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推しを狙う勢力が現れたんだけど……
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ノエルから離れたネイトがキスをしようとしてきた。
「あれ?この間お会いしませんでしたか?」
そのとき人混みから姿を現した人物が声をかけてきて動きを止める。声のした方へ視線を向けると、ファリスが立っていて驚く。後ろに目深かにフードを被っている背の高い男性がついてきていた。
「ファリス……」
「どうしても今日噴水広場に来たかったんです。まさか二人でいるなんて思いませんでした」
「俺とネイトはここで休憩していたんだ」
二人での部分の言い方が気になったけれど気づかないふりをした。
もしも本当にファリスがノエルと同じように転生者だとすると、ここに足を運んだということは花祭りの最中に噴水広場でネイトとの好感度イベントが行われるはずだったのかもしれない。
けれど、すでにシナリオは大きく変わってしまっている。それを知らないファリスは、ネイトの横にいるはずのないノエルが座っていることに驚いたはずだ。
「ネイト様この前はあまりお話できませんでしたよね。僕、あなたとお話してみたいんです。きっと僕ならあなたの気持ちをわかってあげられます」
「話したこともないお前に私のなにがわかるというんだ」
「お気づきですよね?僕とあなたは同じです。だから僕はあなたの苦しみを取り除いてあげられます。癒やしの能力はまだ発言していないけれど、あんな能力がなくたって僕とネイト様ならきっと、、」
「やけに馴れ馴れしいな。私はお前に共感も同情も求めていない。不快極まりない」
久しぶりにネイトの底冷えするような言葉を聞いたノエルは、自分も同じようなことを言われたことがあると苦笑いをこぼしかけた。
冷たい言葉を浴びせられたファリスは傷つき動揺する素振りをみせたものの、すぐに笑みを浮かべなおす。
「その冷たい態度は孤独であるほうが周りに迷惑をかけないと思っているネイト様なりの優しさだとわかっています。出会いや花祭りのイベントに少しだけ齟齬《そご》が出てしまったけれど、そんなの僕とネイト様のストーリーには影響なんてしませんよね」
「言いたいことがわからない。だが一つだけ言っておく。なにを期待しているかわからないが、私にはノエルがいる。彼は私の最高の理解者だ。わかったのなら立ち去れ」
「っ、おかしい!そんなのおかしい!だって僕は主人公なんだ!今日は好感度イベントの第ニ幕のはずなのにっ!」
流れるように美しい白髪を掻き乱したファリスが声を荒らげる。後ろに控えていた男がなだめるように背を擦ると、息を荒げたファリスが手を下ろす。
「す、少し取り乱してしまったみたいです。ごめんなさい。でもその子は偽物なんですよ?僕に成り代わろうとしているんです。目を覚ましてください。本物は僕なんです」
「話しにならないな。ノエル行くぞ」
立ち上がったネイトがノエルの手を引く。
戸惑いながら立ち上がり、ファリスへと視線を向けた。
ギリッと歯ぎしりの音が聴こえて来そうなくらい歯を食いしばったファリスが、ノエルのことを睨みつけてきた。
視線をそらせず赤い瞳を見返してしまう。そのとき一瞬、ファリスほ瞳が光ったような気がした。
その刹那──
「目を閉じろ」
ネイトの手のひらがノエルの目元を覆い視界が遮られた。
魔術で小さな氷の弾丸を生み出したネイトが、ファリスに向かってそれを放った。後ろに控えていた男がマントでその氷を弾く。どうやら魔術のかけられたマントのようだ。
衝撃でフードが取れて男の顔が晒された。
長い耳に、浅黒い肌と細い瞳孔の真紅の瞳。短い黒髪が動いたことで微かに揺れていた。
(魔族!?)
