転生エルフによる900年の悠久無双記~30歳で全属性魔法、100歳で古代魔術を習得。残り900年、全部無双!~

榊原モンショー

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第47話 次代の勇者、運命の場所にやってくる。

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 冒険者パーティー《希望の旅人ラグリージュ》の結成から2年が経ち、彼らは異例の速さでのAランクパーティー昇格を果たしていた。
 《希望の旅人ラグリージュ》の元へやって来る依頼は後を絶たず、ついにはククレ城塞領主であるガリウス・ガルランダから直々の依頼がやってくるようになったほどだ。

 そんな領主の依頼によってやって来たのが、この大円森林ヴァステラ。
 そこはかつてジンが《クロセナール》として最後の任務を遂行していた場所でもあり――。

「ぼくは、ここでリース師匠に救われたんだ」

 ――ジンの人生が変わった場所でもあった。

『我もここでリースに身体をもらったのだ。懐かしいのだ』

 パーティーの先頭を歩きながら感慨深そうに呟くジンと、その隣を飛翔するヴリトラ。 
 だが、後続の面々の表情は芳しくない。
 瘴気の影響を被って枯れきった木々に、攻撃的な魔獣たちの存在を思わせる大地。

「とてももう野生の生物が住める場所じゃねぇな。瘴気耐性の低いエルフには酷《こく》なんじゃないか?」

 ぽつりと呟くライドンは、数歩遅れでついてくる後ろの二人組を見つめた。

「ラハブ様には浄化作用の魔力の入った水を生成してお渡ししています。ラハブ様の二番弟子の名にかけて、ラハブ様は御守り致しますからね!」
「アナスタジアの言った通りだね。10分に1度くらい、彼女の水の魔力と私の回復魔法を合わせた複合魔法で体内浄化をすれば何の問題もない」

「……そうか、それは大丈夫じゃないな」

 そんな後方組の懸念も束の間、森の奥深くには更に濃い瘴気の渦が感じられた。
 数十にも及ぶ魔力の塊が忙しなく動きまわり、そして――。

「――ぅヴァゥッッ!!」「グルァァァァァォ!!」「ヴァォアッ!!!」

 今まで各方面に隠れていた強個体の魔獣たちがいっせいに一行に襲いかかってくる。

「……3体」

 ヴン、と。
 ジンの持つ直剣に魔法が宿った。

 今まで魔法が使えないとされていたジンだが、妙な兆候が現れだしたのが1年前だった。


 魔力回路が復活した火属性魔法持ちのヴリトラ。
 自身の土属性魔法を日々鍛錬し続けていたライドン。
 回復魔法についでしれっと上級レベルの風属性魔法を使うラハブ。
 ラハブの二番弟子・・・・にして水属性魔法を操るアナスタジア。
 
 偶然にも四属性の魔法使いが揃い出した時、ジンはそのどれとも違った魔法が使えるようになり始めた。

 ジンの魔法に充てられた魔獣は、触れた瞬間に消滅していく。
 ジンの魔法に触れた瘴気溜まりは、浄化されて清んだ空気へと戻っていく。
 混沌と瘴気で埋め尽くされかけた世界に、ジンの魔法は突如として希望の光となって現れた。

