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挨拶回り

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朝日が登り始める頃、ふと目を覚ました。
隣を見るとダリウスの姿が見当たらない。起き上がると、屋敷内をあてもなくさまよう。けれど、執務室やリビングにもダリウスが居る気配はなかった。
多分外出しているのだろう。
ふと、一箇所だけ心当たりのある場所が浮かぶ。

(そういえばダークナイトドラゴンのことを報告していない人がもう一人居たよな)

寝間着から冒険者用の装備に着替えると、いつも使う剣や道具だけ持って屋敷を飛び出した。
太陽が少しずつ顔を出してきている。その光に照らされながら、坑道を駆け続けた。日が完全に忘れ上り切る頃に、ようやく目的の場所に辿り着いた。

大通りの脇に大量の花束が飾られた場所。ダリウスがその目の前に佇み花束をじっと見つめていた。

「ダリウス」

声をかけると、彼が俺の方を見て無表情が緩む。近寄ると、俺の手を取ったダリウスが笑みを浮かべた。

「本当はこんな場所ではなくて、きちんと墓を建ててあげるべきだったんだ。でも、俺がクリスの身体を屋敷へと持って帰ったからできなかった」
「……後悔してんのか?」
「きっとこれを言うとクリスに怒られてしまうかもしれないけれど……後悔はしていないよ。ツバサと出会えたからね」

俺も自分の選択に後悔なんてしていない。ダリウスも同じ気持ちだってわかって嬉しい。

「それにしても、よく俺の居場所がわかったね」
「そりゃあ、俺とお前は運命の番だからな」
上手いことを言ってみたけど、ただの勘だ。
「あとさ、大切な友人にダークナイトドラゴンを討伐したことを伝えてなかったからさ」

クリスは命懸けで皆を守った。そして、俺とダリウスも命懸けでクリスの思いに応えたんだ。きっとそれはクリスにも伝わっているはずだ。

「クリス。俺はツバサとしての人生を全力で歩んでいく。だからもしも、お前が俺と同じように生まれ変わることがあったとしたら、その人生を自分らしく歩んで欲しい」

こんなこと言わなくてもクリスなら大丈夫だと思うけどさ。

「ダリウスには言ってなかったけど、この世界で目覚めたあの日、声が聞こえたんだよ。必死に震える声で、起きてくれって叫んでた。その声につられて俺は目を覚ましたんだ」
「……」
「魂が引き合わせてくれたんだと思う。ダリウス、俺はお前に出会えて最っっ高に幸せだよ」

繋いだ手から熱が伝わってくる。ダリウスの心がそのまま流れ込んできているみたいだ。空を見上げても見えないはずなのに、キラリと一等星が応えるように煌めいたのが見えた気がした。
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