モブに転生した俺。推しキャラのハピエンを拝むまで夜も眠れない

天宮叶

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推しの父親はまさかの!?

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真夜中にふと眼を覚ました。起き上がり何気なく窓の外を見ると、いつも煌煌と輝いている月が赤く染まっていることに気がついた。不吉な感覚がして窓から目をそらす。


「にゃーん」


 そのとき閉めていたはずの窓が独りでに開き、部屋の中に黒猫が飛び込んできた。驚きに目を見開き、羽織っていた毛布を強くつかむ。寝室は上階にあり、よじ登って来るには高すぎる。それなのに危うげなく窓から姿を表した黒猫の姿に違和感を覚えた。


「どうやって登ってきたんだ?」


 黒猫に手を伸ばすとベッドの上に飛び乗ってきた。いつもすぐに逃げていくというのに、今はまるでノエルに用でもあるかのように錯覚してしまう。

 膝下で立ち止まった黒猫が赤い瞳を真っ直ぐに見つめてくる。ノエルは、どうしてだかその赤い瞳を見たことがある気がした。


「君は……」


 手を伸ばそうとしたとき、黒猫が胸元に飛びついてきた。勢いに負けて仰向けに体を倒す。


「お前が神の祝福を受けた人間か」


 低く響くようなずっしりとした男性の声が聞こえてきて耳を疑う。小さな牙をむき出しにした黒猫が、ノエルの胸元に仁王立ちして見下ろしてくる。

 金縛りにあったかのように体は微動だにしない。


「君が喋ってるの?俺のことを知っているの?」


 贈り物のことはネイトにしか話していない。それにこの状況もうまく飲み込めないでいた。


「お前が助けた黒猫だといえばわかるだろう。我は魔王カエラム。この世界を混沌に陥れる者だ」

「あのときの黒猫?魔王カエラムってセイントナイトの……」


 混沌に陥れる者という言葉は、セイトナイトで何百回も目にしたことのある魔王のお決まりの台詞だ。赤い瞳にウェーブを描くような黒髪と褐色が特徴的なイケオジといった風貌が人気の悪役。それが魔王カエラムだった。


「魔王はエアリス達に倒されたはずなのに……」

「たしかに我はあの者等に敗れ塵となって消える運命であった。だが最後の魔力を使い魂を別の世界へ飛ばすことで生きながらえたのだ。そのときちょっとした時空の歪みが発生した。このセイントナイトの世界と地球の間に繋がりができたのだ」

「じゃあ君が日本にいたのは魂が日本に飛ばされたからってこと?」

「そうだ。我は力の大半を失い猫として暮らすことを余儀なくされた。だが失った力も時が経てば少しずつだが取り戻すことができる。我は再びこの世界を混沌へ導く準備を進めていた。だがその途中でお前が我を助けようと飛び出してきたのだ。本来お前は死ぬはずではない魂だった。神も時空を歪めた我のことを監視していたからな。お前に贈り物を与えたのは防げなかった罪滅ぼしというところだろう」


 神様が転生させてくれた根本的な理由を知りたいとずっと思っていた。けれど魔王のせいだとは欠片も予想していなかったため驚きが隠せない。

 それにノエルにとってこの世界はゲームの中の世界であって、時空の歪みだとか繋がりだとか言われてもピンとこなかった。


「歪みが生じてこの世界と日本が繋がったことはなんとなくわかったんだけど、そもそもこの世界は俺にとってゲームの中の世界なんだ」

「世界に歪みが生じたとき、神はセイントナイトの世界を地球に溶け込ませる方法を模索した。魔法や魔物が存在するこの世界が認知されれば混乱は避けられない。それを避けるために取った手段がセイントナイトという世界そのものをゲームの中の世界という形で馴染ませるというものだった。お前がこの世界に転生させられたのは相性が良かったのだろうな。おかげでお前の転生にまぎれて我もこの世界に戻ることができた」


 一気に聞かされた事実がノエルの頭の中で暴れまわっていた。理解しようとしても難しくてよくわからない。けれど一つだけはっきりとしているのは、この世界は現実で目の前の黒猫はれっきとした魔王だということ。


「ずっと機会があったはずなのにどうして今更正体を明かしたの?」

「お前を殺さなければ魔王の誕生が阻止されてしまうからだ」

「ネイトのこと知っているの?」

「当たり前だ。あれは我の息子だからな」


 情報過多で頭痛がしてきそうだ。けれど魔王の息子なら、次期魔王に選ばれたことも納得できる。それでも突然衝撃的なことを聞かされすぎたせいでノエルはひどく混乱していた。

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