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挨拶回り

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エドの屋敷に着くと、話を通りしてくれていたのかすんなり中に通して貰えた。執務室に入ると、エドとジェイデンが地図を広げて話し合いをしていた。

「やあ、来たんだね。丁度、魔物について話し合いをしていたところだよ」
「なんかあったのか?」
「ダークナイトドラゴンから逃げてきた魔物が、森の近くにある村付近まで進行していたようでね。ギルドに討伐依頼を出そうと思っているんだよ。ダンジョンに魔物が戻っていっているとはいえ、まだ完全に落ち着いてはいないからね」
「そっか。俺たちが手伝えることがあれば言ってくれよな」

エドもジェイデンも忙しそうだけど、どこかスッキリとした顔をしている。ダークナイトドラゴンの討伐は過去の因縁を完全に断ち切るきっかけになったんだと思うんだ。

「ツバサ、君の存在は不思議だね。君のおかげでようやく前へ進むことができそうだ」
「エド王子の言う通りだ。ツバサありがとう」

改めて二人からお礼を言われると気恥しい。頬を指先で掻きながら、へへって笑を零してしまう。

「どういたしまして!」

手を差し出すと、エドとジェイデンが手を重ねてくれた。きっかけはクリスだったけど、今は:ツバサ(俺)として二人と友情を築けている気がするんだ。

「君たちがツバサの名前を呼ぶことを許可した覚えはないのだけど」

繋いでいた手が無理矢理解かれたかと思ったら、ダリウスの背後に隠されてしまった。相変わらずの過保護さに苦笑いが漏れる。エドとジェイデンも呆れたような表情を浮かべているじゃないか。

「お前な~……」

頭にチョップを食らわせてやるけど、ダリウスには効いてないのか素知らぬ顔をしている。すぐに周りに噛み付く癖は治して欲しい。

「相変わらずの忠犬ぶりだね」
「お褒めに預かり光栄ですよ」

嫌味ったらしいダリウスの言葉に、エドが綺麗な笑みを浮かべる。絶対怒ってる。

「:ツバサ|は私の友人だからね。君に:ツバサ|の名前を呼ぶ事を制限される権利はないだろう。なんたって:ツバサ|から許可を貰っているからね。あまり過保護だと:ツバサ|に嫌われてしまうよ」

わざとらしく俺の名前を連呼するエド。ダリウスの眉がぴくりと動いて、微かに眉間にシワが寄っているのがわかる。
笑顔で睨み合う二人を、俺とジェイデンがハラハラと見守る。この二人は本当に相性が悪いんだろうな。

「やめろって。ほら帰るぞ。エド、ごめんな!また来るから」
「はぁ、可愛いツバサがそういうのなら仕方ないね」

苛立ちを抑えるようにダリウスが息を吐き出す。エドとジェイデンに挨拶して、急いで屋敷から出た。
ダリウスの説得は大変だけど、エドの所には一人で来た方が精神衛生上絶対良いな。

「すぐ喧嘩するのやめろよな」
「彼とは合わないんだよ」

少し怒り口調で言ったから、垂れた犬耳が見える。目もいつもより潤んでいる気がする。
その顔をされると怒れなくなるんだよな。絶対わかっていてやってるだろ。

「もういいよ。早く帰ろうぜ。明日からまた冒険者業再開だ!」

ダリウスの手を引いて走り出す。
この手をしっかりと握り続けていこう。そうやってダリウスとの未来を一生築いていくんだ。

「帰ったら兎肉だぞー!」

ニカッと満面の笑みを浮かべる。
そんな俺に、ダリウスが幸せそうに微笑み返してくれた。
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