転生エルフによる900年の悠久無双記~30歳で全属性魔法、100歳で古代魔術を習得。残り900年、全部無双!~

榊原モンショー

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第15話 転生エルフ(100)、友と再会する。

「悠長に出てくる魔獣を倒してる場合じゃない。魔族の復活が近いかもしれないってことをね」

 俺の目の前の衛兵は、「何言ってんだこいつ?」と首を傾げて言う。

「魔族ったらあれだろ、獣人族と一緒に滅んでった亜人種だろ? 絵本の中の童話みてーな存在じゃないか。ははぁ、さては小僧、ガリウス様のファンだな。最近いるんだ。ガリウス様のお顔が見たいがためにやってくる奴がな。門番歴5年の俺でもまだ遠目でしかお会いしたことないんだぞ」

 シッシッと。手をはね除ける衛兵に、「リース様!」と今にも飛びかかってしまいそうな勢いで眼を飛ばすのはミノリだ。

「それに、そこの女は名無しの女アノニマスだろう。野良冒険者も良い所だ。名前も所属も経歴も分からん奴を入れるなんてのはもっての外だ」

「ぐ、ぐぬぬぬぬぬ……! わ、わたしのことは何と言おうと構いません。ですがリース様を侮辱するならばこのミノリ・・・が絶対に許しません!」

「ハッ。なおさらこんな野蛮人と小僧がガリウス様のお知り合いだとは思えんな。門番兵歴5年。ここを通した者の顔は全員覚えているが、貴様等の顔には全く覚えはない。貴様等こそガリウス様の知り合いを名乗るくらいならばもう少し――」

 衛兵とミノリが互いに眼を飛ばし合っていた、その時だった。
 
「……何やら表が騒がしいと思っていたら、リース様ではありませんか!」

 鈍重な扉がいとも簡単に開いたかと思うと、中から1人の青年が出てきた。
 まだまだ少年みの残っていた表情はもう立派な青年となっている。
 7年でこんなに顔つきって変わるものなんだ。

「あ、ガリウスくんだ。やっほ。何年かぶりだね」

「7年ぶりですよ! あの時の約束、覚えていてくださってたんですね!」

 ひらひらと手を振ると、門番兵歴5年の男は「この領地で一番偉い方が、様付けで……?」と俺とガリウスくんを交互に見て眼を丸くしている。

 俺はガリウスくんの方へと歩いて行きながら、思わずふと笑みが浮かぶ。

「小僧って呼んでくれてた所悪いんだけど、実はもう100歳越えてるんだよ」

 前世では老け顔だと言われていたけど、今世ではまさかそこまで童顔に見られているとも思っていなかったかな。
 若く見られるのは悪い気分ではないけどね。
 
●●●

「ふわぁ……綺麗な景色……」

 ガルランダ辺境伯領主邸は、まさしく城のような作りをしていた。
 ミノリは興味津々に、辺りをキョロキョロと幼子のように見回している。

 ガリウスくんが直接管理するという4階層目では国境を守る城壁とその向こうに広がる山岳が、反対を見渡せば城下町が一望できる。
 城壁側に敵の侵入があればすぐさま動けるし、街の様子もいつでも観察できる仕組みだ。

「り、リース様って本当にガリウス様のお知り合いなんですね……? 一族以外が辺境伯領主邸の高階層に招かれるなんて、聞いたことがありませんよ!」

「俺が初めてヒト族と話したのは、それこそガリウスくんの親父さんのグリレットさんだ。昔はよく遊びに来てくれたんだよね、グリレットさん」

「グリレット!? グリレットって、あのグリレット・ガルランダ様ですか!?」

 ミノリは心底驚いた様子で食ってかかる。

「そ、そんなに有名なのか?」

「有名も何も、武神・グリレットと言えば城壁にやってくる魔獣を20年もの間単身で撃破し続けた豪傑ですよ。辺境伯史上最も腕っ節の強かった人物と言われていますから! 家督をガリウス様に譲った5年前からは、隠居生活を楽しんでいるとお聞きしていますが……。グリレット様とはどういうご関係なんでしょう!?」

「……友達、かな?」

 グリレットさんと俺の仲は、もう数十年にも渡る。
 ここ二十年近くは会えていないが、俺にこの世界の人間社会について教えてくれたのはグリレットさんだった。

 ――へぇ、リース様が森の外に出るための試験、ね。

 一番最後にグリレットさんに会った時、彼は言った。

『んじゃ、森の外に出るってなればまずウチに寄ってみてくれよ。いつもこっちばっか案内してもらっちゃ寝覚めが悪ぃ。オレんトコもまあまあ自慢の土地なんだ。ここの世界しか知らないエルフ様にとっても面白いと思うぜ?』

『じゃあグリレットさんは俺が森の外に出るまでとてもじゃないけど死ねないね』

『リース様が最短で外の世界に出てくるならの話だな。オレがくたばる前で頼むぜ。約束だ』

 あの時の約束を覚えているかは定かではないが、それでも俺が森の外に出てきて一番最初に来る場所はその時に決まっていたのだ。

「なるほど、父はそんな約束を……」

「こうして森の外に出られるようになったからこそ、案内してもらおうと思ってね。約束通り最短の年月で来たからさ」

「父もよくリース様のことを話してくれてましたよ。リース様が森の外に出てきたら、一緒に地酒を飲んで、バカやって、世俗に染めてやるって意気込んでましたから」

「良かった、約束を忘れられてたらどうしようかと思ってたよ」

 俺の言葉に、ガリウスくんは申し訳なさそうに苦笑いを浮かべる。

「……はは、じゃあ本当に父は罪なヒトだ。リース様との約束を忘れるどころか放り出して、独りで眠り続けているんだから」

 ガリウスくんはとある一室の扉を開く。
 そこには、ベッドの上で無数の管に繋がれて痩せ細った男の姿があった。
 おそらく意識は無い。
 黒く太かった髪は、細い白髪に。
 骨と筋肉で角張っていた顔には弱々しい無数の皺が刻まれていた。
 筋骨隆々としていた体つきは骨と皮だけに。いつも俺の前で大斧を持って力強い演舞をしてくれていた姿は見る影もない。

「……あれが、グリレットさんかい?」

 俺の問いにガリウスくんは小さく頷いた。

「父があの状態になって5年になります。医者も匙を投げて、余命幾ばくもない状態でした。最後にリース様が来て下さって、父も喜んでいると思います」

 時間の流れは、俺が思っていたよりも遙かに残酷に過ぎ去っていたのだった。
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