ぼくの万能魔法で、フェンリルの子を最強のもふもふに育てあげたいと思います。

榊原モンショー

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ダンジョン攻略!!

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「こりゃ驚いた。お前、クールダウン無しで・・・・・・・・・魔法撃てるのか!? 色んな属性を、何発も、それも重複して……!?」

 魔物を刺した刀を振り払ったクレアさんは、息をつきながらぼくに語りかけた。

「……え?」

 意味が分からずぼくは素っ頓狂な表情でしか答えることが出来ずにいたが――。

「全く訳分かんねぇぜ、お前……! 何だこのヤロー、ただの獣使いテイマーじゃねェなこのヤロー!」

 ぼくの頭をガシとヘッドロックしてくる姉貴肌のクレアさん。

「魔法は一度使えばクールダウンが必要だ。色んな属性を連続で重複でなんて人間離れした所業、初めて見たぞ! 何だそれは!! 何で隠してやがったこのヤロー!」

 なんだか思った以上に嬉しそうなクレアさん。

「か、隠してたわけじゃ……!?」

「よっし、わたしはあっちのボスをやる。アンタは取り巻きの雑魚の一掃だ。任せたぜッ!」

「任せたぜって、もう行っちゃってるじゃないですか!!」

 ぼくの返答すら聞かずに、刀に炎を滾らせてボスに突貫していくクレアさんは少しワクワク気味に魔法を迸らせた。

 ――色んな属性を連続で重複でなんて人間離れした所業、初めて見たぞ!

 そう言ったクレアさんの言葉が何度も過ぎる。
 ぼくは右手に炎魔法の炎球ファイヤボールを、左手に氷球アイスボールを顕現させた。

 炎球と氷球を空に投げ捨て、もう一度手の平に同じものを作ってみる。
 威力こそ弱めなものの、両極端の属性に位置するその魔法がぼくの手の平の上でふわふわと浮いている。

「人間離れした、所業……?」

 そう言えば、考えてみればアーセナル・レッド所属時も魔法を発動したときは、みんな大体次の発動まで少し時間を置いてたっけ……?
 ぼくもみんなも魔法の威力が弱いことしか目に入らなかったから、そんなこと考える余地も全くなかったけど――。

 ――あなたの魔法の才はこの400年の中で随一のものです。これは、嘘でも偽りでもありませんよ。

 ふと、親フェンリルさんの言葉がぼくの頭を過ぎっていった。

「ぼくの魔法の才が、随一……? もしかして――」

「わふっ!!!」

「いたたたた!? フェウ!?」

「グルルル! グルルルルルル!!!」

 余所見すんな! とでも言いたげに眉間にいっぱい皺を寄せたフェウがぼくの腕に元気いっぱい噛みついてきた! 
 この感じ、なんだか久々な感じするよね! しかもちょっとフェウ、噛む力強くなってない!?

 眼前には複数の氷蛇。そして追加された重武装ゴブリン。
 フェウがたっと地面に着地して、総毛立つのを見てぼくも覚悟を決めた。

「フェウ、思い出してみて。あの日の要領で行こう」

 ――魔猪マジック・ボアを倒したその時も、ぼくが先に魔法を撃ち込んでフェウに道標を教えてあげていた。

 ここ数日、分かったことがある。

 フェウは、魔法の使い方が絶望的に下手くそだってことだ。
 恐らく、火と氷の巨大魔法が使えるのだけども適材適所に使うことが出来ていないのだ。
 逆に、ぼくは魔法の威力こそないものの魔物の特性を知っていればそれに対処することが出来る。

「ぼくはフェウの道標になる。突っ込んでいくフェウを全力でサポートする。だからフェウは、自分の暴れたいままに暴れて、思いっきりぼくの魔法の波動と同じものを撃ち込むんだ。いいかい?」

「ヴァッフ!!」

 フェウも戦闘準備に入ったところでぼくは手始めにバフを施した。

「肉体強化魔法筋力増強マスル・ストレンド捕食の極意くいちらかし速脚スピードラン魔力促進マジック・パワー

「ヴァッフ、ヴァッフ、ヴァフッ、ヴァッフ!」

 ぼくの手の平に浮かんだ光がフェウの身体を包んでいく。

「フェウ、ゴー!」

 ぼくの言葉と共にフェウは駆け出し、また次の瞬間に向けてぼくは両手に魔法を込めた。
 右手に炎球、左手には氷球を準備する。

「キシャァァァッッ!!」

 氷蛇が牙を突き立てようとすれば、様々なバフを掛けられたフェウは更に軽くなった身と筋力で壁を伝って距離を縮めていく。

炎球ファイヤボール!」

 その距離を見計らって、ぼくはフェウと氷蛇の中間目がけて炎魔法を撃ち込んだ。

「――ぱうるっ!!」

 フェウはぼくと同じ炎属性魔法を口から放つ。
 とてもFランク級とは思えないほど、フェウの体長の数倍はあろうかと言う炎の渦は氷蛇に向かって一直線に向かっていく。

「キシャァ!!?」

 ジュンッと焦げた音を発して凍り蛇と地面を大きな熱量が包み込んだ。

「ゲギャギャゥ!!」

 重武装ゴブリン。
 冒険者から奪い取った白銀の鎧と剣を持つ上位種のゴブリンだ。
 弱点属性は氷。彼らにとってはこの極寒の時点で既に辛いことだろう。

「フェウ、上だ! 氷球アイスボール!」

 息つく暇無くぼくはフェウに指示すると同時に、氷球をフェウの真上に打ち込んだ。

 パリンッと、小気味のいい音と共にぼくの魔法は重武装ゴブリンの鎧にはじき返された――しかし。

「パウルルルルルルル!!」

 フェウのものは違った。
 重武装ゴブリンを丸ごと包んで凍らせてしまったのだ。

 ドゴン、と。音を立てて地面に落ちた氷塊はバラバラに砕けていく。
 ボス取り巻きの魔物は全て駆逐され、屍の上に立つフェウはどこか王者の風格さえ備えているかのような格好良ささえあった。

「ワォォォォォォォォォン!!」

「フェウ--ーーーーー!!」

 嬉しさのあまり、ぼくは勝ちどきをあげるフェウに飛びついた。

「ぱうるるるるるる!?」

「あわわわわわわ!? 何魔法出してんのさフェウ!?」

「がうる! がうるる!!」

「痛い冷たい痛い冷たい痛い冷たい!?」

 驚きからか、ぼくのすぐ横を吹雪の魔法が飛んでいった。
 フェウの口から発せられた冷気と鋭い歯が同時にぼくを襲った!
 フェウなりの愛情表現……? だとしたら歪みすぎてる気がするんだけど……!?

「う゛ぁっふ! う゛ぁっふ!」

 それでも、フェウは少しだけ嬉しそうに尻尾を振ってくれていた。

 ぼくだけでは、絶対に勝てなかった。
 そして、フェウだけでも恐らく勝てなかった。

「……へぇ」

 ダンジョンボスをいとも簡単に倒したクレアさんが、熊の上に座ってぼく達を見つめていた。

 ぼく達はその日、氷結の壺フローズンポットダンジョンの攻略に成功した――!
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