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なんで?
恥ずかしさの後には疑問だけが残っていて僕は涙目で柊木君を見つめた。
「…ひ、柊木君…なんで…。」
どうしてキスなんかしたんだろう。
柊木君はゆかりが好きで、でもゆかりは僕で、僕は…男で…。
ちゃんと伝えたはずなのに柊木君の行動の意味が分からなくて頭がごちゃごちゃした。
「…遠坂がゆかりちゃんかもしれないって思った時にめちゃくちゃ悩んで俺なりにずっと考えてたけど、結局、遠坂縁っていう人自身が好きなんだって思ったんだ。だからキスした。次は遠坂が質問に答えて?」
柊木君の言葉に胸が苦しくなって、涙が零れてきた。嬉しくて、ほんとうに受け入れて貰えたのか、これが現実なのか信じられなくて胸を押さえて溢れる涙を空いている袖で拭う。
「ぼ、僕…、じょ、女装してること言ったら、ひ、っ、ひい、柊木君が悲しむって思って…。でも、どんどん好きになって…それで…き、きき、き、きらわれたくなくてっ…。」
吃音も嗚咽も激しくてなんて言ってるか自分にすらよく分からないけれど思ったことをたどたどしく口に出していく。それを柊木君はずっと優しい目をして聞いてくれていてそれが余計に僕の涙腺を緩めるのに一役買っている。
柊木君が立ち上がって僕の隣に座ると頭を撫でてくれて、背中を優しくさすってくれる。
段々落ち着いてきてゴシゴシ目を擦ると柊木君が僕の頬にキスをしてきた。
「…な、なっ…。」
さっきのキスの時も思ったけれど誰かに見られたらどうするんだろう…。
心配になってキョロキョロ周りを見てみたけど僕達以外に生徒は居ないみたいだった。
「ねえ、この間話した遠坂の好きな人って俺のこと?」
「…う、うん…。」
「うわあ…なんか、知らなかったとはいえ凄い恥ずかしいっていうか、あぁ、めっちゃ嬉しい。」
顔を手で覆って悶えてるかと思ったら急に抱きついてきて驚いた。
僕があわあわしていると柊木君がくすくす笑いだして僕は動きを止めてぽかんとした顔で彼を見た。
「なんか、やっと本当の意味で遠坂と結ばれた気がする。」
甘い甘い、愛おしい人を見てる時の顔で柊木君がそう言ってきて、僕は目を見開いた。
友達に向けるものとは違う、ずっとゆかりだけが独占していた笑顔を彼は今僕だけに向けてくれている事実にじんわりと胸の奥が暖かくなる感覚がした。
ずっと欲しかった。
ずっと向けて欲しかった。
その笑顔さえあれば僕は辛いことがあっても平気だって思えた。
僕の体に回された腕の熱を感じて、やっと彼が僕を受け入れてくれたことが本当だったって飲み込むことができ始める。
だから、やっと…
やっと言えるんだ。
ゆかりとしてじゃなくて、男の遠坂縁としてやっと彼に伝えられるんだ。
「…大好き…っ。」
恥ずかしさの後には疑問だけが残っていて僕は涙目で柊木君を見つめた。
「…ひ、柊木君…なんで…。」
どうしてキスなんかしたんだろう。
柊木君はゆかりが好きで、でもゆかりは僕で、僕は…男で…。
ちゃんと伝えたはずなのに柊木君の行動の意味が分からなくて頭がごちゃごちゃした。
「…遠坂がゆかりちゃんかもしれないって思った時にめちゃくちゃ悩んで俺なりにずっと考えてたけど、結局、遠坂縁っていう人自身が好きなんだって思ったんだ。だからキスした。次は遠坂が質問に答えて?」
柊木君の言葉に胸が苦しくなって、涙が零れてきた。嬉しくて、ほんとうに受け入れて貰えたのか、これが現実なのか信じられなくて胸を押さえて溢れる涙を空いている袖で拭う。
「ぼ、僕…、じょ、女装してること言ったら、ひ、っ、ひい、柊木君が悲しむって思って…。でも、どんどん好きになって…それで…き、きき、き、きらわれたくなくてっ…。」
吃音も嗚咽も激しくてなんて言ってるか自分にすらよく分からないけれど思ったことをたどたどしく口に出していく。それを柊木君はずっと優しい目をして聞いてくれていてそれが余計に僕の涙腺を緩めるのに一役買っている。
柊木君が立ち上がって僕の隣に座ると頭を撫でてくれて、背中を優しくさすってくれる。
段々落ち着いてきてゴシゴシ目を擦ると柊木君が僕の頬にキスをしてきた。
「…な、なっ…。」
さっきのキスの時も思ったけれど誰かに見られたらどうするんだろう…。
心配になってキョロキョロ周りを見てみたけど僕達以外に生徒は居ないみたいだった。
「ねえ、この間話した遠坂の好きな人って俺のこと?」
「…う、うん…。」
「うわあ…なんか、知らなかったとはいえ凄い恥ずかしいっていうか、あぁ、めっちゃ嬉しい。」
顔を手で覆って悶えてるかと思ったら急に抱きついてきて驚いた。
僕があわあわしていると柊木君がくすくす笑いだして僕は動きを止めてぽかんとした顔で彼を見た。
「なんか、やっと本当の意味で遠坂と結ばれた気がする。」
甘い甘い、愛おしい人を見てる時の顔で柊木君がそう言ってきて、僕は目を見開いた。
友達に向けるものとは違う、ずっとゆかりだけが独占していた笑顔を彼は今僕だけに向けてくれている事実にじんわりと胸の奥が暖かくなる感覚がした。
ずっと欲しかった。
ずっと向けて欲しかった。
その笑顔さえあれば僕は辛いことがあっても平気だって思えた。
僕の体に回された腕の熱を感じて、やっと彼が僕を受け入れてくれたことが本当だったって飲み込むことができ始める。
だから、やっと…
やっと言えるんだ。
ゆかりとしてじゃなくて、男の遠坂縁としてやっと彼に伝えられるんだ。
「…大好き…っ。」
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