囚われの白夜〜狼王子は身代わり奴隷に愛を囁く〜

天宮叶

文字の大きさ
3 / 42
身代わりと狼王子

3

しおりを挟む
城の中に入ると、僕と同じように着飾った人達が案内人に連れられながら何処かに向かうのが見えて慌ててその後ろへと並んだ。

一体どこに行くのだろう……。

不安を抱えながら進み続けていると、本殿を通り過ぎて離宮へと辿り着いた。

一人一人指定された部屋へと通されていき、僕も言われた部屋の中へと入る。

使用人なのか、小綺麗な格好をした女性が部屋で待機しており軽食を用意してくれていた。

「私は二ゼルと申します。今後貴方様のお世話をさせて頂くことになりますのでお見知り置きください」

「……あの……僕はこれからどうなるのでしょうか」

僕の質問に二ゼルさんは驚いた顔をした後に、お聞きではないのですか?と質問を返してきた。

「……なにも聞かされないままここに連れてこられたので……」

「……込み入った事情がある様ですね。では僭越ながら私がご説明をさせて頂きます」

「……お願いします」

椅子に座るように促されて言う通りに腰掛けると、二ゼルさんが説明を始めてくれた。

「ここに来る間に他の方々もお見かけしたと思いますが、貴女方はライル王子のお相手をするために集められたのです」

「……お相手……?」

「夜伽のことでございますよ」

「っ!……どうして僕達が選ばれたんですか」

「貴女方がΩだからです。貴族である貴方様はご存知だと思われますが、ライル王子は‪α‬でありながらΩの香りに興奮を覚えない体質なのです。第1王子であるライル王子にはお世継ぎが必要ですが、その体質故に御子を授かることが出来ないのです。そのため全貴族からΩの男女を集め1日ごとに御相手を変えて夜伽を行うことを王が命じられたのですよ」

彼女の説明にサーっと血の気が引いていく。

僕がこの場所に連れてこられた理由も、ご主人様がアティカ様の代わりだと言った理由も全部分かってしまったから。

僕は身代わりにされたんだ……。

アティカ様はΩだ。
けれど、アティカ様を溺愛しているご主人様が彼女にこんな娼婦の様な真似事をさせるわけがない。

だから、唯一あの屋敷の中でアティカ様以外にΩ性の僕がこの場所に連れてこられた。

それも身分を偽って……。

目の前が真っ暗になる感覚がして、頭が酷く痛む。

大男の、喋るとボロが出るという言葉が頭を過っていた。

それはそうだ。
僕は産まれた時から奴隷なんだ。

貴族の常識も立ち居振る舞いも何も分からない。

バレたらどうなる……。
罰は免れないだろう。

ご主人様にも迷惑がかかる。

下手すれば死刑も有り得るかもしれない……。

身体から力が抜けて、椅子から滑り落ちて床に尻もちを着いた。そんな僕に二ゼルが慌てて駆け寄ってくる。

「大丈夫ですか!?」

「……分からない……」

今の僕にはそう答えることしか出来なかったんだ。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

悪役令息(Ω)に転生したので、破滅を避けてスローライフを目指します。だけどなぜか最強騎士団長(α)の運命の番に認定され、溺愛ルートに突入!

水凪しおん
BL
貧乏男爵家の三男リヒトには秘密があった。 それは、自分が乙女ゲームの「悪役令息」であり、現代日本から転生してきたという記憶だ。 家は没落寸前、自身の立場は断罪エンドへまっしぐら。 そんな破滅フラグを回避するため、前世の知識を活かして領地改革に奮闘するリヒトだったが、彼が生まれ持った「Ω」という性は、否応なく運命の渦へと彼を巻き込んでいく。 ある夜会で出会ったのは、氷のように冷徹で、王国最強と謳われる騎士団長のカイ。 誰もが恐れるαの彼に、なぜかリヒトは興味を持たれてしまう。 「関わってはいけない」――そう思えば思うほど、抗いがたいフェロモンと、カイの不器用な優しさがリヒトの心を揺さぶる。 これは、運命に翻弄される悪役令息が、最強騎士団長の激重な愛に包まれ、やがて国をも動かす存在へと成り上がっていく、甘くて刺激的な溺愛ラブストーリー。

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話

降魔 鬼灯
BL
 ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。  両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。  しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。  コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。  

処理中です...