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異世界食材で親子丼!⑧
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店の奥には厨房がある。
簡易的な厨房で、現世日本のように電子レンジや冷蔵庫などはまるでない。
とはいえ、物を冷やして保存する方法はあるみたいで、氷に包まれた空間に食材が包まれている。
これがこの世界でいう所の冷蔵庫なのだろう。
その中には主に肉を中心として詰められている。ふと見てみると、やはり下級龍アリゾールの肉がほとんどだ。この店のお勧めというだけあって、備蓄はばっちりらしい。
「私がこの店の主――グレイン・ファーナーだ。見ての通り龍人族だ」
店主――グレインさんは、「見ての通り」を強調して不機嫌そうに呟いた。
人間族の看板娘とは違い、こちらは俺から見れば異形の存在だった。紅の髪の毛からは二本の角が伸び、顔そのものが角ばっている。鰐のような口の形だが、瞳は俺たちと変わらないように見える。
身体自体も、関節自体は自由なようでそこは俺たち人間とあまり変わらない。が、ふと細々見て行くと手の形が俺たちとは違ったり、爪の先が鋭利に伸びていたり、龍のような尻尾も持ち合わせている。
なるほど、人間とコミュニケーションを取れる人間型の種族を龍人族、アリゾール龍のように本当に動物に近い動物を龍族と区別することにも意味があると伺える。結構そこんところ面倒くさいんだな……。ルーナ曰く、自分の獣人族も例外なく、龍人族も『亜人種』に分類されるそうだ。
そんな中で、いの一番に口を開いたのは俺の方だ。
「先ほどは勝手を知らず、無礼を働いてしまい申し訳ありませんでした」
「……すすす、す、すいませんでじたっ!」
俺を追うような形で頭を下げるのはルーナ。相当ビビっているらしい。その気持ちはよく分かるぜ。
目つきが怖いもの。
そんな若干怯えた状態の俺に、声を掛けてきたのは龍人族の店主――グレインさんだ。
「妻から話は聞いている。お前たちは、紅鳥と悪の実を使って何かを作りたいらしいな」
グレインさんの言葉に、俺はこくりと頷いた。
「お前たちは、この二つの食材が人々に忌み嫌われているということを知っているのか?」
その表情は、とても悲しそうだった。
「……すずうずびばぜんん……ッ!!」
……落ち着けルーナ。
慌てふためくルーナを横目に、俺はグレインさんをじっと見据えた。
「俺は、その二つの食材を使って――そうですね、この店にいる全員を喜ばせることが出来ます」
「――何だと?」
俺が発言した直後、グレインさんの表情が一変した。
「たかだか一人間の貴様が、我々の苦悩を一手に引き受けられるとでもいうのか?」
「……? ……?」
意味が分からなそうに耳をぴこぴこ震えさせているのはルーナ。
やっぱり、俺が思っていた通りだった。
「あれが悪の実なんて呼ばれているのは生卵を食って食中毒を起こした――ただそれだけのことだ。それだけで、あんな美味い食材を遠ざけることは理解に苦しむね」
「タツヤ様は、本当にあの悪魔の食材……ひィっ!?」
「……そうだな、グレインさん」
ルーナが失言をしたと共に止めて震え出したのを指さして、俺はグレインさんに目線をやった。
「あんたがたの食材に関してこうまでビビっているこいつを満足させられたら、少しは信じてくれるかな」
俺の言葉に、グレインさんは不服のような、苦虫を?み潰したような表情で俺を見据えた。
「少し待っていろ」
そう言った数分後、俺の前に出てきたのは紅鳥と悪の実――いや、鶏とその卵。
「ルーナ、お前はそこで待ってろ。俺がお前にあのラーメンよりはるかに美味いもん、食わしてやるよ」
「……紅鳥と悪の実でですか……ッ!?」
「まぁ、騙されたと思って食ってみろ。あー、あとグレインさんと奥さんの分も作るよ」
俺は、三人を厨房に残したままマイキッチンのある店前へと軽快に歩いて行ったのだった――。
簡易的な厨房で、現世日本のように電子レンジや冷蔵庫などはまるでない。
とはいえ、物を冷やして保存する方法はあるみたいで、氷に包まれた空間に食材が包まれている。
これがこの世界でいう所の冷蔵庫なのだろう。
その中には主に肉を中心として詰められている。ふと見てみると、やはり下級龍アリゾールの肉がほとんどだ。この店のお勧めというだけあって、備蓄はばっちりらしい。
「私がこの店の主――グレイン・ファーナーだ。見ての通り龍人族だ」
店主――グレインさんは、「見ての通り」を強調して不機嫌そうに呟いた。
人間族の看板娘とは違い、こちらは俺から見れば異形の存在だった。紅の髪の毛からは二本の角が伸び、顔そのものが角ばっている。鰐のような口の形だが、瞳は俺たちと変わらないように見える。
身体自体も、関節自体は自由なようでそこは俺たち人間とあまり変わらない。が、ふと細々見て行くと手の形が俺たちとは違ったり、爪の先が鋭利に伸びていたり、龍のような尻尾も持ち合わせている。
なるほど、人間とコミュニケーションを取れる人間型の種族を龍人族、アリゾール龍のように本当に動物に近い動物を龍族と区別することにも意味があると伺える。結構そこんところ面倒くさいんだな……。ルーナ曰く、自分の獣人族も例外なく、龍人族も『亜人種』に分類されるそうだ。
そんな中で、いの一番に口を開いたのは俺の方だ。
「先ほどは勝手を知らず、無礼を働いてしまい申し訳ありませんでした」
「……すすす、す、すいませんでじたっ!」
俺を追うような形で頭を下げるのはルーナ。相当ビビっているらしい。その気持ちはよく分かるぜ。
目つきが怖いもの。
そんな若干怯えた状態の俺に、声を掛けてきたのは龍人族の店主――グレインさんだ。
「妻から話は聞いている。お前たちは、紅鳥と悪の実を使って何かを作りたいらしいな」
グレインさんの言葉に、俺はこくりと頷いた。
「お前たちは、この二つの食材が人々に忌み嫌われているということを知っているのか?」
その表情は、とても悲しそうだった。
「……すずうずびばぜんん……ッ!!」
……落ち着けルーナ。
慌てふためくルーナを横目に、俺はグレインさんをじっと見据えた。
「俺は、その二つの食材を使って――そうですね、この店にいる全員を喜ばせることが出来ます」
「――何だと?」
俺が発言した直後、グレインさんの表情が一変した。
「たかだか一人間の貴様が、我々の苦悩を一手に引き受けられるとでもいうのか?」
「……? ……?」
意味が分からなそうに耳をぴこぴこ震えさせているのはルーナ。
やっぱり、俺が思っていた通りだった。
「あれが悪の実なんて呼ばれているのは生卵を食って食中毒を起こした――ただそれだけのことだ。それだけで、あんな美味い食材を遠ざけることは理解に苦しむね」
「タツヤ様は、本当にあの悪魔の食材……ひィっ!?」
「……そうだな、グレインさん」
ルーナが失言をしたと共に止めて震え出したのを指さして、俺はグレインさんに目線をやった。
「あんたがたの食材に関してこうまでビビっているこいつを満足させられたら、少しは信じてくれるかな」
俺の言葉に、グレインさんは不服のような、苦虫を?み潰したような表情で俺を見据えた。
「少し待っていろ」
そう言った数分後、俺の前に出てきたのは紅鳥と悪の実――いや、鶏とその卵。
「ルーナ、お前はそこで待ってろ。俺がお前にあのラーメンよりはるかに美味いもん、食わしてやるよ」
「……紅鳥と悪の実でですか……ッ!?」
「まぁ、騙されたと思って食ってみろ。あー、あとグレインさんと奥さんの分も作るよ」
俺は、三人を厨房に残したままマイキッチンのある店前へと軽快に歩いて行ったのだった――。
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