがその途中でお前が我を助けようと飛び出してきたのだ。本来お前は死ぬはずではない魂だった。神も時空を歪めた我のことを監視していたからな。お前に贈り物を与えたのは防げなかった罪滅ぼしというところだろう」
神様が転生させてくれた根本的な理由を知りたいとずっと思っていた。けれど魔王のせいだとは欠片も予想していなかったため驚きが隠せない。
それにノエルにとってこの世界はゲームの中の世界であって、時空の歪みだとか繋がりだとか言われてもピンとこなかった。
「歪みが生じてこの世界と日本が繋がったことはなんとなくわかったんだけど、そもそもこの世界は俺にとってゲームの中の世界なんだ」
「世界に歪みが生じたとき、神はセイントナイトの世界を地球に溶け込ませる方法を模索した。魔法や魔物が存在するこの世界が認知されれば混乱は避けられない。それを避けるために取った手段がセイントナイトという世界そのものをゲームの中の世界という形で馴染ませるというものだった。お前がこの世界に転生させられたのは相性が良かったのだろうな。おかげでお前の転生にまぎれて我もこの世界に戻ることができた」
一気に聞かされた事実がノエルの頭の中で暴れまわっていた。理解しようとしても難しくてよくわからない。けれど一つだけはっきりとしているのは、この世界は現実で目の前の黒猫はれっきとした魔王だということ。
「ずっと機会があったはずなのにどうして今更正体を明かしたの?」
「お前を殺さなければ魔王の誕生が阻止されてしまうからだ」
「ネイトのこと知っているの?」
「当たり前だ。あれは我の息子だからな」
情報過多で頭痛がしてきそうだ。けれど魔王の息子なら、次期魔王に選ばれたことも納得できる。それでも突然衝撃的なことを聞かされすぎたせいでノエルはひどく混乱していた。
48
あなたにおすすめの小説
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
呪われた辺境伯は、異世界転生者を手放さない
波崎 亨璃
BL
ーーー呪われた辺境伯に捕まったのは、俺の方だった。
異世界に迷い込んだ駆真は「呪われた辺境伯」と呼ばれるレオニスの領地に落ちてしまう。
強すぎる魔力のせいで、人を近づけることができないレオニス。
彼に触れれば衰弱し、最悪の場合、命を落とす。
しかしカルマだけはなぜかその影響を一切受けなかった。その事実に気づいたレオニスは次第にカルマを手放さなくなっていく。
「俺に触れられるのは、お前だけだ」
呪いよりも重い執着と孤独から始まる、救済BL。
となります。
だから、悪役令息の腰巾着! 忌み嫌われた悪役は不器用に僕を囲い込み溺愛する
モト
BL
2024.12.11~2巻がアンダルシュノベルズ様より書籍化されます。皆様のおかげです。誠にありがとうございます。
番外編などは書籍に含まれませんので是非、楽しんで頂けますと嬉しいです。
他の番外編も少しずつアップしたいと思っております。
◇ストーリー◇
孤高の悪役令息×BL漫画の総受け主人公に転生した美人
姉が書いたBL漫画の総モテ主人公に転生したフランは、総モテフラグを折る為に、悪役令息サモンに取り入ろうとする。しかしサモンは誰にも心を許さない一匹狼。周囲の人から怖がられ悪鬼と呼ばれる存在。
そんなサモンに寄り添い、フランはサモンの悪役フラグも折ろうと決意する──。
互いに信頼関係を築いて、サモンの腰巾着となったフランだが、ある変化が……。どんどんサモンが過保護になって──!?
・書籍化部分では、web未公開その後の番外編*がございます。
総受け設定のキャラだというだけで、総受けではありません。CPは固定。
自分好みに育っちゃった悪役とのラブコメになります。
転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?
米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。
ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。
隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。
「愛してるよ、私のユリタン」
そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。
“最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。
成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。
怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか?
……え、違う?
【完結】流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。
時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!?
※表紙のイラストはたかだ。様
※エブリスタ、pixivにも掲載してます
◆この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」もあります。そちらも気になったら覗いてみてください。
◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います
神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。
篠崎笙
BL
保育園の調理師だった凛太郎は、ある日事故死する。しかしそれは神界のアクシデントだった。神様がお詫びに好きな加護を与えた上で異世界に転生させてくれるというので、定年後にやってみたいと憧れていたスローライフを送ることを願ったが……。
2026/01/09 加筆修正終了
【完結】義妹(いもうと)を応援してたら、俺が騎士に溺愛されました
未希かずは(Miki)
BL
第13回BL大賞 奨励賞 受賞しました。
皆さまありがとうございます。
「ねえ、私だけを見て」
これは受けを愛しすぎて様子のおかしい攻めのフィンと、攻めが気になる受けエリゼオの恋のお話です。
エリゼオは母の再婚により、義妹(いもうと)ができた。彼には前世の記憶があり、その前世の後悔から、エリゼオは今度こそ義妹を守ると誓う。そこに現れた一人の騎士、フィン。彼は何と、義妹と両想いらしい。まだ付き合えていない義妹とフィンの恋を応援しようとするエリゼオ。けれどフィンの優しさに触れ、気付けば自分がフィンを好きになってしまった。
「この恋、早く諦めなくちゃ……」
本人の思いとはうらはらに、フィンはエリゼオを放っておかない。
この恋、どうなる!? じれキュン転生ファンタジー。ハピエンです。
番外編。
リナルド×ガルディア。王族と近衞騎士の恋。
――忠誠を誓った相手を、愛してはいけないと思っていた。切ない身分差、年の差の恋。恋の自覚は、相手が成人してからになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる