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第29話 転生エルフ(105)、誘導尋問する。
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エルフ族にとって、瘴気と魔族は天敵だ。
ユグドラシルの神木は外界の濁った魔法や瘴気などを全て寄せ付けない役割を果たしていた。
食べ物一つ取ってみてもそうだ。
故郷にいた時には瘴気を含んだ食べ物の存在など有り得なかった。
だが外の世界に来てみれば、どの食べ物にも多かれ少なかれ瘴気は存在していた。
外界の人間たちは幼い頃から多少の瘴気を体内に取り込んでいるが、俺たちエルフは瘴気に充てられる経験など一度もなかった。
清みきった環境で暮らし続けているエルフにとって、目の前に出会う瘴気の凝集塊のようなものに悪寒を感じるのは本能とも言える。
故郷のエルフ達には何としても近付かせたくはないね。
『オマエ、エルフダナ。ヒキコモッテ木ノ実を食ベテイレバ良イモノヲ、ナゼコンナトコロニイルノダ?』
魔猪から立ち込める黒いもやは、俺たちに向けて威嚇するかのように瘴気の波動を送ってくる。
「おわっ……た……」
呆然と立ち尽くすジン君は、既に奴の放つ瘴気に圧倒されているようだった。
俺も100年修行していなかったら卒倒していたかもしれない。
「俺は生きた証を残したくて外にまで出張ってきただけのエルフだ。ふと歩いていたらキミ達に追われていた冒険者がいたから通りがかってみたまで。どうも初めまして――とは言ったものの、キミにはどうも見覚えがあるな」
『ホウ?』
「グリレットさんの記憶の中に出てきた声だ。魔力の質からしても、あの時の魔族の隣にいた魔獣だろう?」
目の前の黒いもやが大きく揺らいだ。
グリレットさんの記憶の中に出ていた時よりも遙かにもやが薄くなっている。
「おそらく闇属性の魔術の一種だろうが、実態のない思念体のままで十年も過ごしていられることには興味があるね。とはいえ、その存在も前と比べればずいぶんと霞んできてるみたいだけど」
俺の言葉を否定せずに、黒いもやは再び魔猪の中へと入り込んだ。
『聖地林奥深くの霊廟に封印させられていた我が魂。現世に呼び戻された上で、魔王直属の部下から魔力の供給を受けているにすぎないのだ』
魔猪の蹄で大地を掘る姿は、苛つきを隠せないでいるように見えた。
なるほど古い文献の中で似たような事案を見たことがある。
世界各地では、その土地土地で暴れ回りすぎた神獣が封印されている《霊廟》なるものがいくつか存在しているという。
魔王にしてもそうだが、倒せないほど強いならば封印をというのが基本的なスタンスのようだ。
目の前の魔獣も、元はそうして封印された神獣の内の一人なのだろう。
身体はとうに朽ち果てたが、魂だけは霊廟の中に存在していた。
そこで魔族は肉体を魔力で精製し、魂と肉体を無理矢理繋げる闇属性魔術の一種、肉体創成魔法を用いたというわけだ。
もちろんこの世の理から逸脱しかけたこの魔法のことだ。消費する魔力量も相当になる。
魔王直属の部下とやらはそこらの魔獣に神獣の魂を仮止めし、魔王が復活すると同時に元の姿に戻れる、という算段か。
もう少し踏み込んでみるとしよう。魔法が効いてる今なら何を聞いても答えるはずだ。
「ほう。じゃ、魔王復活はいつなんだ?」
『今まで捧げた贄や封印の効力の低下もある。復活まではあと3年ほどと聞いているのだ。奴の魔力程度では魔獣の体内に思念体として存在するに止まってはいるが、魔王復活の暁には奴の魔力で我は完全体となる手はずなのだ。こんな自由の利かない身体ともおさらばなのだ』
「――なるほど、それまでにキミのキミたり得る思念体が魔猪に取り込まれていなければ、の話だろうけどね」
俺の言葉に、魔猪の牙がピクリと動いた。
「分かっているんだろう。グリレットさん襲撃から十年。いくら魔族から魔力供給を受けていたとしても、それは元のキミの身体じゃない。この世に止まっている以上、思念体よりも肉体の方が強いってことに。魔王が復活してキミの身体が一瞬の間だけ元に戻るのが先か、キミの思念体が魔猪に取り込まれ消滅し、諸共に本物の獣と化すのが先か。どっちだろうね」
『――ぅぅぅうるさいのだ!!』
激情に身を任せた魔猪は、めいっぱいの魔力をその牙に注ぎ込んで文字通り猪突猛進を掛けてくる。
最初の頃の冷静を保った化けの皮はとうに剥がれきっていた。
防御結界を使ってその身体ごといなしてみせれば、魔猪は制御を失ったように木に激突していった。
ユグドラシルの神木は外界の濁った魔法や瘴気などを全て寄せ付けない役割を果たしていた。
食べ物一つ取ってみてもそうだ。
故郷にいた時には瘴気を含んだ食べ物の存在など有り得なかった。
だが外の世界に来てみれば、どの食べ物にも多かれ少なかれ瘴気は存在していた。
外界の人間たちは幼い頃から多少の瘴気を体内に取り込んでいるが、俺たちエルフは瘴気に充てられる経験など一度もなかった。
清みきった環境で暮らし続けているエルフにとって、目の前に出会う瘴気の凝集塊のようなものに悪寒を感じるのは本能とも言える。
故郷のエルフ達には何としても近付かせたくはないね。
『オマエ、エルフダナ。ヒキコモッテ木ノ実を食ベテイレバ良イモノヲ、ナゼコンナトコロニイルノダ?』
魔猪から立ち込める黒いもやは、俺たちに向けて威嚇するかのように瘴気の波動を送ってくる。
「おわっ……た……」
呆然と立ち尽くすジン君は、既に奴の放つ瘴気に圧倒されているようだった。
俺も100年修行していなかったら卒倒していたかもしれない。
「俺は生きた証を残したくて外にまで出張ってきただけのエルフだ。ふと歩いていたらキミ達に追われていた冒険者がいたから通りがかってみたまで。どうも初めまして――とは言ったものの、キミにはどうも見覚えがあるな」
『ホウ?』
「グリレットさんの記憶の中に出てきた声だ。魔力の質からしても、あの時の魔族の隣にいた魔獣だろう?」
目の前の黒いもやが大きく揺らいだ。
グリレットさんの記憶の中に出ていた時よりも遙かにもやが薄くなっている。
「おそらく闇属性の魔術の一種だろうが、実態のない思念体のままで十年も過ごしていられることには興味があるね。とはいえ、その存在も前と比べればずいぶんと霞んできてるみたいだけど」
俺の言葉を否定せずに、黒いもやは再び魔猪の中へと入り込んだ。
『聖地林奥深くの霊廟に封印させられていた我が魂。現世に呼び戻された上で、魔王直属の部下から魔力の供給を受けているにすぎないのだ』
魔猪の蹄で大地を掘る姿は、苛つきを隠せないでいるように見えた。
なるほど古い文献の中で似たような事案を見たことがある。
世界各地では、その土地土地で暴れ回りすぎた神獣が封印されている《霊廟》なるものがいくつか存在しているという。
魔王にしてもそうだが、倒せないほど強いならば封印をというのが基本的なスタンスのようだ。
目の前の魔獣も、元はそうして封印された神獣の内の一人なのだろう。
身体はとうに朽ち果てたが、魂だけは霊廟の中に存在していた。
そこで魔族は肉体を魔力で精製し、魂と肉体を無理矢理繋げる闇属性魔術の一種、肉体創成魔法を用いたというわけだ。
もちろんこの世の理から逸脱しかけたこの魔法のことだ。消費する魔力量も相当になる。
魔王直属の部下とやらはそこらの魔獣に神獣の魂を仮止めし、魔王が復活すると同時に元の姿に戻れる、という算段か。
もう少し踏み込んでみるとしよう。魔法が効いてる今なら何を聞いても答えるはずだ。
「ほう。じゃ、魔王復活はいつなんだ?」
『今まで捧げた贄や封印の効力の低下もある。復活まではあと3年ほどと聞いているのだ。奴の魔力程度では魔獣の体内に思念体として存在するに止まってはいるが、魔王復活の暁には奴の魔力で我は完全体となる手はずなのだ。こんな自由の利かない身体ともおさらばなのだ』
「――なるほど、それまでにキミのキミたり得る思念体が魔猪に取り込まれていなければ、の話だろうけどね」
俺の言葉に、魔猪の牙がピクリと動いた。
「分かっているんだろう。グリレットさん襲撃から十年。いくら魔族から魔力供給を受けていたとしても、それは元のキミの身体じゃない。この世に止まっている以上、思念体よりも肉体の方が強いってことに。魔王が復活してキミの身体が一瞬の間だけ元に戻るのが先か、キミの思念体が魔猪に取り込まれ消滅し、諸共に本物の獣と化すのが先か。どっちだろうね」
『――ぅぅぅうるさいのだ!!』
激情に身を任せた魔猪は、めいっぱいの魔力をその牙に注ぎ込んで文字通り猪突猛進を掛けてくる。
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