指の隙間から見えた姿に驚く。どうしてファリスが魔族と一緒にいるのかわからない。けれど友好的ではないことは見て取れた。
「ノエルに呪いの魔術をかけようとしたな」
「すごいです。さすが次期魔王様。惚れ惚れするほどの才能と強さです」
周囲はまだ騒ぎに気がついていない。幸いなことに人通りもまばらだ。
不用意に騒ぎを起こせないためネイトも最小限の魔術しか使うことができない。それに魔族が現れたことが知れ渡れば、街中は大混乱に陥ってしまう。
「なんで……ファリスは主人公なんだよね?なんで魔族と手を組んでいるの?」
「その質問をするってことは、まさかメインストーリーを知らないの?」
「それは……」
販売日に事故にあったことが悔やまれる。
まさかセイントナイト2には魔族と手を組むストーリーがあるのだろうか?
「魔族と人間の共存か敵対かを選択するんだ。僕は敵対を選択したってだけだよ」
「つまり君は人間の敵で、ネイトが魔王になることを望んでいるってこと?」
「そうだよ。だから君が邪魔なんだ」
戦慄するほどに美しい笑みを向けられて言葉を失ってしまう。
カエラムが言っていた魔王化を推し進めようとする勢力は魔族のことだったのだとようやくわかった。そして主人公は半魔族であり、人間の敵。
ネイトの魔王化を阻止しようとしているノエルにとっても敵だ。
それがとても悲しいことのように感じて胸が苦しくなった。
勝手に主人公は人間の味方なのだと思っていたからだ。エアリスのように強い力で人々を救うのだと……。
セイントナイト2についての公式情報には主人公のプロフィールなどは一切載っていなかった。大まかなストーリーすら開示されていなかったため、突きつけられた現実に戸惑いが大きい。
「ノエル下がっていろ」
「でもネイト、俺はっ……」
「魔族が関わっている以上、私達だけでは手に負えない。それに相手はノエルのことを狙っている」
無理矢理ネイトの背に隠された。
変わらない笑みを浮かべ続けるファリスは、前に出てきたネイトを見て更に笑みを深める。
「ネイト様と僕が幸せに暮らせる世界を創り上げるのが僕の夢です。だから早く堕ちてきてくださいね」
花弁が二人の間をふわりと舞った。
その瞬間、魔族の男が魔術を唱える。それと同時にファリスと男はその場から跡形もなく姿を消してしまった。
「あれ?この間お会いしませんでしたか?」
そのとき人混みから姿を現した人物が声をかけてきて動きを止める。声のした方へ視線を向けると、ファリスが立っていて驚く。後ろに目深かにフードを被っている背の高い男性がついてきていた。
「ファリス……」
「どうしても今日噴水広場に来たかったんです。まさか二人でいるなんて思いませんでした」
「俺とネイトはここで休憩していたんだ」
二人での部分の言い方が気になったけれど気づかないふりをした。
もしも本当にファリスがノエルと同じように転生者だとすると、ここに足を運んだということは花祭りの最中に噴水広場でネイトとの好感度イベントが行われるはずだったのかもしれない。
けれど、すでにシナリオは大きく変わってしまっている。それを知らないファリスは、ネイトの横にいるはずのないノエルが座っていることに驚いたはずだ。
「ネイト様この前はあまりお話できませんでしたよね。僕、あなたとお話してみたいんです。きっと僕ならあなたの気持ちをわかってあげられます」
「話したこともないお前に私のなにがわかるというんだ」
「お気づきですよね?僕とあなたは同じです。だから僕はあなたの苦しみを取り除いてあげられます。癒やしの能力はまだ発言していないけれど、あんな能力がなくたって僕とネイト様ならきっと、、」
「やけに馴れ馴れしいな。私はお前に共感も同情も求めていない。不快極まりない」
久しぶりにネイトの底冷えするような言葉を聞いたノエルは、自分も同じようなことを言われたことがあると苦笑いをこぼしかけた。
冷たい言葉を浴びせられたファリスは傷つき動揺する素振りをみせたものの、すぐに笑みを浮かべなおす。
