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悩みと提案

9〜ライル視点〜

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アズハルの隣に横になると、起こさないように引き寄せて胸の中に閉じ込めた。

こうして閉じ込めておかなければ、フラフラと何処かに去っていきそうで心配になる時がある。

「お前は俺の希望だ」

戦の最中、奴隷と関わるうちに俺は奴隷制について疑問を持つようになっていた。

幼い頃より奴隷は人ではないと教えこまれてきたが、貴族と奴隷に身分以外の違いなど存在しないのだと戦の最中に学んだ。

そのために俺が奴隷制度の撤廃を提案したのは、国王が病で倒れるほんの数ヶ月前の事だった。

俺と第2王子であるリダの確執は国内では有名な話だが、元の原因を辿れば奴隷制度撤廃の話が原因なのだ。

リダは奴隷を物のように扱う。
いや、リダだけでは無い。

この国には奴隷制度が根付き、民はそれを当たり前のように受け入れている。

そうすることで自分は奴隷よりはマシだと思いたいのかもしれないが、俺に言わせれば、他人を落として安堵感を得るなど見苦しいだけだ。

現在、俺とリダの権力争いは均衡を保ち、どちらに傾いてもおかしくない状況にある。

中立を保つ2つの貴族が権力争いの鍵を握るが、こちら側へ引き入れるのは容易では無いだろう。

だが、俺にも運が傾いてきたようだ。

「どうやらあいつはお前のことが気になるようだ」

アズハルの項へと唇を寄せて口元に弧を描く。

まさかアレとアズハルに面識があるとは思っていなかったが、思わぬ誤算というものだろう。

アズハルが俺の手の内にある今、あいつは中立を保つかこちら側に手を貸す他無いはずだ。だが、そう決めつけて行動するのは危ないことも分かっている。

(さて、宰相様はどう出るか。見物だな)

アズハルを利用する形になるが仕方ないだろう。

「ぅ、ん……」

アズハルが身じろいで俺の方へと身体の向きを変えて、顔が目の前に来る。

あどけない無防備なその顔を見ていると自然と笑みが漏れた。

自分がこんな風に凪いだ心で誰かに微笑む日が来るなど想像すらしておらず、なんとも不思議な心地になる。

だが、悪くない。

アズハルの淡い桃色に色付く唇に触れるだけの口付けをして、目を閉じた。
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