転生エルフによる900年の悠久無双記~30歳で全属性魔法、100歳で古代魔術を習得。残り900年、全部無双!~

榊原モンショー

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第48話 次代の勇者、城塞領主と分かち合う。

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 ――今回のヴァステラ遠征にて最も注意すべきは、魔王不在の現魔族を統括する中核的存在であり、父を……《軍神》グリレット・ガルランダを引退に追い込んだ魔族です。

 決戦前夜。 
 ククレ城塞にて領主ガリウスに招かれたジンには、最重要人物として上げられていた魔族がいた。

 曰く、ククレ城塞を20年守り続けた《軍神》が手も足も出ないほどの強さを誇る。
 曰く、従う魔獣や魔族の意志をもコントロールすることができる。
 曰く、魔王復活の鍵を握る存在である

「《狡猾の魔族》、ウーヴァ・カルマ。奴を倒さないことには、ククレ城塞の危機も魔王復活への恐怖も終わることはありません。瘴気もより濃くなっている昨今、その影響はもはやククレ城塞だけに収まっていませんからね。皆が、魔法不適合者の英雄譚かつての伝承に夢を描くのも致し方ないことでしょう」

 瘴気が濃くなればなるほど、生命は枯れ魔獣は凶暴化する。
 魔獣害も日に日に増え、対応する冒険者の数も足りなくなっていた――。

 そんな時、かつての伝承に描かれていたような魔法を使うジン達が現れた。

 魔獣に対して極めて有効な魔法を扱うジン達に、人々はこぞって縋りだす。
 《勇者魔法》などという名称も、ジンが使う魔法を皆が勝手にそう呼び始めたに過ぎない。

 魔族が《魔王》の復活を心待ちにしている。
 対して人類もかつて魔王を打ち倒したとされる《勇者》の出現を待ちわびていたのだ。

 ガリウスは言いながら、深く頭を下げる。

「私もそのうちの一人です。ククレ城塞は冒険者パーティー《希望の旅人ラグリージュ》をあらゆる面でサポートします。ここで奴等の侵略を防ぐためなら、いかなる金銭、人員も惜しみません。《希望の旅人ラグリージュ》には、人類反撃の旗頭としてククレ城塞の全ての財と、全ての城兵戦力を委ねたいのです」
 
 無論、魔獣や魔族の跋扈する今の大円森林ヴァステラはたった一つのパーティーでどうにか出来る範疇は超えている。
 くわえてククレ城塞の兵士達は誰もが精鋭。そんな戦力があればジン達にとっては百人力だった。
 ジンは半ば戸惑いながらもガリウスに言葉を返す。

「……ぼく達としても領主様が力を貸してくださるならこれほど頼もしいこともありません。ですが、なぜ《希望の旅人ぼくたち》なんですか? 領主様の元にも信頼と実績のあるお抱え冒険者はたくさんいるでしょう?」

 一領主が、野良のギルドに所属する一冒険者にここまで頭を下げるのは異例のことと言ってもいい。
 そんな状況下で、ガリウスは今までとは違いふっと優しい笑みを浮かべた。

「ジン・フリッツは森の奥でエルフ族に育てられて勇者の能力を開花させた、と。そういう噂を聞きました」

 ジンは事あるごとに自らの恩師についてを語る。 
 だが誰もそんな眉唾物のエルフ族のことなど信じようとはしない。
 何せエルフ族は滅多なことでは人前に姿を現さない。ジンのパーティーに加入しているラハブが異端中の異端のエルフなだけだったからだ。
 更には全属性の魔法を難なく使いこなし、全てを超級レベルで使役するエルフの話など誰が信じようものか。


 いつも酒の肴に使われて終わる与太話。
 だが、ジンにとってはそれでも良かった。
 今リースたちがどこにいるのかさえ分からないが、ジンさえ彼らを覚えていれば存在は色褪せることはないのだから。

「えぇ。とはいえ、誰もそんな何でもありのエルフ族のことなんて信じてはくれないんですが――」

「リース・クライン様、ミノリ様のお二方はさぞかしお強かったことでしょう?」

 ――いつものごとく笑い過ごすつもりのジンが、思わず目を丸くするほどに。
 ガリウスは何も驚く様子もなく二人の名を口にした。

「な、なんで、師匠と姉弟子の名前を……?」

「父も母も私も、あなたと同じくリース様のお世話になった者の一人ですから。それに、あんな規格外の方々のことは忘れようもありません」

 ガリウスは続ける。

「あなたについての話を人伝に聞いたときはすぐに分かりましたよ。リース様とミノリ様が父との約束を果たしてくれたのだと。ですから私も勇者がその能力を遺憾なく発揮できるようになるまでの間に彼らの進撃から城塞を守り抜き、準備をしてきました。今ここから、人類の反撃を始めるために」

「ぼく達のことを、待ち続けて……」

「私たちは同じリース様の門戸同士。私に出来ることがあれば何でもするつもりでした。リース様があなた方に期待したことに、私も賭けたいのです。人類反撃の先陣を切るこの大役、どうか引き受けてくださいませんか」

 ガリウスの差し出してきた手を。

希望の旅人ラグリージュはこれまでどんな些細な依頼でも迷わず手に取ってきました。今回も、必ずや依頼人の満足のいく結果をもたらせてみせます」

 覚悟を決めたジンはぐっと握り返した――。

「ありがとうございます。それでは、これをあなたに託します」

 そう言ってガリウスに渡されたのは一枚の魔方陣が描かれた紙だった。

「これはリース様がここを立ち去る際に残してくださった、《遠隔転移用の魔方陣》です。もしもウーヴァ・カルマと対峙するときが来たらこれを。城塞兵士たちをその場に召喚することができます」

「……おそらく、依頼史上ここまで手厚いサポートをもらったことはないかもしれません」

 ジンは領主の心遣いに、心の底から感謝していた。
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