「その冷たい態度は孤独であるほうが周りに迷惑をかけないと思っているネイト様なりの優しさだとわかっています。出会いや花祭りのイベントに少しだけ齟齬《そご》が出てしまったけれど、そんなの僕とネイト様のストーリーには影響なんてしませんよね」
「言いたいことがわからない。だが一つだけ言っておく。なにを期待しているかわからないが、私にはノエルがいる。彼は私の最高の理解者だ。わかったのなら立ち去れ」
「っ、おかしい!そんなのおかしい!だって僕は主人公なんだ!今日は好感度イベントの第ニ幕のはずなのにっ!」
流れるように美しい白髪を掻き乱したファリスが声を荒らげる。後ろに控えていた男がなだめるように背を擦ると、息を荒げたファリスが手を下ろす。
「す、少し取り乱してしまったみたいです。ごめんなさい。でもその子は偽物なんですよ?僕に成り代わろうとしているんです。目を覚ましてください。本物は僕なんです」
「話しにならないな。ノエル行くぞ」
立ち上がったネイトがノエルの手を引く。
戸惑いながら立ち上がり、ファリスへと視線を向けた。
ギリッと歯ぎしりの音が聴こえて来そうなくらい歯を食いしばったファリスが、ノエルのことを睨みつけてきた。
視線をそらせず赤い瞳を見返してしまう。そのとき一瞬、ファリスほ瞳が光ったような気がした。
その刹那──
「目を閉じろ」
ネイトの手のひらがノエルの目元を覆い視界が遮られた。
魔術で小さな氷の弾丸を生み出したネイトが、ファリスに向かってそれを放った。後ろに控えていた男がマントでその氷を弾く。どうやら魔術のかけられたマントのようだ。
衝撃でフードが取れて男の顔が晒された。
長い耳に、浅黒い肌と細い瞳孔の真紅の瞳。短い黒髪が動いたことで微かに揺れていた。
(魔族!?)
指の隙間から見えた姿に驚く。どうしてファリスが魔族と一緒にいるのかわからない。けれど友好的ではないことは見て取れた。
「ノエルに呪いの魔術をかけようとしたな」
「すごいです。さすが次期魔王様。惚れ惚れするほどの才能と強さです」
周囲はまだ騒ぎに気がついていない。幸いなことに人通りもまばらだ。
不用意に騒ぎを起こせないためネイトも最小限の魔術しか使うことができない。それに魔族が現れたことが知れ渡れば、街中は大混乱に陥ってしまう。
「なんで……ファリスは主人公なんだよね?なんで魔族と手を組んでいるの?」
「その質問をするってことは、まさかメインストーリーを知らないの?」
「それは……」
販売日に事故にあったことが悔やまれる。
まさかセイントナイト2には魔族と手を組むストーリーがあるのだろうか?
「魔族と人間の共存か敵対かを選択するんだ。僕は敵対を選択したってだけだよ」
「つまり君は人間の敵で、ネイトが魔王になることを望んでいるってこと?」
「そうだよ。だから君が邪魔なんだ」
戦慄するほどに美しい笑みを向けられて言葉を失ってしまう。
カエラムが言っていた魔王化を推し進めようとする勢力は魔族のことだったのだとようやくわかった。そして主人公は半魔族であり、人間の敵。
ネイトの魔王化を阻止しようとしているノエルにとっても敵だ。
それがとても悲しいことのように感じて胸が苦しくなった。
勝手に主人公は人間の味方なのだと思っていたからだ。エアリスのように強い力で人々を救うのだと……。
セイントナイト2についての公式情報には主人公のプロフィールなどは一切載っていなかった。大まかなストーリーすら開示されていなかったため、突きつけられた現実に戸惑いが大きい。
「ノエル下がっていろ」
「でもネイト、俺はっ……」
「魔族が関わっている以上、私達だけでは手に負えない。それに相手はノエルのことを狙っている」
無理矢理ネイトの背に隠された。
変わらない笑みを浮かべ続けるファリスは、前に出てきたネイトを見て更に笑みを深める。
「ネイト様と僕が幸せに暮らせる世界を創り上げるのが僕の夢です。だから早く堕ちてきてくださいね」
花弁が二人の間をふわりと舞った。
その瞬間、魔族の男が魔術を唱える。それと同時にファリスと男はその場から跡形もなく姿を消してしまった。
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