囚われの白夜〜狼王子は身代わり奴隷に愛を囁く〜

仲違いの事情

2

「リダ様、人の情とは死しても消えることは無いのです。貴方も第2王子として人の上に立つ立場にあるのですからそれを学ばれてください」

「はあ～？うるさいな」

リダ様の怒りを顕にした声にもカイス様は動じない。

「そこまでにしておきましょう」

口論が続く二人の間にご主人様が割って入ると、穏やかな声音で制止する。

僕の心臓はドクドクと鳴っていて、息を殺しながら成り行きを見守るしかない。

「どうやら先ほどから誰かに見られているようだ」

ご主人様の視線が僕の方へと向かっていて、それにビクリと肩を震わせた。

ゆっくりとこちらへと向かってくるご主人様の鋭い瞳から視線をそらすことが出来ず、逃げ出すことも出来ない。

逃げれば殺される！と奴隷としての深く根付いた考えが僕の足をその場に縫い止めている。

「何をなされているのかな」

あと数歩で僕の姿をご主人様が視界に捕らえるというところで、通路の方から歩いてきた中年の男性に話しかけられてご主人様が歩みを止めた。