 それから一年。
 ジンが使う魔法は、かつて魔王を倒したとされる伝承上のお伽噺を踏襲していつしかこう呼ばれるようになった。

「――勇者魔法、奇跡の一太刀アマテラス

 刀身に魔力を注ぎ込む。
 魔力が使えない内から、この時のためにリースと共に鍛え上げてきた技だ。

 光り輝く刀身を一振りすると。

「ジュビッ!!」「ギュポ」「ピッ――!?」

 触れた魔獣たちは瞬間的に浄化し消滅する。

 一閃。

 Sランククラスの魔獣さえもが、今のジンにかかれば一撃で屠られてしまう。

「グァォォォォォォォッッ!!」

 間髪入れず、ジンに向けて飛び出してくる狼型の魔獣。
 だがその後方で新たな魔法反応が現れる。

「こっちも忘れてもらっちゃ困るな。土属性魔法、大地の大槍グラストッ!!」

「ゴァ……ッ!?」

 大地が隆起し、数メートルほどもある魔獣の正面に大槍が激突する。

「そのままそこで足止めさせてもらうぜ! 大地の堅牢グリフィスッッ!!」

 大地で作られた牢獄の中に収監された魔獣は身動きが取れなくなった。
 強力な魔獣は勇者ジンの魔法で滅殺出来るものの通常ライドンの魔法であればこれが限界だ。
 さして慌てた様子もなくライドンは前方の道を切り開いていくジンに声を掛けた。

「ジン。後ろは俺がフォローする。その魔法がなくたって、足止めくらいなら俺の魔法でも出来るからな。お前は前の魔獣の群れと瘴気溜まりの浄化を頼む。震源地はあそこ・・・だろう?」

 そう言ってライドンが指さしたのは、この森の中で唯一・・瘴気に汚染されていない特殊な区域だ。
 その区域以外は草木も枯れて土壌も腐っており、埋め尽くさんばかりに魔獣が隠れているが、今なお緑が宿り、瘴気の様子が微塵も無い。ただの木造の一軒家にしか見えないそこは、まるで――。

「――見えない結界に囲われてる、みたいです」

 アナスタジアがぽつりと言葉を漏らした。
 それを見たラハブも、何かに気付いたように呟いた。

「驚いた。《ユグドラシル》じゃないか」

「ゆぐどらしる?」

「わたし達エルフ族の故郷には瘴気も、人間も寄せ付けないエルフだけの聖域がある。その状況を作り出すものこそが、ユグドラシルの古代樹っていうご神木でね。エルフ族にとっての守り神なんだ。人間界に分枝を持ってくる、そんな話は聞いたことがないよ。君には驚かされてばかりだねぇ、リースくん」

 そう開設するラハブの表情はどこか嬉しそうだ。
 勇者魔法を帯びさせながら魔獣を消滅させて前への道を切り開いていくジンは、確信めいているようだった。

「リース師匠に言われたんです。『――決戦の時は、ここに立ち寄るといい。時期がくれば、どこにいようと君の役には立てるだろうから』って。今が間違いなくその時です。ぼくはみんなの笑顔を護るためなら、何だって――ッ!」

 ――と、その時だった。

「なるほど。ここはそういう場所だったのか。勇者に関連している所だと思って張ってみたら勇者そのものが釣れるとはな。嬉しい誤算だ」

 突如、何も無い場所に黒い空間が浮かび上がった。
 コツ、コツと。靴の音を高圧的に鳴らしながら、不可視の結界ユグドラシルの前に一人の人物が現れる。

『ひぅっ!?』

 ジンの真横を飛ぶヴリトラに戦慄が走った。

 溢れ出る瘴気がオーラとなって身体の周りを迸る。
 左右に伸びた一対の角はドス黒く、最上位の魔族であることを示唆していた。

「あぁ、どこに行ったと思えば勇者の子飼いになっていたとはな。残念だ、ヴリトラ。また永遠に目覚めぬ封印体でも作ってやろう」

「……ヴリトラ。大丈夫だよ」

『だ、大丈夫ではないのだ……。あ、あやつがこんな最前線までまた出張ってくるなぞ思ってもいなかったのだ……!? や、奴はバケモノなのだぞ……!!』

 不気味に笑みを浮かべるその魔族は、《ユグドラシル》を背景にぺこりと丁寧にお辞儀をした。

「初めまして、勇者くん一行。君の力が完全解放されない間に消させてもらおう。魔王軍総括代行、ウーヴァ・カルマだ。とはいえキミ達はこれから死ぬ。覚えなくても結構だがな」
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